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3-18話 孤立(3)

【読者さまのコメント】

高松、いよいよサッカー部へ……!

案の定、歓迎されない(涙)

けれど、こんなことでへこたれる高松ではない!

とことん孤立する決意を固めた高松がとった行動とは?!

……というか、部活じゃなかったんかーい!(びっくり)

 六組の前にはすでに勝村が待ってくれていた。

 相変わらず男前だなぁ、立っていても俳優オーラが出ている感じがする。

 そんな奴がこんなことを言ってきた。

「渦中に栗拾いに行くんだから、一緒に部室まで行くよ」

「ありがとう。助かる」

 俺と勝村は敢えてサッカー部の現況を話すことはせず、サッカー談義を交わしながら部室に向かった。

 

 部室棟は体育館と総合棟の間にあり、一階の男子部室の入口のところにミーティングができる十五畳程度の部屋が二つある。

 ミーティングルームの前を抜け、いくつかの部室を通り抜けると右側にサッカー部の看板を見つけた。


 今更ながら、井上さんが言っていたあの夜、この部室で滝川と仙道がこの場所でいかがわしいことをしていたかと思うと反吐(へど)が出る。

 俺なんか夏村さんにキスしかしてもらったこと無いぞ!

 その怒りは置いといて……

「先に俺が入るから呼んだら入ってきて」

 ここは勝村の好意に甘えてみる。

 中から勝村と部員たちの声が聞こえる。

『実は今日から新入部員が入ります』

『おう! 選手の幅が出来るなぁ。どんな奴? サッカー経験者?』

『一年一組の高松君なんだが』

『えっ! 総番の彼氏じゃないですか…… 俺は別にいいですけど、サッカーできるんですか? それと二年に目をつけられるの嫌だなぁ』

『俺も! 二年に何されるかわかんないし。やつら毎日俺たちの練習見に来ているし。俺たちがサッカーをやれる雰囲気を無くされてしまうのは勘弁してほしいなぁ』

 そうか、辞めた二年生が先輩風吹かせて、まだグズグズしているのか。

 俺は外で聞きながら今置かれているサッカー部の状況が面倒くさくなり、頭を掻いた。

 いい加減、外で待っているのも痺れが切れてきた。

 ドアを強めに叩いて俺は中に入った。

 どうせ、この部には二年生はいない、相手は同級生だ。

「失礼します。こんな挨拶の仕方で申し訳ない。一年一組の高松です。外からお話、聞こえました。たぶん皆さん二年生の目が嫌なんですよね。でしたら、部室以外では俺のこと無視してくれていいです」

「おい! ちょっと待て!」

 勝村が止めに入る。

「たぶん、部室内なら二年生の目は気にしなくていいと思うけど、グラウンドや学校内は彼らが見ている可能性が高い。だったら俺がグラウンドで何をしていようと皆さんは無視してください。そうすれば皆さんには危害は及ばないはずですので。もしこっちに手を出して来たら、俺のバックには強い人たちいっぱいいるんで」

「それで、いいのか?」

 他の部員も心配して、こう尋ねた。

 俺は落ち着いてこう答えた。

「ぼくはこの部をひっかきまわしに来たわけじゃないし、他の部員の方々が辛い立場になるのを望んで入ったわけでもありませんので。ただ、サッカーができればいいんですから」

 …………

 沈黙の中でも俺の頭の中には、現状考えうる作戦が浮かんできた。

 俺は続ける。

「と言うことで、今日は形だけでもグラウンドで挨拶させてもらったら、そこからは別メニューで結構です。みなさんが練習中はグラウンド整備してますし、練習終わったらグラウンド貸してください。僕もボール蹴りたいんで。もちろん後輩がいる学校なら、後輩がやるボール拾いや器具のメンテもやりますんで」

「わかった、高松くん。君のことだから何かしら考えを持って来ているんだろうから、任せるわ。じゃあ、みんな、着替えてグラウンド集合!」

「オゥ!」

 実はこの時点では俺はこの部が一年生だけであることを逆手に取ってみようと思っていた。

 井上さんが言っていたように、一年生には俺の行動が理解されているというなら、最終的には俺の行動は何か目的があってやっているのだと彼らに理解されるはずだ。

 その上、サッカー部は学園祭では実行委員会と喧嘩した部である。

 思いっきり俺はこの部で得意の『孤立』をしてやろうと思った。

 それも作戦のうちだ。

 さて、次の舞台はグラウンドだ。


 うちの高校のサッカーグラウンドは陸上のトラックコースと共用となっており、トラックコースの中にサッカーグラウンドがある形だ。

 野球部のグラウンドとはフェンスを挟んでこの2つの大きなグラウンドでほぼ校庭のほぼ全面を成している。

 一部テニス部のコートが4面あるが、かなり奥まったところにある。

 ちょうど野球部のグラウンドのフェンスはレフト側にあり、サッカーゴールの一方はフェンス裏のトラックのそばに設置してあった。

 フェンスとゴールまでは結構近い。

 この距離感を見つけたのラッキーだった。

 作戦がしやすいと思ったからだ。


 反対側のゴールは高校の周りを取り囲む下水路(その周りを取り囲むアスファルトの道を『外周』といい一周まわると丁度一キロメートルになる)側にあった。

 この外周を部員はランニングをよくやっている。

 ここで、他の生徒からあの生徒は何部かと把握されることが可能だ。

 また、バス通りから校舎まで通学路は校門前で外周と交わっており、外周を走っていれば、登下校する生徒に出会う可能性は少なくない。

 いまどき、野球部のグラウンドとサッカー部のグラウンドを一箇所に両方備えている学校は県内でもうちの高校ぐらいであろう。

 何を言いたいかというとグラウンドが滅茶苦茶広いのだ。

 その上、校舎からは眺めがよく、両グラウンドで部員が何をやっているかは教室の窓から眺めれば十分把握できる。

 俺は以上の条件から、作戦はこの条件下で十分オペレーション可能と判断した。


 外周側のゴール前にサッカー部十人が立ち、反対側に俺と勝村が立っていた。

「今日から入部する高松君だ。よろしく頼みます!」

 と勝村が言うと、一斉に部員は、

「チワッ!」

 と声を上げる。

 俺は挨拶をし、拍手をもらったが、そこからは約束通りの別メニュー。

 ふとゴール裏を見ると三名ほど見慣れない二年生らしき男子生徒が練習を見ている。

 こいつらが例の旧サッカー部員であろうと容易に判断できた。

 俺はポリバケツを持ち、仲間が練習している外周側のゴール付近ではなく、反対側のゴール、いわゆるフェンス方向に行き、コーナーエリアから石を摘まみ上げてはポリバケツに入れ、満杯になったら、グランド横の砂利収集場に捨て、また戻っては石を拾っていた。

 しかし、部員数が少ないとはいえ、全くグラウンド整備をしていなかったのかと思うほどの石の数である。

 こんな場所でスライディングとかしたくないと思った。

 それに比べるときれいに整った野球部のグラウンド、よほど指導をしっかり行っているのであろうとすぐ理解できた。

 グラウンドと砂利収集所をただ黙々と行ったり来たりするだけの1日だった。


 十八時になり、勝村の『集合!』の合図とともに全員がゴール前に再度集合し、終了の挨拶をし、今日の練習は終わりになった。

 俺は事前に部室で言たように、練習終了後に、俺がボールを蹴りたかったので、少しグラウンド貸してくれないかと勝村に言ってあったため、他の部員に『お疲れ様です!』と言い、送りだすと、点々と散らばったサッカーボールのところに向かう。

 俺は面倒なので、ボールの所に着いたら、ボールをゴールに向かって蹴って集めた。

 一個、二個、三個とゴールにボールは吸い込まれていった。

 しかし、その一個を足で止め、蹴り上げてリフティングしている男がいた。

 挨拶の時にいた二年生であった。

 おれは無視しながらすべてのボールをゴールに向かって蹴りこむとゴールに向かって歩き出す。

 そして、ゴール付近にあるボールを一つ一つキャリアに入れていると、そのなかの一人が声を掛けてくる。

「ちょっと時間ある? 遊ばない」

「サッカーならいいですよ」

「俺たち三人の『鳥かご』から抜け出すってのはどうよ?」

 『鳥かご』とは何人かで周りを囲み、ボールを回すことで中にいる人にボールを取らせないゲームだ。

 逆にいうと鳥かごの中の選手も相手のパスコースをブロックするのによく使われる練習方法だ。

「あの~ ぼく、まだ今日入部一日目なんですけど」

「中学の時、サッカー経験ぐらいあるんだろ? 夏村の腰ぎんちゃく」

 (腰ぎんちゃく:現在は、多く、目上の人の御機嫌をうかがいながら、つき従っている者についていう)

 やっぱ、俺の素性を知っているんだなと思った。

「了解しました。それならもう少しおもしろくしましょう。俺が先輩方の『鳥かご』を破ったらゴールに向かいますので、それ止めてみてください。それでも俺がゴールできたら俺の勝ちってどうっすか?」

「なに! 言ったな。こっちは三人だぞ。絶対させねぇからなぁ!!」


 そして『鳥かご』が始まる。

 何回かパスが回されるがすぐに一人の先輩のパス出しの癖を見抜き、俺はパスカットに成功する。

 そしてそのままドリブルでゴール前に切り込む。

 もちろん先輩たちもドリブルのカットに入る。

 一人目の先輩には右足でボールを打つと見せかけ、左足でボールを維持し抜き去る。

 「シザース・ダブル・タップ?!」

 次の先輩は左右の足で小刻みにタップを踏み、迷っている間に抜き去る。

 「シザース・アンクル・ブレイク?!」

 あとはゴールするだけ。

 ゴールの真ん中には最終列の先輩がゴールラインを防いでいる。

 俺は先輩のそばに行くと軽くボールを上げた。

 「ループか?!」

 カーン。

 俺のシュートはゴールポストに阻まれた。

 その時、照明の見えないところから出てきた黒い影がボールをゴールに蹴りこんだ。

「やっぱ、高松君、サッカーうまいじゃん! 俺、やっぱ君とサッカー、やりたいよ!」

 その影と声は勝村だった。

 やはり、部活が終わっても先輩が帰る様子が無かったので気になっていたのだろう。

 

「先輩、練習つけていただきありがとうございました。」

 俺は三人の二年生の元先輩に声をかける。

「先輩たちもサッカー好きなんですね。どうですか、サッカーまたやりませんか?」

 すると、先輩の一人がこう言った。

「滝川があんなことになったのに腰ぎんちゃくとサッカーできると思うのかよ」

「滝川の件って、学園祭の関係者の俺たちが原因ですか? 告発したのは、他の部の女子部員ですよ。てか、部室であんなことする奴らが悪いと思いませんか?」

「だけど、滝川の彼女をおとしいれたのはヤンキーだろう?」

「いや、その辺がおかしくて、彼女が学園祭の仕事をヤンキーに丸なげして、その結果その子が倒れたことから滝川とヤンキーの喧嘩になったわけで、原因は彼女のほうにあるんですよ」

「だが、それを今聞いたとしてもどうにもならないんだよ。学園祭を混乱させた事と滝川と彼女の件を含めて部長会で評価が下ったんだよ。俺たちは滝川に加担していなかったけど、サッカー部は事実上の解散。今の部活は同好会扱いなんだよ」

 意外な言葉が飛び出した。

 サッカー部は部活ではなく同好会扱いになっていたのだ、それも部長会での判断で。

 だから、入部届を勝村が預かっているわけか……

 同好会なら顧問もいらない……

 なるほど、いくつかの解決の糸口が見えてきたと思った。

「それは本当か? 勝村」

「そのとおり、うち部活扱いじゃないんだ」

「う~ん! わかった!」

 俺は叫んだ。

「勝村、サッカー部、部活に戻したいか?!」

「うん!」

「先輩、部活戻りたいですか?!」

「おう、もちろんだ!」

「じゃあ、勝村、俺たちはこのまま今の関係を続けて活動しょう。俺を無視しまくれ! 先輩、そのうちお願いすることがあると思いますので、それまではがまんしてください」

「わかった!」

「部活、終わった後の練習は一緒にお願いしてもいいですか?」

「もちろんだ。テクニックもお前の方が上だからいろいろ教えてくれ!」

「了解!」


 どうせだ、もっと部内で『孤立』してやる。

 それも徹底的に!

 そして、もっと目立ってやる。

 ボッチはボッチで環境によっては目立つところを見せてやる!

当作品をここまで読んで頂き、ありがとうございます。

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編集記録

2022/09/23 3-17話を2分割し、校正、一部改稿

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