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3-17話 孤立(2)

【読者さまのコメント】

高松はお弁当を夏村さんに作ってもらっている……なんという贅沢!

いいなぁ。私も夏村さんのお弁当を食べたいよ(涙)

高松がサッカー部に入部すると聞いて、いろいろな人が心配する。

人助けとはいえ、あんまり無理はしてほしくないな(汗)

とにかく頑張れ!

 勝村とのサッカー部への入部面談は授業の合間の休み時間で片付いてしまった。

 これもいろいろ知恵を付けてくれた井上さんのおかげだなぁと思った。

 あとは入部した後起こりそうなことを事前にシミュレーションしておこうと思った。


 夏村さんへの報告はお昼休みに夏村さんが作ってくれたお弁当を一緒に食べる約束していたので、そこですることにした。

 うちの母は、夏村さんが弁当作ってくれることになってから、全く弁当を作ってくれなくなっていた。

 気を利かせているのか、それとも、沙羅ちゃんの方があんたはいいでしょという嫌味か、どちらか解らないが、朝の勉強会を始めてからは全く弁当を作ってくれなくなった。

 空の弁当箱を持って帰る手間が省けのはいいことだが、夏村さんがそれを片付けてくれていると思うと心が痛む。

 早朝勉強会のために早く起きなくてはいけないにも関わらず、『どうせ、ついでだよ』と言っては作ってくれている。

 それもほぼ毎日だ。

 その分、夏村さんには私、尽くしますので……


 昼休み、いつものように三年一組の教室でお弁当をいただきながら、夏村さんに今日からサッカー部に入部すること、そしてそこには色々な難問があることについても報告した。

 俺の体調と勉強のことを夏村さんは心配してくれたが、優先順位は総合して考えると現時点ではこちらが高いことを伝え、納得してもらった。

「ところで…… かずや、運動部だけど、お前、運動大丈夫なのか? 体育祭もマラソン、最下位だったよな?」

 あれ、俺が最下位になったことって報告してたっけ?

 確か、俺は走りながら、夏村さんを探してはいたのだが、見つからなかった。

 どこかで見ていたのか、それとも仲間のヤンキーから報告を受けたか判らないが知っていたのですね……

「浦和人だよ、サッカー位できるわ! というレベルじゃなくて中学時代はサッカー部のキャプテンしてました」

 夏村さんは意外という顔をしていた。

 完全に俺のこと、運動オンチと思ってましたよね?!

「まあ、周りに迷惑かけないようにやるよ」

 と回答すると、夏村さんは、

「お前の決めたことだ、まずはやってみて、壁にぶち当たったら私が全力で助けてやるから大船に乗った気でいろ!」

と勇気付けてくれた。

 黒船来襲と思うくらいすごい大船に乗れた気分だ。


 現在でも俺はボッチボッチと口癖のように言ってはいるが、必ず目の前には夏村さんがいてくれている。

 たぶん彼女がいなかったら、俺一人では今のようにいろいろなことに一歩踏み出してはいなかったのであろう。

 しかし、ヤンキーの瓦解の時のような偶発的な出来事が今回はないことから、そう簡単にはいかないことは容易に想像出来たため、お互い連絡を取りあいながら進めていこうと言うことになった。


 ただ、後になってみて、いろいろ考えてみるとこの判断で間違いでなかったのか心配になってくる。

 まずはサッカー部の件だ。

 混乱にかこつけて入部するのはタイミング的には非常に良い。

 そこから、いかにニ年生の中間層に食い込んでいくのかが見えてこない。

 旧サッカー部のニ年生と争ってしまっては、元の木阿弥だ。

 また、話を聞くと、現在、部には一年生しかいないと聞く。

 そうなると、どう二年生に近付くか……

 次は井上さんが言っていたキーマン、野球部キャプテンの林先輩とどう近づき、いかに仲間に入ることができるかだ。

 サッカー部に入ったとはいえ、野球部にとっては俺は部外者だ。

 会話すら出来ない可能性もある。

 サッカー部への入部が無駄な時間つぶしに終始しないか不安になる。

 部活が決まったとはいえ、前途多難である。


 夏村さんとのお弁当も食べ終わり、教室に戻り、自分の席にドッカと座ると、井上さんがニコニコしながら声をかけてきた。

「廊下から見てたよ。結局は自分が苦しむ選択をしたわけね。ヤンキーの時といい、今回のことといい、かずくんは自分から火中の栗を拾いに行くから、周りが本当に心配させられるんだよね。たぶん今回は夏村さんが心配していると思うよ。まぁ、色々大変なこともあると思うけど、そんな中にも解決の糸口が隠れてると思うから、それを見逃さずに確実に見つけて解いていくこと。解けてきたらいつでも手伝うから」

「忠告ありがとう。なんとかやってみるわ」

「それと今月は学校の全国模試と来月は期末試験もあるから考えながらやらないと、上郷地先輩も夏村さんも頼んだ立場上責任感じちゃうよ」

「だよね〜」

 俺は頭を掻きながら、腕組みをした。

「まあ、部活の件は始まらないことにはわかんねぇなぁ」

「そうだね、頑張ってよ、かずくん!」

 俺は井上さんにサムアップしてみせたが、不安しかない。

「そうだ、部室棟って二階建てで、一階が男子の部室、二階が女子の部室になっていて、鍵がないと二階上がれないんだよね」

「ふ~ん、そうなんだ。で?」

「階段から呼んでくれたら、私すぐかずくんのところ行くから」

「だったら呼ばない」

「そんな殺生な……」


 その不安を引きづりながら、俺は続いて、勉強仲間のところに行った。

「かずくん、忙しそうだけど、大丈夫?」

 多江ちゃんが心配そうな顔で、俺の顔を覗き込む。

「お前、学園祭の件といい、最近塾サボり気味だけど、怖い母ちゃんに怒られてないか?」

 坂本の言っていることは、遠からずだ。

 もし、今度の模試や期末試験が悪ければ母のことだ、追及が厳しいかもしれない。

 その上、最近夏村さんが家に来ないので、俺たち二人が別々に動いていることは容易に家族にはわかってしまう。


 俺には中学時代、生徒会をやりながらクラブもやり、色々なことに頭を突っ込み、一人で手が回らなくなり、両方を中途半端で辞めさせられてしまい、クラブ、生徒会の両方に多大な迷惑をかけた経歴がある。

 中学三年での窓ガラス事件もあるが、この件もあり、高校受験の内申の点数は最低だったと思っているし、妹からも確証のある情報を得ていた。

 それを知っている家族、特に晏菜はこの危険な雰囲気を敏感に気が付いているかもしれない。

 だから、俺はそれを繰り返さないためにも、ゼロから高校生活を始めた。

 部活もせず、生徒会もせず、中学時代の同級生ともあえて交わらず、勉強だけがんばってきた。

 でも、それでは逃げているだけだと思った。

 少しでも以前の失敗を乗り越えてこその成長だ。

 俺は中学時代と違う。

 今では俺を支えてくれる夏村さんやヤンキー仲間、井上さんたちがいる。


 『一人で悩む必要なんかないんだ』


 その言葉が、俺には心強かった。

 そして、高校に行って、成長した姿を両親や、迷惑をかけた仲間たちに見せたかった。

 そのためにも俺は絶対になんとかしてみせると思った。


「まあ、母から怒られたときは怒られた時に考えるよ。今、もっと大きくて大切なことに取り組んでいるから…… でも、俺のかあちゃん、絶対に理解できねぇだろうなぁ……」

「お前さあ、どうせ俺たちは手助けできないんだろうと思ってるだろう? これからは俺たちにも相談しろよ。今までは俺たちの置かれている立場は微妙だったけど、今は普通の高校生活送れてるから、少しは役に立てると思うよ。たぶん、こうしてくれたのはお前たちのお陰なんだろうけどな」

 そうか、勉強組仲間の最下位のカーストも崩れたのか。

 入学当初は学校終わったらすぐに下校して、坂本の家にみんなで『勉強』を口実にたむろってたもんな。

 もうビビってクラスの端にいる必要もなくなったということだ。

 それだけでも自分のやった実績を感じ、少し満足した。

「サンキュー! じゃあ報告。俺、今日からサッカー部入るから」

 勉強仲間は当然、驚いた表情をした。

 しかし、佐々木の一言に俺は救われた。

「かずは毎回、何するか解んないからもう慣れっこだよ。また、学校の何かを変えるだろ? まぁ、がんばれや!」

「ありがとう! その間、成績一位は誰かに譲って差し上げよう。だけど、何ヶ月かかるかわからないけど、最終的には学年の一位は奪還します」

 勉強仲間たちは大笑いした。

 しかし、本当に一度一位を譲ったら戻れるのかねぇ?

 最後まで多江ちゃんに不安そうなの表情をさせてしまっていることに罪悪感を感じた。

 なんで俺って、みんなの不安感しか煽らないだろうか……


 六時限目が終わり、俺はバッグを持って教室を出て、勝村と待ちあわせしている六組に向かおうとした。

 二組の教室内を窓越しに見ると偶然、夏村さんと目が合った。

 言葉は要らない、がんばってこいと目は訴えかけていた。

 了解した!

当作品をここまで読んで頂き、ありがとうございます。

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編集記録

2021/12/17 加筆訂正

2021/09/23 3-17話を2分割し、校正、一部改稿

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