3-14話 人と多く接するということ(2)
【読者さまのコメント】
生徒会!!! 確かに、今後のことを考えたら、あったほうが良さそう!
募集がかかると、井上さんが高松に立候補するよう勧めてくる。
私も高松が生徒会長になればいいなぁって思う〜!
高松ならうまく立ち回れるよ!
でも当の本人は嫌みたいで……?
◇◇ 十一月六日 ◇◇
学園祭が終わって初めての月曜であった。
恒例、月曜一時限目はロングホームルームである。
さすがに学園祭も終わって二日も経つと今日室内のチョコやバナナの匂いはほぼ消えているが、かすかな甘い残り香が一時限目なのに食欲を誘う。
ちなみにうちのクラスの学級委員は、男子がバスケ部の須藤で、女子は隣に座る倉田さんだった。
今回の混乱の中、無事、うちのクラスの催し物を貫徹できたのは、彼らの指導力のお陰だ。
女子の学園祭実行委員がとんでもないことをしでかしたとはいえ、その後クラスをまとめ、模擬店、合唱とまとめてくれたのだもの、敢闘賞ものですよ。
そういえば、学園祭混乱の張本人、仙道はどうしたかと言うと、自主退学を申し出た。
仙道と倉田さんはクラスでは席が前後だったんで、よく話す間柄だった。
女友達同士の話で『昨日、〇〇くんと、頑張っちゃった(笑)』は嘘か本当かはわからない笑い話か自慢話に普段ならなるが、今回の一件は内容がリアル過ぎる。
このまま学校に残るのも居たたまれなかったんだろう。
その上、誰が流したのか判らないが、実行委員会での内田さんへの対応も表沙汰になってしまい、完全終了。
『はい、さよなら』の烙印を押されてしまった。
これは、致命的である。
女性同士が起こした、いさかい事って構図的には謝ったとしても、ムチャクチャ後腐れ残るだろう。
そう言えば、もう一方の当事者、仙道さんの彼氏、滝川も自主退学を申し出たそうだ。
さすがに校外への高校を誹謗中傷するビラ配りはやりすぎで、先生の中には告訴という言葉まで出たらしい。
そこは教頭先生が仲介に入ってやめさせたが、自主退学ではなく、退学命令処分というもっと重い形となった。
これは上郷地先輩の情報に俺が井上さんから聞いた内容をプラスして申し上げていることをご留意願いたい。
そういえば、夏休み前の阿部剛による逆恨みでヤンキーの小森幸太郎が刺された事件を思い出した。
いちよう、彼らの動向にも注意しておくべきかと思った。
併せて滝川と活動を共にした、サッカー部員数名は自主退学を認められた。
渋谷先生が教壇に立ち、今週の予定を発表した。
生徒会選挙が十日金曜日にあり、誰か立候補はいないかと問いかけた。
生徒会の設立については俺は渋谷先生に学園祭の事件の最中に言ったことがあった。
なぜ、生徒間のトラブルを学園祭の実行委員会がやっているのか?
サッカー部の取り扱いを運動部の部長会で決めているのか?
ということを含め、早期の生徒会の設立を何度か求めた経緯があった。
学校としては、来年の四月の設置を考えていたらしいが、どうせ、新一年生は立候補するはずもない。
再来年になれば三年生の卒業もあり、年度末であると、卒業式、入学式があるため、学年の途中、行事の少ない十一月中旬に二年生を中心に活動するような体制にしてはと俺が提言したところ、それもそうだな! の渋谷先生の一言で職員会議を動かしたようだ。
相変わらず、渋谷先生の決断・行動は早い。
さて、生徒会の立候補の件だが……
言い出しっぺの俺だが当然生徒会など面倒に巻き込まれたくはなかったので、これは俺とは関係の無い話として聞き流した。
そして、時間潰しに手元の紙を取り出し、これから全国模試と期末試験までのスケジュール表を手書きで書き、一昨日確認した夏村さんの進捗を落とし込んで書いていった。
すると、席の左側から俺の腕を鉛筆らしきもので突っつく感触。
左を見ると、井上さんが笑顔で軽く手を振りながら『ヤッホー』と声をかけてくる。
「ヤッホー! ってなに?」
やりたいことを邪魔された不愉快感から低いテンションで俺は答えると、
「寂しいなぁ、内縁の妻からのお誘いなのに、つれないないなあ〜」
「おい、それ勝手に井上さんが決めたんじゃないか! 俺、知らないぞ!」
と俺が言ったにもかかわらず、井上さんはニコニコしながらこっちを見ていた。
でも、やっぱ、井上さんってかわいいんだよな……
いかん、いかん、俺には最愛の絶世の美女、夏村さんがいるのですよ。
「ところで、何?」
俺が彼女に、面倒くさそうに聞くと、
「かずくんさぁ、生徒会長、立候補しない?」
井上さんの意表を突く言葉に、俺は声を裏返しながら、こう答えた。
「はぁ?! しない! しない! 絶対にしない! そんな面倒くさいことするかよ」
「かずくんだったら、うまくやってくれそうだし、今だったら、女子バレー部の票まとめて入れてあげるよ」
「絶対にイヤ! 俺、受験あるから、そんな時間ないよ!」
「受験、受験てさぁ、まだ、二年もあるじゃん。二年有ったら色んなこと経験できるんじゃない? もったいなくない……? ところでさぁ、かずくんさぁ、大学、どこ受けるの?」
「私立理系かな?」
「だったら今から試験科目絞って勉強すれば、かずなら、楽勝じゃないの?」
「いや、俺はいいとして、俺には夏村さんも大学合格させると言う大目標が有るんだよ。だから、そこまでは見守んないといけないからね」
「お前ら、夫婦かよ!(笑)。てか、夏村さん、大学受験するんだ! 確かに成績上がってるもんね。そうかぁ、成績の裏には二人の愛の結晶があったんだね〜ぇ! ところで、高校卒業したら結婚とかするの?」
「いやぁ、まだ、夏村さんのご両親に会ったこともないんだよねぇ。まずはそこが難問だよね。相手はお金持ちっぽいし、うち貧乏だし…… って何言わせてんだよ!」
「うわぁ、めちゃリアルに考えてんだ。ところで、夏村さんのどこがいいの?」
「話し方はまだ、怖いけど、真面目で、一生懸命、仲間思いで、かっこいいし、美人だから」
「いうね、いうね!」
と言いながら、先程俺を突っついた鉛筆で俺を突っつき回す。
そんなことしてるから、
「おい、井上! 高松! 喋ってるんじゃない!」
と渋谷先生に怒られてしまう。
結構、俺も井上さんの話に釣られたみたいて、自然と声もでかくなっていたようだ。
渋谷先生に謝る二人。
怒られたにも関わらず、小さな声で井上さんは再度話し出す。
「もしもだけど、夏村さんが生徒会長になったら、かずはどうする?」
「まあ、多分生徒会に入らなくてもフォローはすると思うよ。必ず助けるって約束してるから」
「お前ら、すげえアツアツだなぁ、聞いてる方が照れるわ!」
そんなことを言っているから、渋谷先生は怒って、
「井上、うるさいぞ! 後で生徒指導室に来い!」
と言った。
「怒られちゃいました! テヘペロ!」
「俺も行こうか?」
「いや、話しかけたの私だから、心配しないで。いつもの調子で乗り切るから」
本当に彼女の調子よさはどんな苦境も乗り切れそうだった。
今日の苦境は渋谷先生のおこごとだが。
結局のところ、このクラスから立候補者は出なかった。
しかし、終わった後にも関わらず内田さんや学園祭を手伝ってくれた羽田さん達が席に来て
「かずさんが委員だったら学校良くなりそうなのにさぁ」
と言ってきたり、中間層の石原、須藤、久保さんなども
「高松くん、学園祭頑張ってくれたから生徒会もやってくれればいいのに」
と言われた。
一学期だったらこんないろんな人に声を掛けてもらえただろうか。
俺の周りだけではなくて、全クラスを通して、以前に比べるとみんな仲良く会話ができているような気がした。
それに伴い、知るべきクラスメイトの特性も増え、少なくとも中学時代のボッチワールドとは違う世界が目の前に展開していた。
原因……
やはり夏村さんとの出合い、出来事がこう変えて行ったのだろう。
多分、勉強仲間だけでの生活ではここまで多くの人たちと接することは無かったと思う。
そう考えてみるとたったこの四、五ヶ月間での体験が俺の人生を激変させた。
要はどれだけの人たちに関わりあえるかで人生は変えられものんだと俺は思った。
そこでどう接し、どう作用し合うことにより、さらに人生は変わっていくものだと感じた。
ここまで来たんだ、やれるところまでがんばって一度の人生楽しんでやろう……
「井上さん、やっぱ渋谷先生のとこ、俺も行くわ。俺も一緒に話していたんだから」
「本当? 助かる! じゃあよろしく頼むね」
「二人で謝れば、叱られるのも二等分だろうしね」
「言うねぇ、かずくん。じゃあ、昼休みね」
今日の十六時で生徒会の立候補は締め切られた。
翌日、入口付近の掲示板に立候補者の一覧が出ていたのだが、副会長、書紀の立候補者はなかった。
委員長には学園祭でお世話になった上郷地先輩の名前があったが、その他の立候補者はおらず、信任投票になる予定とのことだ。
上郷地先輩、いい人なんだけど、あの仕事の進め方だとなかなか話は進まないんだろうなぁと少し心配になった。
信任投票は明日七日。
昼休みに選挙なら『政見放送』に値するであろう校内放送を行い、明日投票を登校時から十五時までに行い、即日開票で決まるようだ。
まあ、不信任にして、別の候補者というのも面倒なので、このまま決まるのであろうが、副委員長、書紀はどうなるのだろう。
校内放送の終わりに、副委員長、書記はまだ募集してますと言っていたが、上郷地先輩に委員長が決まったら、その下で働いてもいいだろうという人が出てくるかもしれない。
もしかすると、学園祭繋がりで、実行委員の誰かが立候補者してくれるかもしれない。
まあ、ここは第三者的に楽しみましょうと、俺はことの成り行きを見ていた。
◇◇ 十一月八日 ◇◇
無事、上郷地先輩は信任、しかし、副会長、書記は結局集まらなかった。
すると、例のごとく、井上さんが授業中にもかかわらず、俺の横っ腹を今度はペン先で突っつく。
「痛てぇなあ! なんだよ!」
俺は半ばやけ気味に返すと、
「かずくんさぁ、副会長やらない?」
「絶対やらない。」
俺は即答した。
「なんで〜! 適任だと思うんだけどなあ〜 今回の学園祭での立役者だよ〜 やりなよ〜」
「お前、絶対に何かを楽しんでるだろう!」
「いやさ、かずくんが一番学校まとめられそうだから、ヤンキーとも関係深いし、中間層からも信頼あるし」
「そこまで俺、評価されていると思わないけど」
「学校を新しい方向に持っていくには今がチャンスだと思うんだよね。」
「新しい方向って、井上さん、何を考えているわけ?」
「わかんない。でも、転機は今かなって感じてる」
「感じてるじゃ、困るんだよね。俺は方策なんて全くもって無いし」
「まあ、追々委員会やっているうちに、何か出てくるんじゃないの。わからないけど」
「全然責任感のない回答だな…… もし仮に俺が副会長になって、そんな中途半端な案を出したら混乱するだろう?」
「混乱したら混乱したでいいんじゃないの? そこで色んな人の意見聞けるじゃん。一人じゃないんだから。君が突破口になればいいんだよ」
「それが俺かよ?! 面倒だし、勉強もあるし、現状とても飲める条件じゃないね」
「かずくんなら、今がチャンスだと思ったんだけどなぁ…… しょうがない。他の作戦考えるわ」
「ちょっと! 他の作戦って何よ?! 俺=副会長の前提じゃないよね?! 少し休ませてよ。夏休みからヤンキーの件を含め、いろんなこと起こりすぎて、俺、心労が絶えないんだから……」
「学園祭での『貸し』もあるし、それで気晴らしさせてあげるよ」
そういえば井上さんとは学園祭の混乱を沈静化する代わりの『貸し』がまだ残っていたのだ。
しっかり、覚えているのか……
「だって、学園祭の『貸し』って井上さんのお楽しみじゃないの? 俺にはプラスじゃないし……」
「いやいや、かずくんには夏村さんでは体験できないような、ムフフな体験の準備をしております」
「恐怖しか感じないんですけど! まあ、いいや。いずれにせよ生徒会の件はキャンセルでおねがいします」
と井上さんに念を押した。
結局、この日も副会長、書記は決まらず、選定は上郷地先輩の推薦で一任されることになった。
◇◇ 十一月九日 ◇◇
授業も終わり、今日は塾の無い日なので月末に行われる全校全国模試の対策でも夏村さんとするかと思いながら、席を立とうとしたところ、ラインで上郷地先輩から生徒会室に来るよう連絡が来た。
学園祭のグループラインなのでもちろん夏村さんも内容を閲覧することができた。
気が進まないが『行きます』と俺が返信する前に、夏村さんが『かずやと向かいます』と返信していた。
嫌な予感しかしない……
てか、なんで俺に話が来たのに、夏村さんが返事返しているの……
当作品をここまで読んで頂き、ありがとうございます。
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編集記録
2021/12/14 加筆訂正
2022/09/20 校正、一部改稿




