3-2話 2学期(2)
【読者さまのコメント】
高松が夏村さんとイチャイチャしていたらヤンキーたちがやってきた。
せっかくイチャイチャしてたのにぃ〜!
なんと高松、進路相談をお願いされた。
夏村さんに可愛くお願いされたら断れないよね!
それにしても、イベント目白押しだわ(汗)
井上さんの言動も気になる……新たなライバルか?
俺たちと夏村さんは三年一組の教室に戻り、夏村さんの作った昼飯を食べていた。
もう夏村さんの味付けに慣れてしまった自分が恥ずかしくなり、箸がとまってしまう。
すると夏村さんは、
「あんまり口に合わないものあったか?」
とか言うもんだから、俺は、
「俺の好きな味が夏村さんの作ってくれるものの味に変わっていっちゃって、もう母が作った味ってどんなんだか忘れちゃったよ!」
と素っ頓狂な返事をしてしまった。
「そうか、そんなに好きか。しゃあないな~。じゃあ、ここでキスしてもいいぞ!」
「場所を変えてということで……」
と俺はやんわりと逃げた。
そんな甘い時間を過ごしていると、
「入りま~す」
と言いながら横山ほか数名のヤンキーが入ってきた。俺は横山に、
「なんだよ。お前ら、俺の楽しみ奪いやがって! もしかして朝話していた例の話って今するのかよ?」
と聞いたところ、
「悪いな、熱々のところ。俺たちも結構悩んでいてさあ。話聞いてくれよ。いいすか? なつさん」
夏村さんはしょうがないなという顔をしながら許可した。
すると横山は話し始めた。
「俺たち、ヤンキーやめるって話になった後、残りの夏休み中にいろいろと考えたわけさ。どうしたら、『俺たちの居場所』たどり着けるかってな。だけど、このままプワッとしていても何も見つからないなぁと思ったんだ。そこでだ。みんなで集まって何かいい方法ないかと話していたら、部活をやるというメンバー、勉強したいってメンバー、そして慣れ親しんだ商店街にボランティアで協力したいってやつとかいろいろと出てきたわけよ。そうなってくると、和也、なんかお前、人の話聞いたり、取りまとめるの得意そうだから、俺たちの話に乗ってもらって、アドバイスとかしてくれるとありがたいんだけど」
「えっ! 俺がお前らの進路のカウンセリングみたいなことするの?!」
「うん!」
「まさか、ひとりひとり?」
「そう!」
さすがにそれは俺にとっても荷が重い。
うちの学校のヤンキーと言えば百人ぐらいいるんじゃないか?!
その全員と面談をしろって訳なの?
「おまえなら、肝座ってるから二年も対応できるだろ。お願いできないか?」
と夏村さんまで言い出すもんだから、俺はジロっと夏村さんを裏切者を見るような目で見た。
お前、総番なら、ヤンキーどものフォローも役目だろうと思ったからだ。
夏村さんは俺の意図を知ってか、俺から目を外すと、こう言った。
「俺とこいつらは上下関係ができあがっているので、俺の指示では命令扱いになってしまう。だが、かずやの指示なら関係は対等になるから、やつらも自分自身で考える余裕ができるというか…… かずや、だめか?」
と両手を合わせてお願いポーズをする夏村さん。
「う~ん…… (面倒くせえなぁ…… でも、夏村さんから頼まれちゃなぁ…… あんな可愛い『お願いポーズ』されたら断れないよ~)わかった! 乗りかかった船だ、もういいよ! やるやる! でも塾のある日はだめだよ! あと、夏村さんとの平日の勉強会、その分、削るからね」
「平日はこの一件が終わるまでは俺一人でがんばるから、お願いできないか?」
「わかったよ! 俺が我慢すればいいんでしょ!」
「がまんって何よ?」
沈黙するヤンキーたち……
俺は真っ赤になり、
「夏村さんと一緒にいる時間が短くなるちゅうの!」
と言うと、一同、大爆笑の上のヒューヒュー!
「かずや、ありがとう! じゃあ、俺たちのこと頼むわ!」
「めんどくせぇなあ。今日は進学塾あるから来週の火曜日からね。あと順番決めてよ!」
ということで俺のヤンキーカウンセリングが不本意ながら開始されることとなった。
『ふ~ん、高松君、夏休み中にヤンキーたちとそんな仲になったのね』
三年一組の教室そばの階段の柱の陰で井上さんは部活の練習着姿で俺たちの話を聞いていた。
『やっぱ、高松君って面白いね、ますます興味沸いてきた』
◇◇ 九月四日 ◇◇
翌週の月曜日、五、六時限の授業はホームルームの時間となった。
教壇には担任の渋谷先生が立ち、こう言った。
「さて、先週の金曜日から二学期が開始された。ここで二学期に予定について説明する。このプリント、後に配って」
といい、各列の先頭の生徒にプリントを渡す。
そして、最後尾にいる俺や井上さん等にプリントが渡るの確認し、渋谷先生はこう言った。
「九月のイベントは九月二十一、二十二日の林間学校、十月は八日の体育祭、十七日から四日間の予定で中間試験、十一月三、四日が学園祭、十日に生徒会選挙、二十三日には学校での団体受験となる全国模試がある。そして十二月十一日から四日間の予定で期末試験、十八、十九日が球技大会、二十二日が終業式になる。そこで各イベントのクラスの委員を決めたいと思う」
クラス全員が一斉にえぇーという落胆の声を上げる。
「まずは、林間学校の委員だが、誰か手をあげるもの?」
当然、誰も手を挙げるものはいなかった。
そこで俺は仕掛けた。
「先生、推薦でもいいっですか? 横山剛くんと笹川春陽さんを推薦します」
クラス内がざわめく。
俺が推薦したのはこのクラスのヤンキーの男女ツートップの横山と笹川であった。
横山は、席を立ちあがると俺に向かって怒鳴った。
「おまえ! 何で俺なんだよ! 調子にのっているんじゃねぁぞ! 俺はやらないからな!」
一瞬にして凍り付く教室内。しかし俺は席を立ち、こう言った。
「俺がおまえたち二人が適材だと思ったのは、クラスのヤンキーのまとめ役だということだ。俺たち勉強組や中間層を上に置いてもおまえらヤンキーメンバーをうまくコントロールはできないけど、おまえたちなら、ヤンキーも含めてクラス全体をコントロールできる立場にある。だから、俺は推した」
横山と笹川はチッと舌打ちをすると静かに席につき、無言で頬杖をついた。
「じゃあ、他に誰もいないならこいつらに決めるぞ。次は体育祭の実行委員……」
体育祭の実行委員は中間層でスポーツの得意なメンバーで決まった。
「さて、学園祭の実行委員だがこちらは……」
「先生! 具体的にどんな仕事が発生しますか?」
と興味がありそうな中間層の仙道という女子が質問した。
「具体的には昨年、二年生は学園祭を経験しているので、実行委員の委員長など指揮する人は二年になると思うけど、一年はそのサポートかな? 実働部隊と考えてくれればいいと思う」
じゃあ、やりますと仙道が立候補し、承認され、仙道が推薦した同じ部活の河野という男子が了承する形で委員は決定した。
この仙道が学園祭の準備において大鳳高校最悪の危機と呼ばれる事件を起こすのだが、それについては後述させてもらう。
そして話題は今月二十一、二十二日に開催される林間学校について話し合うことになった。
横山と笹川は俺にガンを飛ばしながら教壇に向かった。
そして、進行を務める渋谷先生の話を聞いていた。
まずはチーム編成であるが、六人で一組となることになった。
そうなるとチームは五チームできることになる。
いちよう寝室は男女四室ずつとなるとのことだった。
まさか、男女のグループで一緒に寝るはありえないからだ。
それではグループ分け開始!
ということで俺は勉強仲間の方に向かおうとしたところ、教壇横に立っていた横山の指示のもとヤンキーたちに蹂躙された。
「ちょっと待て、俺の自由は!」
「さっきの二人の推薦の件でお前には自由はない」
とヤンキーたちは言った。
俺はしょうがないとヤンキーたちのところに行くと、ヤンキーの生野敬吾が一言。
「お前、勉強くんたちのあっちのグループ行ったってメンバーは全部で七名、一人溢れるんだから、お前はこっちに来るのが正解だろう?」
まぁ、一人溢れることになれば性格上、俺が抜けると言い出すことになるだろう。
そこで、全然面識のない中間層と一緒になっても馴染めないことは想定の範囲だ。
それだったらまだ顔見知りのヤンキーグループの方がいいかと思った。
しょうがないなあと思って、ヤンキーグループに移動すると、教壇から横山が駆け寄ってきて、耳打ちした。
「お前、何考えてんだよ! めんどくせぇことやらされるじゃねぇよ!」
そのとき、俺は横山にこう言った。
「横山、先週の金曜、お前らに相談された後、予行練習ということで、最初にお前とカウンセリングをしたとき、目標として人に喜ばれたい、感謝されたいって言ってたよな。おれはこの実行委員になることはいいチャンスだと思ったんだよ。お前の統率力を使って楽しい林間学校にしてくれ。お前だったらできると思ったから推薦した」
「これで役に立てるんか? まぁいいや。かずが俺を陥れようとして俺を選んだとは思えなかったしな」
「ありがとう」
と言い、俺は周りを見回し、制服姿になった元ヤンキーたちの姿を見ながらこう言った。
「しかし、ちょっと前までヤンキーだった奴らが、今日改めて見て全員、制服って似合わねぇなあ!」
と笑いながら言うと、元ヤンキーたちは視線を俺に向け、
「てぇめー! 殺すぞ!」
と言いながらみんなで笑った。
部屋の反対側では六名しかおらず、自ずとメンバーが確定してしまった勉強仲間たちがこっちを見ていた。
寂しそうな表情をした多江ちゃんの顔が印象的だったが、隣で笑いながら俺に手を振っていたのは佐々木だった。
後で横山に言って、怖い目に会わせてやろう。
先生の話では、グループ分けとはいえ、グループでの活動は夕食の準備、寝室の組み合わせくらいで、活動のほとんどは全体行動らしいので、チーム編成にはあまり神経質にならなくてもよさそうだと安堵した。
なお、宿泊場所は福島県の磐梯高原レイクビレッジというところだそうだ。
詳細については旅のしおりが出来次第、ホームルームで委員から報告されるとのことだった。
福島県は家族旅行でよく行く場所で、猪苗代湖、ハワイアンセンター(今ではハワイアンズと名称が変わっている)、喜多方、そして三春と言う町。
ここは春が来るのが遅く、梅桜桃の三種類の春の花が一気に咲き競うことから『三春』と呼ばれるようになったと聞いた。
とてもきれいな田舎町で、そこで作っている民芸品製作所を訪問したこともある。
今度は裏磐梯か…… 楽しみだった。
全体活動って言ってたな?
もしかして、夏村さんと行動することもできるかもと考えるとがぜん楽しみになってしまう。
さて、体育祭は運動に縁のない俺には関係のないイベントなので流すとしよう。
文化祭の実行委員か。
通常ラブコメとなると主人公が実行委員になってというくだりが出てくるが、多分この話で出てこないと思う。
というのも、拘束される時間が長いので進学を考えるとなるべくタッチしなくないというのが俺の本音だからだ。
でも、クラスで何かという話にはなると思うので、その方針には従いますよ、原則、従順ですから。
さて、ホームルームも終わり、俺は勉強仲間たちと進学塾に向かう。
一連のヤンキーたちとの関係から仲間が俺から一歩引いているのが気になったが今更そのことを考えてもしょうがない。
そんな中でも多江ちゃんは以前よりも俺に声をかけてくることが多くなっていた。
先月の全国模試で、国立大学医学部を志望する多江ちゃんには九割ほどの正解が必要だったらしいが、そこまでは取れていなかったと焦っていた。
講習後のバーガークィーンでも質問を畳みかけてきた。
「しかし、大変だねぇ、多江ちゃんは」
心配してさくらちゃんは多江ちゃんに声をかけた。
「ううん、もうすぐ模擬試験の解答が帰ってくるから心配で…… 気を紛らわすためにがんばってるだけだから」
すると牧野はこう同情した。
「俺は大学行っても、将来は家のラーメン屋、継ぐくらいいだけど、多江ちゃん背負ってるものが違うもんな……」
「あれ、そういえば同じ理系で学年トップのかずさまはどこ狙ってるの?」
と鵜坂は冗談交じりに質問してきた。
まあ、仮ではあったが夏村さんと決めた志望校をここでは言った。
「俺? 第一は慶応の理工、第二は東京理科大で、第三は東海大の医学部かな」
この言葉を聞いたとき、多江ちゃんの目が光った。
そしてこう聞き返した。
「あれ? かずくん、医学部は無理って言ってなかったっけ?」
「うん、東海大って成績優秀者は寄付金入学金免除で一部学費無償って受験雑誌に書いてあったから、成績優秀者狙いでいこうかなと思って」
とは言ったが、夏村さんが出してくれるとは口が裂けても言えない。
もちろん頼る気も無い。
なぜなら、この選択の場合、行く末は婿養子であるからだ。
「そうなんだ、じゃあ私のライバルだね」
と、この場は軽く言っていたが、それからの多江ちゃんのいろいろな意味での俺への攻撃が強まっていった。
自宅に帰り、自分の部屋に戻ってから、俺は夏村さんに電話をした。
「あっ、夏村さん。かずやです。今、大丈夫ですか? 今日、たけし怒っていませんでしたか?」
「いや、かずやに委員に推薦されたとき、頭に来ていたみたいだけど、なんかやる気出てきたみたいで、『なつさん、俺、がんばります!』って言ってた。笹川も初仕事がんばりますって言ってたよ」
それを聞いて俺は安堵した。
そして、このことが横山に対してよい方向に動いてほしいと願った。
一方、笹川さんは大宮出身のため、同じヤンキーではあるが、高校に入ってから、夏村さんのグループに入ってきた。
見た目は本当に怖かった(実は夏村さんよりも数段怖い顔だ(失礼!))、化粧のせいもある、くどいようだが本当に怖かったのだが、いざ付き合ってみると面倒見がよく、意外ととっつきやすいタイプであることを知った。
俺のクラスは、女子のヤンキーは比較的おとなしめが多いため、クラスの女子ヤンキーのまとめ役になっていた。
「ところで、かずや、林間学校の夜のレクリエーションって知ってるか?」
「いいや? 何、それ?」
「肝試しとキャンプファイヤーだ。特に肝試しは今回行くメンバー誰と組んでいいらしいぞ。かずや、俺と同じチームな!」
「いいよ。でも、俺怖いの嫌だなぁ」
「大丈夫、俺が守ってやるから!」
「ありがとうございます。期待しています」
「あと二日目に自由発表というのがあって、チームを組んで、例えば、磐梯高原に関することを調べて、レポートとして後日提出したりするらしい。ここはかずやが研究テーマを考えて一緒に調査しよう!」
「これも他クラスと一緒はオッケーなの?」
「いいらしい! 楽しみが増えたな!」
『いいらしい』という言葉に引っかかったが、まぁ楽しみにしておこう。
「じゃあ、研究テーマ考えておくね。」
と俺は回答すると、夏村さんは、
「明日、仲間のカウンセリングの後、うち来る?」
と返してきた。
俺は喜びながら、
「もちろん! そのときまでに、研究テーマ案、いくつか提案するね!」
と答えた。
九月七日、全国模試の結果が郵送されてきた。
その話は後にまとめてご報告する。
そして、十六から十八日までは連休であったため、夏村さんとなぜか晏菜と一緒に付いてきて、俺たちが林間学校に着ていく服を探しに行った。
林間学校というとジャージ姿というのを想像するが、うちの高校は自由であった。
そういえば、今日の夏村さん、髪を後ろにまとめ、白のシャツに紺のスカート……
俺は思わず、『セイバー!』と夏村さんに言うと、『エクスカリバー!』と言い、剣を振り下ろすまねをした。
晏菜は意味を全く理解していなかった様子だが、夏村さんはバンドの練習帰りに秋葉原に行った後、セイバーを気に入ったらしく、セイバーのフィギュアをインターネットで購入し、その上、『 fate / stay night』 各シリーズをすでに二回ずつ全部見たと言っていた。
面白い人だなと俺は思ったが、やはり、こういう服装の夏村さんはカッコ良くて、完全にセイバーだった!
十九日、学校が終わってから夏村さんの家に行き、研究テーマの内容の詰めをインターネットを見ながら、決めていた。
磐梯高原と言えば檜原湖・五色沼だが五色沼がなぜ色が変わるのか二人は興味が湧き、それについて写真を撮り集めながら発表しようという話になった。
それらのインターネットで磐梯高原の写真や動画をながめているうち、とある動画に目が留まった。
それを見た時、夏村さんに林間学校の思い出になるであろう、サプライズを思いついた。
願うは当日の天気だけだ。
それまでは内緒にしておこう。
◇◇ 九月二十一日 ◇◇
林間学校当日
集合は浦和駅東口PARCO前ロータリーであった。
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編集記録
2022/09/08 3-1話を分割し、本3-2話を新たに設定。校正、一部改稿




