11ー3話 Real Mind(3)
Real Mind
森川美穂 10thシングル 1988年
「愛、いくら彼女とは言え、付き合うの注意したら、友達連れて彼女の高校にバイクで乗り込むって異常じゃない?」
「愛、そんな時って普通の高校生なら、『ぼくなら大丈夫ですよ』とか、私たちの意見に適切に対応してくれるんじゃないの? これって完全に切れてるじゃない。それだし、バイクで乗り付けたら相手の学校に迷惑が掛かるって思うはずだよ。愛、悪いことは言わないから、彼との付き合い考え直したら?」
「そんなことない! 亮はいつも私しかみてないもん」
と強がってはみたが、デートの最中に他の女性に声をかけられ、彼女たちとヒソヒソ話をしているのを見ていた。
そんな経験はしているが、自分の亮への思いが、彼を信じきる確信はないが、自分の心が勝ってしまう。
「どうする?」
顔を見合わせ合う友人達。
「愛を助けるしかないでしょ」
「そうだね。わたしたちは愛の味方だから、愛がオイタしても見守ってあげるよ。できれば本当の彼氏だったらいいけど」
「彼の行動が反論するための方法であるなら、それでもいい。でも、これからは愛のこと考えて行動してほしいよね」
こんな面倒な話の中、友人達は私を信じて立ち会ってくれようとしている……。
普通なら真っ先に厄介話からは手を引くのが普通であろう。
それなのに……。
愛は自分の行動が軽率だったかもしれないと不安に駆られ、うつむいた。
「愛。大丈夫。みんなが付いているよ。私たちの後ろには生徒会っていう強い味方がいるんだから」
そうなんだ。
友人達は、高松先輩が言っていた、相手を信じ寄り添ってあげること、間違ったことをしていたら注意してあげること、これが『ともだち』なんだという廊下での雑談会の言葉を信じて動いているのかと思った。
逆に友人達の意見を信じて聞く耳を持たなかったのは自分だったのではないかと反省した。
しかし、これも後の祭りだ。
あと数十分もすれば、亮たちはバイクでやってくる。
どうすべきかと愛は考えた。
※※※※※※
「おい、かずや。ずいぶんゆっくりしているな。もうそろそろ奴ら来るぞ」
いつもなら真っ先に行動する俺が、生徒会室の自分の椅子にどっしり座って動きそうにないことに業を煮やした夏村さんは部屋の中をうろうろと歩き回っていた。
「まあ、夏村さん、今日はゆっくりしましょうよ。すべては竹中たちに任せたんだから」
「と言ってもな、竹中だぞ、不安じゃないか」
「奴らは半年以上、俺たちの背中を見ながら考えて、反省して、行動してきました。そろそろ彼らを信じてやってもいいんじゃないかと思うんです」
「しかしだな、面倒を見た身でもあるから心配なんだよな」
「だったら、奴らが何をやっているか見てきたらどうですか?」
「かずやは?」
「何かあったら携帯に連絡ください」
俺が椅子に座ったまま手を振ると、本当に来ないのかという表情を見せながら夏村さんは委員会室を出て行った。
とはいえ、この時点で彼らがどこにいるのか夏村さんはわからなかった。
どこに向かうか迷い、隣の学園祭実行委員会室を見てみた。
部屋からは光が漏れてはいなかったので、多分部屋にはいないのであろう。
とはいえ、何か事を起こす時、俺は委員会室のホワイトボードに書き散らかしてから行動していたことを思い出した夏村さんは、委員会室のドアを静かに開けてみた。
案の定、どこには誰もおらず、もぬけの殻だった。
委員会室の窓は毎年使う機材で埋まっており、いつも暗く、作業をするときは蛍光灯を付けて行っていた。
ただ、ちょっと前まで人のいた気配を感じ、部屋の蛍光灯を付けた。
そして、蛍光灯のついた室内を見回し、夏村さんはうんとうなずき、再び蛍光灯を消した。
「本当に和也の背を見て育ってきたんだなぁ、アイツら」
と言い、夏村さんは委員会室のドアを閉めた。
蛍光灯を付けたとき、夏村さんが見た物は、ホワイトボードに二年生達の討論した記録が残されていたのだ。
※※※※※※
亮たちのバイクは新大宮バイパスを北上中であと十五分程度で大鳳高校に着く地点であった。
信号で止まると、隣に止まった男に声をかけた。
「亮、お前、相手の高校に乗り込むなんて、今後やばくないか?」
「もういいよ。夏休みあれだけ貢いでやったのに、やれたのはキスだけだぜ。他の女だったら二、三回目のデートでやらせてくれたぜ。もう、あいつとはおさらばだよ。でも、『はい、それまでよ』で終わらせても面白くないじゃん。ついでに奴も道連れにして学校の悪者にするのもいいかなって思ってさ」
「俺たちは別につかまらなけりゃ、どうでもいいんだけど、お前、面割れてんじゃん。学校にチクられたらやばくない?」
「そんな肝っ玉座った奴じゃないよ。ビビらせればこっちには被害出ねえよ」
「まあ、いいや。お前の好きにしろよ」
といい、隣の男はヘルメットのマスクの部分を下げた。
「ビビらせればいいだけだよ。あんな女」
亮は乾いた唇を舐めて潤した。
まるで獲物を狙う野獣の舌なめずりのように。
※※※※※※
「お~い!」
佐戸さんと友人たちがいる教室に声をかけ入っていったのは竹中、村上、三浦だった。
「生徒会のものだけど、佐戸さんっているかな」
「私ですけど」
「君の友人からも聞いたけどこれから彼氏さんとその仲間たちがバイクで学校に来るんだって」
「はい、どうしようかと思って……」
「君に聞きたいことがある。彼と向き合って話す勇気はあるかな?」
「……」
「それに答えられないと、俺たちも対策を取れない。もう一度聞きます。彼と向き合って話す勇気はありますか?」
「そこに私たちも居てはいけませんか」
佐渡さんの友人が話しに入ってくる。
すると、私も、私もと、そこにいる五人全員が同席の許可を求めた。
「佐渡さん、いい友達だな。一緒に彼と対峙しないか」
「わ、わかりました。私も彼に直接会って尋ねたいことがあったんで」
「よろしい。じゃあ、村上、三浦。予定通り準備をお願いできるか?」
「了解。池田と望月に連絡しておきます」
と言うと二人はその場から立ち去った。
「さて、みんなには悪いが彼らとの話し合いは校門前の通学路でお願いできるかな」
「通学路?」
「学校内に彼らを入れたくないし、通学路の一方は段差のある畑で、もう一方はドブだ。バイクで来た場合、動きが取れなくなる」
「そこで正々堂々と対決ですね」
「対決なんて大げさな言葉を使わないでよ。警察事案にしたくないからね。ぼくたちは元サヤにもどってほしいだけだから」
「失礼しました。女性ってこう決心すると気合いが入っちゃうんで」
「なるべく、怪我や器物破損はしたくないので通学路でお願いしたんだ。幸いにもうちの高校の周辺って畑の中にポツンとだからね」
「本題ですが、私たちはどうしたらいいですか」
「冷静になって話を進めてほしい。そして佐戸さんの納得のいく結論に導いてくれればいい。中途半端が一番だめだ」
「もし、相手が暴力を振るってきたらどうするんですか?」
「こっちには夏村先輩という、最強の格闘家がいるんで心配要らないよ」
「夏村先輩って格闘家なんですか?」
「いやいやゴメン。今のは内緒にしてくれ。小学校の時に格闘技(何の格闘技だったのか竹中はこの時点で忘れていた)で有段者だったって程度で許してくれるかな」
「ところで今回は高松先輩は?」
「いつまでもあの人に頼ってはいけないと思ったので、今回は二年生がメインで対処することになったんだ。十分、みんな夏村先輩、かず先輩の後ろ姿を見て学んできた。任せてくれないか。まああの人のことだから何か困難な場面が起きそうな時にそれを打開するために現れると思うよ」
「わかりました」
九月といえ、まだ夏真っ最中。
とはいえ三時過ぎともなると湿った荒川からの川風も収まり、しのぎやすくなってくる。
この環境はここにいるメンバーの頭を冷やすには十分なものであった。
「あくまで話の中心は愛ちゃんと彼氏さんね。話に詰まったら私たち話を広げるから」
「ありがとう、がんばる」
「苦しくなったら、私たちの顔を眺めなよ。多分気分落ち着くと思うから」
「うん、わかった。真剣な話だから変顔とかしたらだめだよ」
「そんな余裕ないよ。こんな冗談言える愛の心臓、毛が生えてるね」
「あ~! ありがとう。落ち着いた。がんばるよ」
「仲いいっていいね。俺なんか友達少ないから……。俺の方がかえって緊張しちゃってるよ」
「えっと生徒会のどなたでしたっけ」
「ごめん、二年二組、竹中だ。名乗るの忘れるくらい緊張しているんだろうな」
「大丈夫なんですか?」
「大丈夫。この半年間、競い合い、罵りあって、お互い信じ合えた仲間ができたから」
「先輩に関しては生徒会が友情の架け橋になったんですね」
「うん、いろんなきっかけで友情そして縁というものができるんだなってわかったよ。入学して当初は一人で何でもやろうとして転けまくったからね。夏村先輩、かず先輩がそばにいてくれて本当に勉強になったし、よかった」
「わたしたちも高松先輩の雑談会、毎回楽しみにしてます。その言葉の中で自分に足りないものを意識していく。そんな毎日過ごしていると学校生活も面白いなぁって思うんですよ」
「愛は参加してないから、こんなことになるし……」
「だって、人がいっぱいなんだもの。嫌だ」
「今後は夏村先輩やかず先輩から学んできたものを俺たちが雑談会を受け継いでいきたい。そして大鳳の伝統としていきたいんだ」
「それっていいですね。あとは竹中先輩にもう少し余裕が生まれてくるといいんですけど」
「言ったな!」
としばし、竹中と佐戸たちは会話をしていた。
※※※※※※
「お~す!」
「おう、池田。今日はどうした」
「相変わらず格闘技系クラブって臭えよな」
「それを言うなよ。俺たちの心配要素なんだから。ところで今日はどうした?」
「ちょっとおまえらの力借りたくってさ。屈強なレスリング部、柔道部の方々のお力をお借りしたいと思って」
「生徒会のヘルプか? いつでも言ってくれ」
「複数台のバイクに乗ったヤンキーから高校への侵入を阻んでほしい」
「多少の傷を負わせてもいいよな」
「傷までにしてくれ。怪我は困る。あと、マットをできるだけ持ってきてくれないか」
「了解。すぐ準備するよ」
池田はレスリング部員、柔道部員計40名近くいれば十分と考えた。
あとはなるべく相手に怪我をさせないようにと願った。
マットの使用で収まってくれと。
※※※※※※
「地図上、あと数分でつきます。周りは畑っぽいので、学校正面までの小道(通学路のこと)ではエンジンふかしても大丈夫っすよ。威嚇にもなりますんで」
所詮、彼らは快楽に純粋なだけである。
楽しめればそれだけでいいのだ。
ただ、佐藤には別の楽しみもあった。
自分が性の対象と考えていた女性と縁を切る際の相手の表情を見ることだった。
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