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夏村SIDE 沙羅の気持ち+α

【読者様のコメント】

夏村さんから見た高松は特別な存在だ!

ずっと一緒にいたい気持ちがいっぱいで可愛い!!!

中学生の時に何か事件(?)があってヤンキーになったみたいだけど、何があったのだろう?

高松の言動に首を傾げつつ、ときめいている夏村さん、可愛すぎる!!!

 学校が終わり、今日は勉強会の日。

 かずを教室に迎えに行って、一緒に帰りたいなと思ったが、いつものように自転車だった。

 停留所まで送ってくれてバスのお見送りって、誰が見たって俺が指令した感じになってるじゃないか。

 そんなに俺と帰るの嫌なのかなぁとムッとしながらバスのいつもの席に座っているといつも以上に俺の席の周りに微妙な空間ができる。

 まずいオーラが出てしまっているのだろうか。


 終点の浦和駅西口に着く。

 バスを降りて、ショッピングモールCORSO(コルソ)に向かう。

 地下のフードショップで夕食の買い物をしていると『あーら、夏村さん、今帰り?』と声を掛けられる。

 名前をここでは言ってほしくない。


 この人、たしかこの前、かずの店で会った近所の人だ。

 この前はかずの父さんがいろいろ言ってくれたので助かったが、よくこんなヤンキーに声を掛けてくるなぁ。

「今日はかずくんは?」

 と意表を突く言葉を言われたもんだから、下を向きながら

「後で会います」

 とまじめに言ってしまった。

「相変わらずお熱いねぇ。かずちゃん幸せもんだよ」

 って、こんなヤンキーでもかずくんと付き合っていていいんですか?  おばさん。


 さて、今日は夕食何にしようかとメモを取り出す。

 実は、メモに夕食の毎回の献立が書いてあるから、まだ重なったものを出したことなんだよね。

 結構レパートリーももっているなと自分をほめてしまう。

 やっぱ、今日は暑いから元気の出る、生姜焼きでも作ってやるかと思った。


 明日の分まで買ったので、結構な量、買い込んでしまった。

 さすがに二人分食事を作ると費用がかさむ。

 とはいえ、目立たないくらいの金額なので、お祖父ちゃんも何も言わないだろう。


 駅からかずの家とは反対方向に歩いていくと四、五分で住宅街になる。

 その手前にいつもの出入りしている喫茶店がある。

 さびれ過ぎてしまい、今やヤンキーの溜まり場でしかない。

 ドアを開けるとドアに付いたカウベルみたいなベルがカランカランと鳴る。


「うーす!」

「なつさん、お疲れさまです」

 たけしたち十数名が店内に居た。

「なつさん、今日は勉強会ですか? お疲れさまです」

「あぁ、がんばってくるわ。ところで最近は?」

「特に変化はありません。街中も特に問題は」

「よし、分かった。変化があったら、すぐ知らせろ。それと今度の期末(試験)、赤点は取るなよ。よろしく!」

「承知!」


 店を出ると、両手に荷物でよく奴らと会ったなあと恥ずかしくなったが、何もひやかされなかったから、そのまま自宅に急いだ。

 たけしたちは、浦和駅近辺でイザコザが起こっていないかパトロールしてくれている。

 同じように別のメンバーたちは浦和と付く駅周辺でパトロールをしてくれている。

 俺たちがこんなカッコでうろつけば、この場所でのイザコザを起こそうとする奴らへの抑止力にもなるのでパトロール代わりにやっているのだ。

 和也のご両親にもなぜそんなヤンキーの姿で街をかっぽしているんだと言われたが、こんな理由があることは絶対に言えない。


 現状、抑止力として働いている以上、俺たちは簡単には辞められないんだ。

 彼らに駅周辺のパトロールをしてはどうかと誘ったのは俺だった。

 中学時代の嫌な思い出があったからだ。

 そして、たけしをはじめ、ヤンキーのメンバーたちが胸を張ってがんばってくれているのをありがたく思っていた。 

 さて、早く家に帰って夕食を作らなきゃ。


 なんとか十八時には間に合ったな。

 そんな時、かずがやってきた。

 学校から俺んちまで自転車だと暑いよな。

 だったら涼しいバスで、一緒に帰らないんだと考えたら、また頭にきた。


「かず、汗だくだなぁ。シャワー浴びるか?」

「えっ! 借りちゃっていいのでしょうか?」

 何、声をうわずらせてんだよ。

 当たり前だろ、汗だくだと気持ち悪いだろうしな。

 そういえば着替えか。

 確かおやじのお古のパジャマがあったと思うが……。

「着替え、おやじのお古があるからそれを着てくれ。シャツは洗濯して、帰るとき迄には乾燥機で乾かしておくから」


 さて、かずがシャワーしている間に汗の付いたものを洗濯しておこう。

 洗面場に入り、かずの抜いだ制服のズボン……洗濯表示を見ると洗濯はオッケーだな、シャツと靴下を取って洗濯機に入れようとしたら、目の前にかずのパンツが!……。

 さすがにお父さんのパンツをかずに履かせるわけにもいかないのでハンガーにかけて干しておいた。

 こんなパンツ、あいつは履いているんだな……。


 数分後

「シャワーありがとうございます」

「どうだ、おやじの……。おっ、似合ってるなぁ。次回来た時もこれでいいな」

 うん? 何、あいつ赤くなってんだ?……


 その後、約二時間、今週の授業のまとめを確認した。

 終了!

 すると、かずはニコニコしながらこう言った。

「夏村さん、もう授業、完全に追いついたと思うよ」

 実は自分でも実感してたんだよね。

「本当か、最近授業に完全についていけてるんだよ。俺ってすげーなぁ。よし、自信がついた。サンキューな、かず」

 自分の努力の結果が実って嬉しかったこともあったが、多分かずって教え方がうまいんだろうなと思った。

 附属中学の先生たちよりもおまえ、うまいよと思った。

 そうか、追いついたか……。

 自然に二ヤついているのに気づいた。


 その感動もつかの間、かずは先日のバンドの練習への同行についても礼を言ってきた。

 俺はおまえといっしょに居たかったからついて行っただけなのに……。

「いや、俺が勝手に付いて行っただけだ。なんか俺の知らない世界がそこにも有って、かずの別の一面も見られたから良かったよ」

「それなら結構です……」


 そう。

 その上、かずと付き合うことで一人では味わえない、違う世界をいろいろ見せてもらった。

 俺の知らない曲をすげぇ知っていること。

 近所の人に全て声を掛けてあいさつすること。

 近所の野良猫に好かれていて、かずが近づくと自然と寄ってくること

 かずのご両親と晏菜ちゃんのこと。

 すべてが俺にとって新鮮だった。 

 でも、この時、かずに対して思ったこと、それは。

「うん、かず、カッコよかった……」

 え! え! 言っちまった。

 どうしよう?!


「そう……。そう? え? 今、なんって言ったの?!」

 何言ってんだコイツ!

「カッコよかったって言ったんだよ! もう言わねぇぞ!」

「ありがとうございます……」

 やべぇ、すげぇ照れた……


 かずが態度を改め、こんな話をし始めた。

「そうだ。バンドの練習に付き合ってくれたおわびと言っては何ですが、今度は夏村さんの好きな所、一緒に行きませんか?」

「好きな所かぁ~……。 あー?! もしかしておまえ、俺をデ・デ・デートに誘ってねーか?」

 ちょっ! ちょっ! 何言い始めるんだ? おまえ?

「いや、そんな深い意味はなくって、一緒にどっか行きたいなぁと思っただけですよ。目標の第一段階達成記念として」

「そうか……。すげぇ、良いなぁ。俺の好きなところか……」

「どこでもいいよ、今度の日曜日になるけど」

「ちょっと待て!」

 やべぇ、テンパってきた。どうする? どうする?


 俺はスマホを取り出し、何をすべきか考えずに画面を見ると晏菜ちゃんの電話番号が表示された。

 ここは経験豊かそうな(?)晏菜ちゃんに相談だな、うん。

「もしもし、晏菜(あんな)ちゃん? 夏村です」

 かず、キョトンとした顔で俺の顔を見てるぞ。

 間違った行動してねぇか? 俺。

「あっ、沙羅ちゃん。今日って、おにぃが家に行ってんじゃないの? エロいことされた? 殴っていいよ」

 エロいこと?! したい、じゃなくって、えーと何を話すんだっけ? そうだ、そうだ。

「実は、かずからデートの申し出があった……」

「ヒュー! ヒュー! おにぃやるねぇ、行っちゃえ! 行っちゃえ!」

「初めてのデ・デ・デートってどこへ行けばいいかなぁ……」

「水族館とか動物園とか沙羅さん好き?」

 ………


 晏菜ちゃん、付き合ってくれてありがとう。

 二、三分話したら冷静になれたよ。

 今度はおごんなくちゃな。

 結果、かずとのデートは池袋のサンシャイン水族館に行くこととなった。

 前の日に晏菜ちゃん俺のデートの服をまた選んでくれるということに。

 晏菜ちゃん、ありがとう。


 さてと、飯を食わせて帰らすか。

 収穫もあったし。

「夕飯、もうできるんだが……」

「あっ、いただいていきます……」

 なんか気まずいなぁ……。


 俺は、かずと同じ学校になったことを知った時からどんなふうに声をかければ友達になれるか考えた。

 すごく考えた。

 それで卑怯な策だったけど勉強を教えてもらうことを口実にし、友達になろうとした。

 でも、それ以上の交際って感じになったけど、俺はうれしかった。

 ずっと前から気持ちは変わっていないから、結果オーライで付き合えたのはハッピーだった。

 たぶん俺のことをかずは忘れているとおもってるけど、俺は忘れなかったよ。

 かずに助けてもらったこと……。

 それからずっとかずと会いたかったこと……。

 こんなことは、俺だけが思っていれば良いことだと思っていた。


 その時、かずはマジな顔でこんなことを言い出した。

「夏村さん。俺、ひとこと言わせてほしいんだけど」

「いきなり、なんだ?」

「あなたに最初、学校で呼び出された時、生きた心地がしなかった。夏村さんに勉強を教えてくれ、形だけでも付き合おうと言われた時、冗談でも嫌だと思っていました」

「うん」

(そうだったのか……)

「でも、最近、俺、夏村さんのことばかりをいろいろ考えちゃうんだよ。いつもいつも、朝から晩まで。今、夏村さん何しているのかなぁ、何を考えているのかなぁって」

「……」

(そうか、思ってくれていたのか、ありがとう)

「なんか、それが俺の当たり前になってきて、俺の心の中心にいつも夏村さんがいるって感じなんです」

「……」

「俺は以前、たけしと話した時、夏村さんは俺には考えもつかないような、大変なものをいくつも背負っていると言っていました」

「……」

「でも、こうして一緒にいることで夏村さんの本当の笑顔を俺だけが見ることができたと思うんです」

「……」

(そうだな、おまえにしか俺の本当の笑顔だけじゃない、本心も言えないよ……)

「それが嬉しいんです。俺はもっと夏村さんに笑顔になってほしいんです。俺のために笑ってほしいんです。だから……」

「………だから?」

「今度は俺から言います。

 大変なものもすべてふっくるめて俺も背負うので……。

 こんな素顔のきれいな夏村さんと釣り合わない男ですが……。

 夏村さん

 俺と付き合ってください!」


 こ、こ、こいつ、な、な、なにを言い出すんだ! 冷静。冷静だ! 今は冷静に!

「ん?」


「ん?」


 もういい、こう言って返そう。

「てか、俺たち、もう付き合っているんじゃなかったっけ?」

「え~!」

「付き合っていると思っていたから、いつかずが手を出してくるか楽しみにしていたのに、何もしてこないし。こいつシャイなのか、内気なのかと思ってたけど、まだ付き合っていないと思っていたのか」

「てか、形だけの仮の交際じゃなかったでしたっけ?」


「まぁ、いいや。ありがとう。すげぇうれしい。でも、俺はもっと前からお前が好きだぞ!」

「夏村さん……」

「俺が彼女だとおまえが思っている以上に大変だぞ!」

「いいですよ。もうこれ以上のビビることは無いと思っていますから……」

「いつ警察のお世話になるかわからないぞ!」

「警察関係者に知り合いいますのですぐ出してあげますよ」

「ヤンキーだから、すぐエッチをしたくなるが心の準備は大丈夫か! 今でもいいぞ! 家には誰もいないからな!」

「俺は高校卒業するまではする気はないので我慢します」

「我慢するな! 俺の立場もあるだろう!」

「でも、だめ! 自己処理しますから」

「自己処理ってなんだ?」

「内緒!」


「まあ、俺が彼女なら最強だな!」

「どういう意味かよくわかりませんが……」

「よし! 決定! 今度のデート、新鮮な気分でいけるなぁ」

「そうかもね」

「じゃあ、メシの準備するから」

「お願いします」


 い、い、一体なにを言い出すんだ、こいつ?

 俺も勢いでとんでもないことを言っちゃったけど。

 俺、かずから告白された?

 話は、はぐらかしたけど、付き合うぞ! 絶対に付き合う!

 か、かずのやろうから俺に告白してきたぜ~


 俺はキッチンに向かった。

 超はずかしい。

 レンジのスイッチを入れながら俺は、つい壁を蹴っ飛ばし、大声を上げてしまった。

「やった! おーし!」


 かずは帰った。

 七月にこの暑さは半端ねぇ。

 あー! 誰かに言いてぇ! そう! そういうときは晏菜ちゃんだ。

 俺はスマホを出し、晏菜ちゃんに電話した。  

「はーい、沙羅ちゃん、どうした?」

「か、かずから改めて告白された。好きって言われた。OKした……」

「あれ? まだ告白してなかったの? じゃあ今までの何だったの? 沙羅ちゃん、だせぇ~!」

「うるせぇ、おまえ、今度会ったら殺す!…… でも、今度、服をよろしくな。すげぇの選んでくれよ!」


 本当は俺から告白したかった。

 できればヤンキーではない俺から告白したかった。

 ずっと前から君が好きだったと。

当作品をここまで読んで頂き、ありがとうございます。

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編集記録

2022/08/25 校正、一部改稿

2023/05/06 改稿

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