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7-17話 修学旅行(10)

【読者さまのコメント】

朝、やっぱり夜の騒動の問題が大きくなってる(汗)

高松は夏村さんと修学旅行を続けるにあたっての問題点を列挙し、諦めて早々と帰宅しようとした。

けれど、高松は悪いことをしていないし、学校をより良くしてくれた功労者!

だから、サプライズが!

 ◇◇ 九月二十七日 ◇◇


 修学旅行最終日……

 俺は朝起きて、昨日同様に掛け布団をかぶり、中で基礎英語をイヤホンで聴いていると、布団の上から誰かが俺を叩いているのに気づいた。

 俺はイヤホンを外し、布団の中から抜け出すと、そこには渋谷先生が立っていた。

 周りを見ると、全員布団から顔を出して寝ているので、ここに俺がいると気づいたのであろう。

「おはようございます。何かありました?」

「ちょっと、夏村と一緒に朝食会場に来てくれ」

「夏村さんには俺が?」

 と俺は自分を指さし、渋谷先生に尋ねた。

「当たり前だろう。最近は教師が女子の部屋に確認に行くと、男性教員だった場合、女子からセクハラ扱いされる可能性があるんだ。お前だったら隣の部屋はスルーだろう?」

「そういうことですか…… 多分、そうっすね」

 と言い、朝食会場で待っていて欲しいと渋谷先生に頼んだ。


 とは言え、一人で隣の部屋に行くのはやはり怖い。

 セクハラ云々ではなく、何か罠があったらどうしようかと思ったからだ。

 あのメンバーなら、あり得ないことでは無い……

 俺はスマホで夏村さんに電話した。

 すぐに夏村さんは電話に出た。声を聞いて寝起きだなと俺は思った。

「かずか? おはよう」

「ん? 夏村さんに『かず』って言われるの久しぶり。寝ぼけてる?」

「い、いや、何でもない…… ところで要件は何だ?」

「渋谷先生から呼び出し。朝食会場に来いって」

「わかった。五分位、廊下で待っていてくれ」

 

 俺は別に準備など要らないのですぐに部屋を出たが、夏村さんは女性。

 身支度をしてから外に出たいのであろう。

 

 五、六分後……

 ドアの反対側の廊下で待っていると、夏村さんは部屋から出てきた。

 化粧はしていないが、髪の毛をまとめた感じであった。

「すまん。じゃあ、いこうか」


 お仕事とはいえパトロール中に、同級生を助けたことが大事(おおごと)になってしまい、そのうえ、奴らの仲間の襲来まであり、夜まで憂鬱を引きずってしまった。

 もう、今日はご勘弁というのが二人の意見だった。


 朝食会場に着くと、昨晩、面談をした場所に先生方が座っており、そこにプラス、同行していたことすら忘れていた、中島教頭も座っていた。

 嫌な予感しかしないのだが、昨晩同様、先生達が座っているテーブルの横に行き挨拶すると、席に着くよう促された。

 席についたことを確認し、渋谷先生は、

「昨日の同級生保護の件、そして地元チーマーの対応の件、ありがとう」

「いえいえ」

「実は、昨日、うちのホテルに来たチーマーのメンバーだが、あの状況を外で見ていた通行人が警察に連絡し、その後駆けつけた警官に任意同行を求められ、不法侵入と昨日、別の時間に他校の修学旅行生を狙って、恐喝等行っていたことがわかったんだ。そしてそいつらも逮捕になったんだが、その一件と四条通りでの乱闘が一つの話題にまとまって、今、ネットニュースで報道されてしまっているんだ」

 と言いながら、スマホでニュースの記事を二人に見せた。

 スマホのニュースでは確かにうちの高校名は特定されていなかったが、俺と夏村さん、五人の同級生が顔にモザイクの入った形で写真が掲載されていた。

「確かにさらに大きなことになってますね。まずいな……」

 と真剣に悩んだ俺を見て、夏村さんは肩を叩きこう言った。

「かずや、俺たちが別に悪いことしている訳じゃ無いんだから心配すんなって」

 励ましてくれているのだろうが、事が事である。

 このことが今後修学旅行中にどう影響してくるのか、わからないからだ。

「いや、夏村さん、楽観しないで下さい。このことがこれからの修学旅行にどのように影響を及ぼすかを考えながら動かなくてはいけないと思うんですよ。下手すると学校特定されて、訪問先、今日は映画村ですが、そこで何が待っているかわからない。他の生徒にも影響を及ぼさないとは言いきれないんですよ」


 今までの経過を自分なりに要約すると……

 ✓ネット上に二人の顔はバレている

 ✓一連の事件はニュースになるほど大きくなっている

 ✓俺たち二人以外の同級生達は何も関係はない。

 となると…… 結論はこれしか無いのかと俺は思った。

 

「まずは、俺たち以外のメンバーは修学旅行を続行し、予定通りに修学旅行を終える。そして俺たちは……」

 しばし俺は沈黙する。最善は…… どうする?

「二人は先に東京に戻るでいいんじゃないですか?」

 その言葉を聞き、夏村さんは下を向き、ぎゅっと握りこぶしを作った。

「これなら、みんなには影響なしになりますし、どうでしょうかね?」

 と俺が提案すると今まで何も言わなかった中島教頭が口を開いた。

「君たちが帰る必要はない。君たちは決して悪いことをしていた訳じゃないんだ。そこで提案がある」

 教頭が何を言い出すのか想像は付かなかったが、この時点で俺が提案した『二人で先に帰る』は消えたのかと俺は思った。

「みんなとは京都内での移動は別行動にする。実は二人の移動方法は旅行会社と折衝して、タクシーをだしてもらうことにした。そして、新幹線はみんな一緒に帰る。それでどうかな?」

「そんな扱いしてもらっていいんですか?」

「今までの君たちの奮闘への学校からの礼だ」

「でも、うちみたいな公立高校がそんなことして大丈夫ですか? 私立じゃないんですよ」

「お前らが言わなければバレることはない。同級生達にはどちらかが調子崩して別行動になったと言えばいいだけだ」

 俺は夏村さんの顔をのぞき込むと、夏村さんはいまいち状況が読み込めていない様子だった。

 ここは夏村さんに結論だけを言おうと思った。

「夏村さん。今日はぼくらだけで自由行動だって!」

「ということは井上とかに邪魔されないで、イチャつけるな!」

「それは先生達のいる前で言わない方がいいんじゃないの?」

 といい、お互い笑いながらハイタッチした。

 それから、教頭の今日のスケジュールの提案をメモが無かったので、スマホのメモ帳に記載し、礼をいい、先生方と別れた。

 

「さて、どちらが調子悪いことにする?」

 自分たちの部屋に向かいながら、夏村さんはこう言った。

「俺、嘘とか演技下手だからな。かずや、お前やれよ」

「別にいいけど。四条通りでの格闘で左腕が悪化して、その上、左足も痛めたことにしておくよ」

「まあ、それが無難だな。かずやはウソが得意だからな」

「夏村さんにはすぐにバレますけどね」

 と言い、各自の部屋に戻った。


 俺が自分の部屋に戻ると、全員がすでに起きており、円形に集まりスマホを眺めていた。

「ただいま~」

「かず、お前と夏村さん、昨日の四条で大騒ぎ起したんだってな!」

 部屋に入るなり、佐々木が俺に話しかける。

 大騒ぎってほどではないんだけどね。

 しかし、昨晩、こいつらにラインを送っていなかったのは俺の失敗だった。

 そこをちゃんとしていれば、昨晩の奴らの来襲はなかったはずだったからだ。

 しかし、説明が面倒くさい。

「ちょっと、パトロールの時、同級生を助けただけで…… 自己防衛なんですよ…… 相手がナイフとか出してきたんで。だけど、結果として、左腕と左足をちょっとやっちゃって……」

「ところで夏村さんは?」

「ピンピンしてるよ」

「さすが、元ヤンキーのトップは違うな……」

「で、俺がこんな調子なんで、別行動ということになりました。悪いですがみんなとのバスには乗らず、別行動になるので申し訳ないです。でも、映画村と新幹線では一緒になるから」

「そうなのか…… 気をつけてな」

 よし、これで男子は問題ないであろう。

 というか、最初から奴らはあまり俺がどうのこうの気にはしていないのだろう。

 あとは夏村さんが女子連中をうまく丸め込むだけだ。


 荷物をまとめ、必要なものだけをバッグに入れ、部屋を出た。

 空っぽになった部屋を一人眺めながら、今度は夏村さんとゆっくり京都に来たいなと俺は思った。

 多分、その時はこのホテルにはお世話にならないと思うけど。

 

 ホテルの出口に着くと、旅行会社の担当者が俺たちを待っており、送迎のタクシーのところまで送ってくれる様だ。

 俺はメンバーに一時的な別れを言い、夏村さんとタクシーの方に向かった。

 その様子を見ていた多江ちゃんは不思議にそうに俺たちを目で追い、

「佐々木君、確かかずくん、腕と足を怪我したんで別行動って聞いていたけど、なんで夏村さんも一緒なの?」

 と尋ねたが、多江ちゃんの質問に回答する情報がないため、佐々木はこう返した。

「怪我したなら、嫁が同行って普通じゃ無いの?」

 その回答に納得する男子メンバーと納得しない女子メンバーであった。

 

 一歩前を旅行会社の係員が歩き、その後をわざと左足を引きずった俺と夏村さんは歩いた。

「夏村さん、女子メンバーはうまく言いくるめることできた?」

「うん、一緒のバスじゃないからブーブー言っていたけど、映画村では一緒なので納得してくれたと思う」

「じゃあ、大丈夫かな?」

「よく考えてみると、タクシーの中、俺とかずやだけじゃねえか! ラッキー! 俺も小倉さんみたいに甘えてみようかな?」

「見てたの?」

「席後ろだったし。ただ、前日の女子会の影響で怒れなかっただけだし」

「結果として女子会があって良かった訳だ」

 

 どうやら、先に出発したのは俺たちのタクシーだったようで、太秦の東映映画村には俺たちが先についた。

 開園時間は九時半であったため、到着した時はすでに開園していた。

 俺たちは映画村入口のチケットブース前にいた、映画村の係員からチケットをもらい、旅行会社の係員に礼を言って別れ、映画村に入場した。

 これは余計な邪魔が無く、二人の時間を満喫できるなと俺は思った。

 夏村さん自身、時代劇を見た経験がないということだったので、江戸の街並みについては後で説明しながら回ることにした。

 というのは、俺はどうしても夏村さんとやりたいことがあったからだ。

 俺は夏村さんの手を取り、宿場街、歌舞伎の中村屋の芝居小屋を抜け、ある場所に着いた。

「『扮装写真館』ってなんだ?」

「江戸時代の服装を着て、写真を撮るヤツだよ。東京ディズニーランドのカリブの海賊のところにもあったでしょ?」

「ああ、俺は嫌がったのに無理矢理、何か着させられて写真撮ったヤツな。ここにも同じようなものがあるのか」

「夏村さん、お願い! 舞妓さんの服着て、写真撮らせてくれないかな? 今なら誰もいないし、絶対に夏村さん綺麗だから似合うと思うんだよね!」

「しかたないな~! かずやに言われたら断れねえからな。いいよ、好きにしろ」

 すると俺は係の人に夏村さんは舞妓さん、俺は浪人の衣装をお願いした。

「彼氏さん。彼女さんと一緒に写真撮りますか?」

 と言われたので、俺は、

「舞妓さんと浪人が並んでいたらどう見ても、舞妓さんを(かどわ)かしているかのような場面にしかならないので、別々に撮らせてください」

 と頼んだ。


 準備には十分とかかからなかった。

 舞妓さん姿の夏村さんが恥ずかしそうな顔で撮影場所に入ってくる。

 俺は思わず、呆けた顔で夏村さんの姿を見入ってしまった。

 カメラの後ろに立った女性の係員は夏村さんの姿を見ながらこう言った。

「彼女さん、お綺麗ですね。すぐにでも女優さんトップ候補ですよ。見た目は」

 その不用意な『見た目は』という言葉が変に俺のツボにはまってしまった。

 まずいことに、照れながら入ってきた夏村さんを俺は大笑いした形で迎えるタイミングになってしまった。

「ばかやろう! こっちは照れながら入ってきたのに大笑いって、そんなに似合わないのか!」

 とキレていたが、俺は真顔を無理に作りながらこう言った。

「すみません。係員さんが今でもトップ女優になれますよって言っていたので、ヤンキーでトップ女優かよっと思って笑っちゃいました。でも綺麗ですよ」

 大笑いから夏村さんを見て、見とれてしまうのに時間はかからなかった。

 まあ、ここまで身長の高い舞妓さんはいないだろうが、やはり『格好良い』がぴったりする言葉だった。

 何枚か写真を撮って、今度は俺の番。

 着替えて、撮影場所に俺が来ると今度は夏村さんが大笑いしている。

「かずや。お前、本当に汚い役、似合うな」

「要らぬお世話じゃい!」

 と言い、撮影のために襟元を整えた。

 すると、係員がカメラの後ろに立ち、すきなポーズをお願いしますと言った。

 俺は一呼吸整え、腰をかがめ、一度目を閉じ、目を開けたと同時に刀を横一文字に抜いた。

 そして、お願いしますというと係員は撮影した。

 俺の抜刀の姿と同時に、笑っていた夏村さんの表情がこわばった。

 シャッター音が何回か聞こえたので、俺は刀をさやに戻し、笑顔で『ありがとうございました!』と言い、着替え室に戻った。

 すると撮影していた係員と夏村さんは目が合い、こんな会話になった。

「彼氏さんって、普段やさしそうですけど、今の表情はちょっと凄味(すごみ)がありましたよね?」

「はい、私が見ても、ゾクッとしてしまって笑うの忘れちゃいました。そんなところがかずやにもあるんだ……」

「でも、写真、とてもかっこよく撮れてますよ。見ます?」

「はい、見せてください」

 と言い夏村さんは写真を見せて貰った。

 今まで見たことのない、笑顔の一切無い、マジ顔の俺だった。

 それを見て、夏村さんは俺がこんな表情をすることもあるんだと思ったとともに、他にも自分の知らない俺が居るのではないかと思った。

 

 写真は二枚ずつ買い、自分と相手の写真一枚ずつ手に取った。

 さあ次の場所へと向かおうとしたとき、同級生達は入園が始まったらしく、知っている顔を見るようになった。

「早めに撮っちゃって正解だったでしょ?」

「そうだな、同級生にはみせたくないもんな」

 と言い、お互いの写真を自分のバッグにしまい込んだ。


 それからは、俺から夏村さんへの時代劇セミナーをしながらの園内の散策になった。

「この橋は何だ?」

「時代劇だとその町の境を意味する設定で、橋のこちらは繁華街、むこうは郊外という意味で使われますよね」

「歌舞伎ってこんな小屋でやっていたのか?」

「当時は各一座がこういう小屋をもっていて、そこで公演をみせていたみたいですね。今は東京や京都、大阪とかに歌舞伎座という定まった会場がありますけど、当時はこの建物を分解して、旅をしていたようですよ(この辺は結構適当なことを言った)」

「なんだ、この吉原っていうところは?」

「う~ん (躊躇……) 日本の宿場街には同じような店があったらしいんですけど、お金払って、女の人と宴会騒ぎする店ですよ。格子の中にいる女性を見て、ここに入ろうと決めたりするんじゃないんですか?」

「昔もキャバクラみたいなところがあったんだな」

「(若干違うような感じはするけど、黙っておこう)」

 

 その後も、忍者屋敷では夏村さんの運動神経の良さが爆発。

 演技指導の講師が舌を巻くようなアクションを見せたり、お化け屋敷では夏村さんはまったく驚く気配が無く、かえって俺の方がビビってしまい、夏村さんに笑われたりした。

当作品をここまで読んで頂き、ありがとうございます。

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編集記録

2023/02/15 一部改稿、本話を二分割した。

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