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【神託】で選ばれた真実の愛の相手がくそなんですけど  作者: はるくうきなこ


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39解消手続きが


 「騎士殿!加勢させてくれ!」

 カイヤート達が走り出る。

 「いえ、ここは私が!」

 私はとっさに前に出る。

 「そんなカッコ悪いこと出来るか。セリ、いいからお前は下がってろ!」

 「それは出来ません!」

 「ばか、お前は俺の大切な番なんだ。いいからここは任せろ!」

 カイヤートは剣を構える。

 そこにライノスさんとクラオンさんが加勢する。

 「お前らは下がってろ!」

 「ですが」

 「いいから、俺の言うことを聞け!それより大叔母様を守れ」

 「わかりました」

 二人はすぐにリンネさん達の前に立ちはだかる。

 辺境伯もいるしリンネさんは大丈夫だろうと判断する。


 その時見覚えのある副神官のアブレイ様が走り出た。

 「お待ちください!」

 「何だアブレイ」

 「殿下はまだ<真実の愛>の解消はされておりませんよね?」

 「ああ、婚約解消はまだだが、それが?」

 「いえ、そうではなくて神殿に解消手続きをされたかどうかです」

 「神殿に解消手続きってなんだそれは」

 お出ろ殿下は寝耳に水とばかりに聞き返す。

 私も一体何の話だろうとアブレイ副神官の話に聞き入る。

 しばし、みんなそのまま動けないままだ。


 「神粋の儀式で選ばれた二人はまさに神の祝福を受けるのです。ですから万が一<真実の愛>の相手と別れる場合はまた神殿に出向き解消手続きをしなくてはならないのです。大抵、婚約解消の時に一緒に手続きをするはずですが」

 「ああ、それならまだだ」

 「ああ、良かった。でしたらセリーナ様がここで殿下と一緒に帰られない場合、婚約解消をされると言う事になるかと。と言うことは神殿の解消手続きが必要になります。ですが、殿下は婚約を解消するおつもりはない。ですよね?」

 「ああ、そう言ってるだろう!」

 オデロ殿下はまどろっこしい奴だとばかりに語尾を荒げる。

 でも、私は何だかとても嫌な予感がして来た。

 もしかしてこれってすごくまずいんじゃ?


 「そうなりますとセリーナ様は一方的に神の祝福を反故にしたという解釈になりますのでセリーナ様の魔力は神に返して頂く事になるのです」

 うん?どういう事?あまりにまどろっこしくて話が見えない。

 それはオデロ殿下もらしく。

 「おい、それは?つまり?もしセリーナが俺と帰らなければ魔力を失うと言う事か?」

 「はい、そうでございます。私が証人となり神殿に帰りましたらすぐに大神官様に報告をします。さすればセリーナ様の魔力は失われます」

 「どうしてそれを先に言わない!!?そうと分かっていれば話は簡単だろう」

 オデロ殿下が勝ち誇ったような顔で私を見た。

 「セリーナ。そう言うことだ。さすがに帰るしかあるまい?」


 チッ!何その偉そうな態度。

 そんな事で私が怯えるとでも‥でも、魔力がなくなったらどうなるんだろう?この国で平民としていいて行けばいいじゃない。

 でも、もう聖女としてやっていけなくなる。この国が困るのを見過ごしたくはないけど‥ああ、もうどうすればいいんだろう?

 頭がくらくらして来てふら付いた。

 カイヤートがさっと私を抱きかかえてくれる。

 「セリ、大丈夫か?」

 「ごめんなさい。カイヤート様、私、聖女出来ないかもしれません」

 「そんな事はいいんだ。俺はセリがいてくれるだけでいいんだ。セリお願いだ俺のそばに。いやこの国のどこかでいい。シェルビ国に帰らないでくれ、あいつのものになんかならないと言ってくれ!お前は俺の番なんだ!!」

 真っ直ぐに見つめる琥珀色の瞳に嘘はないって思いたい。

 番という言葉の意味もはっきりとわからないけど。

 シェルビ国に帰ると言う選択肢はないけど。

 それでもカイヤートは信じてもいいって思えた。


 そこにオデロ殿下が走り寄って来る。すぐ目の前で立ち止まるとカイヤートに抱きかかえられている私に手を差し伸ばしてくる。

 「触らないで!」

 「いつまで強がっている?もう、俺と帰るしかないってわかっただろう?さあ、来い!」

 「私は行きません。<真実の愛>解除?どうぞ好きにすればいいわ」

 オデロ殿下が目を見開く。

 「魔力を失うぞ。それでいいのか?この国で平民としてただの人間としてやって行ける訳がないだろう。いいから素直になれ。俺も悪かった。これからはお前を可愛がると約束する。なあ、そう意地を張るな」

 オデロ殿下が馴れ馴れしく私に触れようと手を伸ばして来る。


 カイヤートの出す殺気がピリピリと肌を伝わって痛いほどだ。

 ぎゅっと私を抱き留めた腕に力が込められて彼がぎりっと歯ぎしりをする音が聞こえる。

 「大丈夫だから」

 私はそんな彼にふっと目を向けて柔らかく微笑むと抱きかかえられた腕をそっと外す。

 こんな状況で笑えるなんて‥でも、恐くなんかない。

 

 私はオデロ殿下と真っ直ぐに向き合う。

 「オデロ殿下。そんなまやかし信じるとでも?ふざけないで。私は帰るつもりはありません。これ以上何を話しても無駄です。オデロ殿下。さあお引き取りを」

 「チッ!下手に出れば‥いいんだな。もういい!力ずくで連れて帰る。おい、シーデンやれ!」

 「そんな勝手な事させるかよ!」

 カイヤートが私の前に立ちはだかった。







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