10ユーゴ殿下の距離感がおかしい
「やってられないわね。あんなの相手にする事ないわよ。朝は声を掛けたかったけどそんな雰囲気じゃないみたいだったから」
そう言ったのは親友のマリーズ・アトリン侯爵令嬢だ。彼女の瞳も翠緑色の瞳髪色は金色で光魔法を使う。
婚約者はラバン・キアード伯爵令息で氷魔法を得意としている。
二人も神殿の神粋の儀式で決まった<真実の愛>のカップルだ。
二人は幼馴染で仲がいい。訓練でもいつも息ピッタリで私とオデロ殿下より好成績を出す事もある。
「ええ、ごめんなさいマリーズ心配かけて、朝からあの二人に出会って気分が悪かったから。ほんとに早く婚約破棄してほしいわ」
「でも、殿下ははっきり言ったじゃない」
「国王が反対みたいなの。神殿で決まった婚約を破棄するなんてできるわけがないんだって‥」
「あんた態度なのに?酷すぎじゃない?」
「ええ、だから私も遠慮するのはもうやめようと思って。言いたいことははっきり言うつもり」
「だからさっきあんな事に?」
マリーズがくすっと笑う。
「ええ、今日の訓練二人でやるんだって」
「えっ?でも、今日は副神官も来るのよ。大丈夫なの?」
「さあ?どうなっても知らないわよ」
私のそのつもりでけしかけたのもあるんだけど。こんなにうまく行くとは思わなかったけど。
ランチに行くとトレイを手に並んでいるとユーゴ殿下から声を掛けられた。
「セリーヌ大丈夫だった?」
「えっ?何です」
「だって訓練、兄がアーネとやるって言ってるんだろ?」
どうしてそれをユーゴ殿下が知ってるわけ?
「どうしてそれを?」
「さっき、教室の前を通った時聞こえたんだ。ちょうどいいんじゃない?二人が息ピッタリだったら‥」
「あっ、そうですね。もしかしたら二人が<真実の愛>のカップルだったって事になるかもしれませんよね!」
そうだ。私ったらどうしてそこに気づかないのよ。オデロ殿下とアーネが息ピッタリだったら‥
ランチを食べたらすぐに神官に話をしに行こう。
「そうとなったらしっかり食べておかなきゃ。さあ、これセリーヌ好きでしょ」
ユーゴ殿下が私の大好きな特大のサーモンのソテーをお皿に入れてくれる。
「どうして?」
「そりゃずっと見て‥いや、なんとなくだ。ついでにこれも」
続いてベリーのパイの入ったお皿がトレイに置かれる。
「何だか気味わるいんですけど‥」
「ひどいな。俺は今日のランチを置いただけだけど‥いいから、一緒に食べよう」
ユーゴ殿下はさっさと席を確保している。
私とユーゴ殿下、マリーズと婚約者のラバンも一緒に席に着く。
話は午後の訓練の事だった。
「ラバン様。今日こそ完璧にしましょうね」
マリーズが張り切って言う。
「どうしてもマリーズとタイミングが合わないって言うか‥」
ラバンがぼやく。
「マリーズ嬢がラバンの魔法が最大になるまで待つようにしたらいいんじゃないのかなじゃあ‥」
ユーゴ殿下。
「そうか。マリーズが待ってると思って俺つい焦るんだよな‥マリーズにいいとこ見せたいから‥マリーズ今日は俺は合図するまで待っててくれないか?」
「ええ、もちろんいいわよ。もう、やだ。ラバンったら」
「何?俺怒らすような事言った?」
ラバン様の心配そうな顔。
「違うわ。ラバン様がカッコいいと思って‥」
マリーズは真っ赤になってラバンの腕をはたいた。
ああ、うらやましいわ。
あいつとそんなやりとりした事あった?
さみしぃ~。
私は皿のサーモンを思い切り頬張った。
そこに突然ユーゴ殿下が。
「セリーヌ。兄と組まないなら今日は俺と組んでみないか?」
「ぶふっ!‥じょ、冗談ですよね?ユーゴ殿下」
私はもう少しでサーモンを吐き出すところだったが、もしかしたらこの提案今までで一番いいアイディアかも。
その少し離れた席でオデロ殿下とアーネが仲良く食事をしていた。
そりゃもう、熱々な雰囲気であ~んしてなんて。
ああ~早く婚約破棄して欲しい。
それにしてもユーゴ殿下一体何があったんだろう?
今までこんなに話しかけられることもなかったしそばにも来なかったのに‥




