番外編 《メタイベント》バレンタインだよ‼︎
ハピハピバレンタイン〜♪
バレンタインなのにチョコレートじゃなくてあんこ餅とめざし食ってたのは私です。
※決してお菓子とかチョコレートが嫌いな訳じゃないです(笑)
という訳(何がという訳なんだろう?)で、バレンタインな甘いお話(?)をプレゼントフォーユー(*´∀`*)
本編が進まなくてごめんなさい‼︎ 今後とも気長にお待ちください‼︎
それでは、今後ともよろしくどうぞっ(・∀・)ノ
「とーとつに始まる〜バレンタインチョコ作り会〜♪」
「わーい」
「もう慣れたわ〜」
「いや、どういうこと……?」
「なんで、あたくしまで……?」
私の開始の音頭にリズベットさんとアウラさんはパチパチ拍手をし、新規参戦な姉御と魔女姫様は困惑した顔をしていたわ。
まぁ、そうよね。バレンタインを知らない人からしたらこうなるわよね。
だから、軽く説明。
「説明‼︎日頃感謝になっている人、気になる異性、恋人、愛しい人、伴侶、または友達も可にチョコレートを渡します‼︎そのチョコレートを作ります‼︎以上‼︎」
「「なるほど?」」
「という訳で、レッツクッキーング♪」
こんな適当な始まりだったけれど、他の皆も料理を始める。
まぁ、手の込んだものなんて作れないから、チョコレートを溶かしてハート型やら星型やらに入れたり、ドライフルーツに付けたりして冷やすだけだけど。
「…………これ、このまま渡してもいいんじゃ……?」
初めてゆえにちょっと慣れない手つきで進める姉御は、小さな声でポツリと呟く。
あっ……気づいてしまったのね?
でも、リズベットさんがそんな姉御の頬を突きながら、にっこりと微笑んだ。
「リリィちゃん、リリィちゃん。大事なのは想いを込めることなんだぞっ☆」
「いや、でも……」
「手作りして、想いを込めることなんだぞっ☆」
「………ア、ハイ……」
にっこり〜。
リズベットさんの笑みに負けたのか、姉御は大人しく手を動かし続ける。
魔王屋敷に来てからは料理をするようになったアウラさんも落ち着いた様子ね。
後は……。
『キェェェェェェェェ‼︎』
「「「「……………」」」」
『キュケェェェェェェェェェ‼︎』
「「「「……………………………」」」」
私達の手が止まり、ゆっくりと首を動かす。
視線の先には頭を抱えるマリカ様と……その手元でウニョウニョ蠢めく謎物質。
イメージ的に一番近しいのは、タコかスライムかしら?鳴き声は全然違うけれど。
私達は頬を引き攣らせながら、マリカ様に質問した。
「マ、マリカ様?それは……」
「……チョ、チョコレート……よ?」
『クケェェェェェェェェエ‼︎』
「……………チョコレートの……はずなのよぅ……」
………マリカ様。残酷なこと(ではないかもしれない)を言うけれど……。
チョコレートは動いたり、喋ったり、叫んだりしないのよ……。
これ、料理下手以前の問題よね……?
私達の視線にマリカ様は悟ったのでしょう。
これが普通じゃないって。
彼女は悔しそうにテーブルを叩きつける。そして、呻きながら呟いたわ。
「………なんでっ……‼︎こうなってしまったの……⁉︎はっ……⁉︎だから、ロゼはあたくしに料理をさせなかったというのっ……⁉︎」
おぉうっ……まさかのマリカ様は料理禁止されてた感じなのね……。
「……あの、これ。どうしますの?」
アウラさんが今だに『キェェェェェェェェ』と叫ぶチョコレート(?)を指差しながら、首を傾げる。
私達は互いに顔を見合わせて、黙り込んだわ。
「…………取り敢えず、捨てるのは勿体無い(捨てたら呪われそうで怖い)から……ムッツリにあげるといいんじゃないかしら?アレでもSランク冒険者だし。何かあっても大丈夫でしょう」
「「「「…………」」」」
私の言葉に他の四人はスッと目を逸らす。
そうして……セーゲルが生贄になることが決定したのだった……。
*****
【アウラside】
魔王屋敷のわたくし達に与えられた私室に戻ったわたくしは、窓から見える〝ウメ〟という名の花を眺めていた彼の元に歩み寄った。
「スイハ」
「ん?どうかしたか、アウラ」
「ハッピーバレンタイン、ですわ」
わたくしは皆様と作ったチョコレートが入った箱を差し出した。
スイハはぱちぱちと目を瞬かせて、わたくしと箱を交互に見たわ。
「…………なんだ?はっぴーばれんたいんって?」
「バレンタインは……」
わたくしはフリージア様から教えてもらったバレンタインの説明をスイハにも伝える。
すると、彼は頬を緩ませて……わたくしからのチョコレートを受け取ってくださったわ。
「へぇ……そんなイベントなのか。ちなみに?アウラがおれにくれる理由は……」
「勿論、愛しい旦那様へ……よ?」
「だよな。ありがと」
スイハはチョコレートの箱にキスをしてから、わたくしの腕を引いて柔らかいキスを落としてくれる。
………バレンタイン。
うん。とても素敵なイベントだわ。
*****
【リズベットside】
第Ⅶ大陸の屋敷に帰った私は、玄関まで迎えに来てくれたハル君に駆け寄った。
「ハルくーんっ、ただいま〜‼︎ついでに、ハッピーバレンタイン〜‼︎」
「うわぁっ‼︎ありがとう、リズっ‼︎愛してるっ‼︎」
「私も愛してるよ〜‼︎」
私はニコニコと笑いながらハル君にチョコレートを渡す。
彼は本当に嬉しそうに笑って私を抱き上げて、その場でクルクルと回り始める。
うふふっ……何年、何百年、何千年経とうとバレンタインは楽しいね。
ハル君は私の唇に触れるだけのキスを落とす。
だけど、その目に滲んだ隠し切れない情欲に……ぞくりっと背筋が痺れた。
「ちなみに……えっちな展開はお許し頂けますか?」
「ハル君はいつだってどんな時だってえっちな展開をお望みでしょう?駄目って言ったってシちゃうでしょ?」
「勿論」
「なら、聞くだけ無駄なんだよ?それにね?」
ーー今日はちょっとだけ、私も乗り気なんだよ?
そう彼の耳元で囁けば、もうハル君は我慢なんてできなくて。
いやぁ〜本当、ハッピーバレンタインだね‼︎
*****
【リリィside】
あたしは皆と一緒に作ったチョコレートを手に、寮の自室に戻っていた。
バレンタイン。
フリージア様の言葉の通りなら、大切な人にチョコレートを贈るイベント。
でも、あたしに大切な人……なんて……。
「……………」
頭の中に浮かんだ人を消そうと、首を振る。
駄目、駄目だよ。あの人が好いていたのはあたしじゃない。
ーーーーあの子の方だ。
だから、あたしは……。
「…………食べちゃおう」
あたしは箱を開けて、ハートの形になったチョコレートを口に放り込む。
甘くて、ちょっとほろ苦い。
「………うん。チョコレート、だな」
あたしはそっと目を伏せて、そう呟いた。
…………いつの日か、あたしの大切な人に渡せる日が来るのかな?
*****
【マリカside】
あたくしはディングス王国の王都にある冒険者ギルドに乗り込んでいたわ。
「頼もうっ‼︎」
ーーバンッ‼︎
沢山の視線に晒されるけれどあたくしはそれを無視して、受付で何かの手続きをしていたであろうセーゲルを見つける。
彼もこちらには気づいていて、とても驚いた顔をしていて。
けれど、次の瞬間には蕩けるような笑顔を浮かべて駆け寄ってきたわ。
「マリカ嬢、好きだ‼︎」
「ふ、ふわぁっ⁉︎う、煩いわっ‼︎」
「あぁ、それでも好きだ‼︎結婚してくれ‼︎」
「っっっ……‼︎」
も、もうっ……‼︎
なんでいつもいつもっ、あたくしは良い返事を返さないというのにっ、諦めないのっ⁉︎
どうしてっ、そんなに好きだって言ってくれるの⁉︎
「まさか、貴女の方から会いに来てくれるなんて。どうかしたのか?やっと、結婚してくれる気になったのか?」
セーゲルはキョトンとしながらそう聞いてくる。
……ハッ‼︎そうだったわ、とっとと用事を済ませてしまいましょう。
「バ、バレンタインっ‼︎よっ‼︎決して、気になる異性にあげるという理由ではないんだからぁぁぁあっ‼︎」
ーーーービタァァァンッ‼︎
「ふごっ⁉︎⁉︎」
チョコレートを彼の顔面に叩きつけるなり、あたくしはその場から逃げ出す。
あぁぁぁぁあっ‼︎すっごい、恥ずかしいっ‼︎
……。
…………。
けれど、直ぐに魔王領に戻ったあたくしは知らなかったわ。
その後、何故かチョコレートが大きくなって……冒険者ギルドを崩壊させてしまい、サラッと指名手配されかけたという事件が起きたことに。
後から話を聞いたあたくしは、思わぬ借りができてしまったことに頭を抱えたわ。
※巨大化したチョコレートは冒険者達によって討伐され、砕けたチョコレートは王都の人々に配られました。
なお、その場に居合わせたとある二人組の冒険者がバレンタインについての説明をし……気になる異性に渡すのだと知った(けれど、生贄扱いとは知らない)セーゲルが嬉々として崩壊した冒険者ギルドの修理費を出したそうです。
*****
【フリージアside】
王族専用寮に戻ってきたグランは私を膝の上に乗せながら、叫んだわ。
「急に拉致られて冒険者ギルド行ったと思ったら、何アレ⁉︎キモかったんだけど⁉︎」
「キモいとか言っちゃ駄目よ‼︎巨大化したけれど、アレはマリカ様が作ったチョコレート(?)なんだから‼︎」
「チョコレートって動いたり喋ったりしたっけ……?」
グランは真顔になりながら首を傾げる。
……まぁ、うん。生命の神秘ってことにしておきましょう。うん。
彼は今だに唸り続ける。だけど、考えるだけ無駄という結論に至ったのか……話を変えるように私の方を振り向いたわ。
「んで?折角のバレンタインに出動することになった俺には何もないんですか?リジーさんからのチョコレートとか」
「あるわよ」
「だよね」
「という訳で、はい。ハッピーバレンタイン」
「やった〜」
サラッと亜空間からチョコレートを取り出した私は、素直にそれを渡す。
グランが嬉しそうに箱を開ければ、そこにあるのはドライフルーツをチョコレートコーティングしたモノ。
彼は嬉しそうに笑って、私の頬にキスをしたわ。
「美味そう。ありがとな」
「どう致しまして」
グランは箱を私に差し出し、私は溜息を零しながらチョコレートを取ってその口元に運ぶ。
彼はチョコレートだけじゃなくて、私の指先も一緒に口に入れてしまい……飴を舐めるように嬲ってくる。
指先に走った甘い痺れに身体が麻痺してしまいそうだったけれど、私は勢いよく指を引き抜いてそれを阻止したわ。
「大人な展開はナシよ‼︎ここ最近、オチが全部コレなんだから‼︎」
「えぇ?仕方なくない?」
「仕方なくないわよ‼︎もし大人な展開になったら、当分一緒に寝ないわ」
「なっ⁉︎」
「ちなみに一ヶ月」
「止めます。大人しくします」
「よろしい」
いつも流されたばかりだと思わないことね‼︎
私はグランの膝の上で満足げに笑う。
そうして……私達のバレンタインは過ぎていくのだった……。




