第53.5話 魂と《死神の使徒》の、最後の会話
割り込みです‼︎
アルフォンス目線‼︎
伏線回収忘れてたので‼︎
主人から受け賜った力で生み出した簡易世界……通称・《箱庭》と呼ばれる、小さく真っ白で、ただ椅子が二脚しかない世界の中。
向き合うように椅子に座った僕は、目の前に座った回収した魂に微笑みかけました。
「彼女は、随分と優しすぎる人でしたね」
『…………』
「貴女が彼女の身体を奪った理由を知っておきながら、何も言わなかったのだから」
僕の言葉に、魂は黙り込みます。
この魂は《魂の浄化》から逃げました。
それはつまり、生まれ変わりを拒否したということ。
どちらにせよ自我が消えるのには変わらないのに……少しでも時間を延ばそうと逃げたのです。
その過程で、この魂はリリィ嬢と呼ばれる少女の身体を奪いました。
まぁ。この魂がリリィ嬢の身体にいても、他人の身体ですから……それが5年後か10年後かは分かりませんが、いつかはこの魂は生まれ変わることができなくなっていたでしょうが。
それでも、魂がそのままで存在するよりも、他人のものであろうとも肉の器に入っていた方が摩耗は少ない。
ですが、この魂があの身体を奪ったのは……魂の摩耗を防ぐためだけではありませんでした。
それは…………分かりやすく言ってしまえば、逆恨みに近い。
自分は早々に死んでしまったとというのに……乙女ゲームのヒロイン、誰にでも愛される未来が待っているリリィ嬢が羨ましくて、妬ましくて、憎くて。
だから、この魂はリリィ嬢になろうとした。
「リリィ嬢は貴女と繋がっていた。だから、貴女の本当の目的を知っていたのに。なのに……貴女を守るために、口を閉ざした。僕はあんなにもお人好しすぎて、優しすぎる人を見たことがありません」
加えて……リリィ嬢は曲がりなりにも聖女です。
やろうと思えば、リリィ嬢は自身の身体からこの魂を追い出すこともできたはず。
なのに、彼女は追い出すこともせず。
他の人にこの魂が責められないようにと、何も言わなかった。
自分を逆恨みして身体を奪ったモノに10年も身体を貸して。
最後まで優しくするリリィ嬢はまさに聖女に相応しく……。
……僕としては、他者のために自分を差し出すことすら厭わぬリリィ嬢の優しさが恐ろしいと感じました。
…………まぁ、今は僕の感想はどうでもいいことですね。
リリィ嬢のことは、あの世界の方々がなんとかするでしょうし。
僕は僕の役目を果たさなければ。
「今から、僕らは貴女を《死神》様が管理する世界に連れて行き、今度こそ《魂の浄化》を受けさせます。既に魂の摩耗は始まっている。無事に生まれ変われるかどうかは……運命次第だと思ってください」
逃げなければ、確実に。
また同じ人間に生まれ変わることができたのに。
今の彼女では……何に生まれ変われるかが、分からない。
ちゃんと生まれ変わることへの、《魂の浄化》の説明も受けるのに。
それでも、自我が消えることを恐れる魂は今日もまた現れる。
そして、《死神の使徒》の手によって……連れ戻される。
きっと、逃げる魂にとっては……僕こそが〝死神〟に見えるでしょうね。
でも、これが僕の役目。
魂の回収が……僕の代償。
「では、《死神》様の元へ参りますね。貴女はこのまま、この世界でお待ちください」
僕はそう最終宣告を告げて、魂の前から姿を消しました。




