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第48話 お祭り騒ぎの夜に


リリィ目線‼︎


よろしくねっ(・∀・)ノ

 







『では、只今より……5泊6日の第Ⅱ大陸巡回サバイバル合宿の慰労会を開始します。流石に飲めや騒げやとは言えないけれどね。羽目を外しすぎずに盛り上がろう‼︎』





 生徒会長の挨拶と共に、皆が「乾杯」と声を上げる。

 私はぶどうジュースが入ったグラスを持ち上げて、小さく「乾杯」と言いました。



 いつもはダンスの授業で使うホール。

 でも、今日は立食式のパーティー会場のようになっていて。

 生徒達、先生達、冒険者さん達……合宿に参加した人達が話をしたり、ご飯を食べたりと凄く賑やかになっています。

 でも、私はなんとなくその輪の中に入る気になれなくて。

 壁の花となりながら、ちびちびとぶどうジュースを飲んでいました。


「ふぅ……」

「お疲れ様でしたわ、リリィさん」

「クレマチス様‼︎」


 優雅に歩いてくるのは同じパーティーメンバーだったクレマチス様。

 彼女はにっこりと笑って、手に持っていたグラスを前に出してくる。

 私は少し緊張しながら、カチンッとグラスを合わせました。


「話の輪に入らないんですの?」

「えっと……」


 …………私は言葉に詰まってしまいます。

 クレマチス様の目は、真っ直ぐで。

 あぁ……分かってしまいました。



 彼女は、私が()()()()ことに気づいているんですね。



「………こうなったのは、貴女の行動の所為ですわよ?」

「…………分かってます。自業自得、です」

「あら。ちゃんと自分がしたことを分かっていますのね。こんな風に他の者達から距離を置かれる理由も、理解していますか?」

「…………はい」


 考えなしにグランヒルト殿下に一目惚れして。

 そして、また考えなしに殿下の婚約者であるフリージア様にも付きまとった。


 私がしたのは、一方的な好意の押し付けだった。

 ううん、ただ純粋な好意を向けていただけならもっとマシだったかもしれない。

 私の行動は……犯罪だった。



 だって、フリージア様をストーキングしてしまっていたんだもの。



 好きという気持ちが暴走して。

 冷静になった今思うのは、なんであんなことをしちゃったのか……という後悔ばかり。

 本当、救いようがないです。

 他の人に距離を置かれるのは当然だった。

 だって、私の行動は普通じゃない。異常だもの。


「…………私……本当に、馬鹿ですよね。なんで、あんなことをしちゃったんだろ」


 ぽつりと溢れた言葉。

 楽しそうな会場の雰囲気に反して、私の心はとても暗くて。

 …………だけど、クレマチス様は私の後悔を聞いて、静かに答えてくださった。


「…………自分がした行いを反省できるのならば、いいと思いますわ」

「…………反省は、してます。だけど……私はお二人に近づけない。顔を合わせて、謝ることができない」

「…………何故?」

「恐くて」


 ぶるりっと震える身体。

 本当は、あの魔女っぽい女の人が降って来た時……グランヒルト様達の顔を見た瞬間、倒れるかと思ったぐらいだった。

 だって、私の頭の中にはあの悪夢が残っている。

 狂った夢が、恐怖が、幻痛が……今だに私の身体を苛むの。

 震える私に気づいたのか、クレマチス様が憐れむような視線を向けた。


「…………あぁ……もしかして。殿下に〝()()〟されてしまったの?」

「…………()、か()?」

「グランヒルト殿下はフリージア様を溺愛しておられますもの。あの方のためなら、なんでもしそうでしょう?それこそ……」


 トントン、と軽く首に手を当てるジェスチャーに、私は目を見開く。

 そして、殿下(あの人)ならば……そんなことだってするだろうなぁ……って納得してしまった。

 だって、私が恐怖を覚えるのはグランヒルト殿下とフリージア様だけ。

 それもそう。

 だって、あの悪夢で私を殺してきたのは……二人だけだもの。



 まるで、恐怖心で近づけなくなるように……仕組んだみたい。



「本能的な恐怖で、お二人に近づけなくなったのね。でも、今後……近づか(迷惑をかけ)ないのならば、殿下達は貴女に何かをしようとはしないはずよ」

「そうで、しょうか……」

「えぇ。だって、お忘れ?殿下達の力を。貴女ぐらいなら片手間ついでに()()()()()と思いません?」

「っっっ‼︎」


 そう言われて、私はあの模擬戦を思い出す。

 視認できないほどの速さ。

 崩壊していく訓練場。

 ドラゴンすら一撃で屠って。

 確かに……あのお二人なら、簡単に私を消せる。

 それどころか、大陸すら滅ぼせそう。


「だから、それをしてないってことは……貴女にされたこと、もう気にしてないってことじゃないかしら?」

「…………そう、でしょうか」

「えぇ。恐怖で謝れないのなら、それ以外の方法でお二人に報いる行動をなさいな」


 クレマチス様はそれだけ言い残すと、生徒会長に呼ばれて歩き去っていく。

 私はその後ろ姿を見送ってから……黙ってバルコニーに出た。




 暖かな風が吹いて、私の髪を揺らす。

 バルコニーの手すりに手をかけて、満点の星空を見上げる。

 グランヒルト殿下とフリージア様に迷惑をかけた。

 反省してるし、謝罪するべきだと分かってる。

 だけど、恐怖心から直接謝罪することができない。

 なら、謝罪の代わりになる贖罪を……。


「……………私に、何ができるのかな……」


 そうポツリと呟いた瞬間ーー。


 ふわりと肩に、暖かな温もりを感じた。



「春とはいえ、風邪をひくぞ」



「…………え?」


 肩にかけられたのは、魔王領の特産として有名な……美しい藍色の着物。

 勢いよく振り返れば、そこにいたのは……水色の髪のとても美しい青年。

 とても穏やかな瞳をこちらに向ける、その人は…………。



「魔王、陛下?」





 ーーーー《第Ⅱの魔王》スイレン陛下だった。








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