第47話 リジーさんだって、やれば出来る子
スローペース投稿でごめんね‼︎
楽しみに待っている方もいらっしゃると思いますが……不定期投稿に今後もお付き合いください‼︎
ではでは、よろしくねっ☆
私は生徒会室の扉をノックする。
そして、返事が返ってくる前に中へと入っていった。
「グランの代わりに、何かお手伝いすることはあるかしら?」
「リジー?」
中にいたのは驚いた顔をするお兄様だけ。
あら。他の人がいないわね?
「殿下は?」
「すやぁ〜」
「あぁ、成る程。働きすぎだったしね」
私が手を枕にするジェスチャーで、お兄様はグランが寝たことに気づく。
なんだかんだと言って、お兄様も付き合いが長いから……グランが急にぶっ倒れるように寝ることを知っているのよね。
お兄様は顎に手を添えて考え込む。
そして……苦笑しながら答えたわ。
「わたしは有事の際と細かい指示のために、生徒会室を離れられない。クレマチスが今夜の打ち上げの準備をしてくれてる。マルーシャが今回の報告書を提出してくれてるし……ノーチスは冒険者達関連を担当してるし。特にこれといったことはないかな?」
「まぁ、生徒会メンバーじゃないから、下手に手出ししちゃダメよねぇ……」
「流石にね。だから、リジーは殿下が目覚めるまだ側にいてあげたら?」
「それもいいけれど……ちなみにスイレンさんは?」
「………………あっ……」
お兄様は忘れてたと言わんばかりの顔で固まる。
まぁ、さっきグランの記憶を覗いてみたら……国王陛下達関連はグランの仕事になっていたものね。
グランが寝たなら、その担当が空欄になるのは当然だった。
「代わりに対応しても?」
言外に私が対応しますと告げてる気もするけれど……まぁ、生徒会メンバーは他のお仕事があるんだもの。
仕方ないわよね?
だけど、それを分かっていながら……お兄様は渋い顔をしたわ。
「………えっと……でも、生徒会メンバーじゃ……」
「だとしても、よ。流石に他国の王を放置は駄目だと思うわ。それに、生徒会メンバーとしてじゃなくて、未来の王太子妃として対応しますわ。何か言いたいことはありまして?」
背筋を伸ばして、貴族らしい笑顔を見せる。
…………お兄様は、私のそんな姿にとても驚いたように目を見開いて。
呆然としながら呟いた。
「…………リジーって……時々、貴族らしい振る舞いをするから驚くよね……」
「ちょっと待って頂戴。それ、どういう意味かしら?」
「いや……ほら。昔から破・天・荒・☆だったから……貴族らしい姿を見ると、ギャップに驚くというか」
失礼ね。私だって、令嬢っぽく振る舞えるわよ。
やれば出来る子だもの。
ちょっとムスッとなったけれど、私は「……はぁ……行ってきますわね〜」と告げて、生徒会室を後にする。
お兄様は苦笑しながら、「行ってらっしゃい」と声をかけるのだった……。
*****
「という訳で……放置してしまい、申し訳ありませんでしたわ」
「まぁ、グラン殿は働きすぎだったからな。仕方ないし、気にしていない」
寝る前のグランがスイレンさんを学園の応接室に案内していたおかげで、スイレンさんをどこかに放置ということにはなってなくてよかったわ。
飲み物は用意されてなかったけれど。
「マキハラ達は?」
「牧原一家は人数が多かったから、隣の部屋にいるわ。気づかなかったの?」
「グラン殿に転移でこの部屋に送られたからな。それに、防音やら気配遮断やら……色々かかってるだろう、この学園」
「あぁ、そうでしたわ。わ・す・れ・て・た・☆」
グランが公務作業をしたいからと……情報漏洩を防止するために、学園自体に色々と付与してたんだったわ。
「取り敢えず、夜の打ち上げ?慰労会?まではスイレンさんもこの部屋で寛いでくださいまし」
「あぁ。お言葉に甘えさせてもらおう」
「ちなみに、お花ばたーーごほんっ。リリィの件はいかがします?」
「…………あぁ……」
スイレンさんも今頃思い出したかのように溜息を零す。
マリカ様の衝撃が強すぎて忘れてたけれど……元々は《運命的な出会い(中略)押し付けてしまおう作戦》を決行するはずだったのよね。
「……ぶっちゃけ、運命的な出会いも何もなくなったわよね」
「………だよなぁ」
「…………仕方ないから、今夜の打ち上げで本人に声をかけてみれば?一国の王と聖女。簡単に会えるかもしれないけれど、理由がなければ会えないし。頻繁にも会えないでしょうから」
「…………それが一番、か」
「えぇ。最悪、既成事実でも作ってお持ち帰りしちゃったら?」
「ぶふっ⁉︎」
私の明け透けな一言にスイレンさんは噴き出す。
ゴホゴホッと咳き込みながら、滲んだ涙を勢いよく拭って……顔を真っ赤にしながら、ジト目で睨んできた。
「なんてことをっ……‼︎」
「……スイレンさん、私より歳上よね?初心な反応ね?」
「そちらは若い癖に明け透けすぎる‼︎」
「嫌だわ。グランに似てきちゃったかしら?」
…………昔は私も、もう少し慎みがあったと思うのだけど……。
グランに毒されてきちゃったかしらね?
「まぁ、とにかく。こちらとしては、リリィを引き取ってくれるなら万々歳だから、頑張って頂戴」
「えぇぇ……」
「惚れっぽいから少し優しくすれば、簡単に堕ちるわよ。多分」
「…………はぁ……」
疲労感の漂う、大きな溜息。
だけど、スイレンさんはもう開き直ったような悟り顔?をしながら……ゆっくりと頷いたわ。
「…………ほどほどに頑張ることにする」
「えぇ。後、マリカ様は魔王領にいることにしたらしいわ。一応、魔王屋敷の正門のところに転移させたのだけど……」
「あぁ。事前に聞いていたからな、そこで問題ない。後は向こうにいる部下達がなんとかしてくれるだろう」
「ありがとう。それじゃあ、時間になったら呼びに来るわ。じゃあね」
「あぁ」
その後、私は隣の部屋に向かい、マッキー達にも打ち上げまでこの部屋で待っててもらうことを告げ、生徒会室にいるお兄様に軽く挨拶をしてから、グランの元へと戻った。
ベッドの上ですやすやと眠るグラン。
完全に気が抜けてるからか……いつもより幼い寝顔を見て、私の口元が緩む。
「ふふっ……結構、この寝顔も好きなのよね」
ベッドサイドに座って、彼の頭を撫でる。
すると……ゆるりと彼の翡翠色の瞳が開いて……私を見つめ、何度か瞬きを繰り返した。
「………リジー……?」
…………倒れる前に寝かしたからか、起きるのが早いわね。
「起きるのが早すぎるわ。もっと寝てなさい」
そう言うと、グランはハッとした顔になる。
「っっ‼︎ヤバいっ、スイレンさんとかっ……」
「大丈夫よ。声をかけておいたから。それに、お兄様達も大丈夫。グランは打ち上げまで寝てなさい」
無理やり起き上がろうとした彼の頭をグイッと手で押して、ベッドから起き上がれないようにする。
グランはちょっと拗ねたような顔になりながら、頭を掻いた。
「…………はぁ……ごめん」
「何、謝ってるの。グランは働きすぎなんだから、謝る必要ないでしょう」
「でも……身体は元気なんだぞ?」
「チートだからね。でも、身体は元気でも、倒れるってことはどこか無理してるってことでしょう?だから、時には休むことも大事よ」
「…………分かった」
「良い子ね」
私はまた彼の頭を撫でる。
だけど、その手は直ぐにグランの手に取られて。
そのままベッドに引きずり込まれた。
「……グラン?」
私の肩に顔を当てて、強く私を抱き締めるグランは小さな声で呟いた。
「…………打ち上げまでいいから」
「…………」
「添い寝、してくれ」
「…………ふふっ、仕方ないわねぇ」
クスクスと笑いながら、子供みたいなことをお願いするグランの背中に手を回す。
そのまま、私達は夜になるまで二人でベッドに添い寝したわ。




