第33.5話 運営席って結構、関係ない話をしているもの
不定期ですが‼︎
次の話は、戦闘合宿に関係ないリジーとグランの昔話です。
まぁ、よろしくね‼︎
「まさに、一撃必殺だったわね」
グランの膝に座ったまま、スイレンさんから貰った和菓子(栗ようかん)を食べながら私は呟く。
なんか雰囲気的にリズベットさん達がお説教しそうな雰囲気だったから……中継を切ったけど。
まぁ、セーゲルも怒られれば、行動を改めてくれるでしょうね。
グランも「そうだなぁ」と呟きながら、緑茶を飲みこんだ。
「ハルトって、本当にリズベットさんのためならなんでもできるんだな。何回生まれ変わってもずっと一緒にいるくらい愛してるだなんて……流石だ」
「あら?グランも似たようなものじゃない?」
「ん?」
「私のためならなんでもする、でしょう?それに、生まれ変わっても会いに来てくれるでしょう?」
ニタリと笑いながら、彼の口元に栗ようかんを運ぶ。
グランは「当たり前だ」と答えながら、それを食べたわ。
「ハルトを真似する訳じゃないが……愛するリジーのためなら、なんだってしてやるさ。生まれ変わっても、会いに行く」
そう言って優しく笑うグランに、私はちょっと……ううん、かなり嬉しくなる。
自分のためにそこまで言ってくれる人がいるのは、幸せだもの。
嬉しくなるのも仕方ないわ。
そんな風に二人の世界を作りかけていたら……側で一緒にお茶をしていたスイレンさん達が顔を手で覆って呻いた。
「あまぁーい、あまぁーい」
「……………胸焼けする」
「あぅあぅあぅ」
……………皆の言語がおかしくなってるわ。
特に、アウラ様の言語が赤ちゃんになってるけど……大丈夫かしら?
「………ごほんっ、話を変えるぞ」
グランはワザとらしく咳払いをして、真剣な顔になる。
私も真剣な顔になって、見つめ返した。
「明日はどうする?今日見てて思ったが、二人だけじゃ負担が大きくないか?」
グランにそう言われて、私も納得する。
私はここで皆を見てなきゃいけないし、グランも何か起きた際いち早く行動するためには、ここで見てた方がいいのよね。
それに、一人でこの人数を監視するのはとても疲れるし……グランに手伝ってもらえないと、多分、手を抜いちゃいそうなんだもの。
でも、リズベットさん達だけじゃ6箇所も回るの大変だし………。
「………奴の出動の頃合いかしら?」
「……………とうとう、奴の出番か」
グランは何故か無駄に威厳溢れる声で呟く。
私は勢いよく噴き出した。
「ちょ、止めて(笑)。そんな最終兵器出すような雰囲気出さないでよ。ウケるわ」
「いやいやいや、ある意味最終兵器だろ?忘れたのか?奴はハーレム男なんだぞ?」
「…………………ハッ⁉︎」
私は口元に手を添えて、ワザとらしく驚く。
いや、まぁ確かに驚いているのだけどね?
ちょっとふざけたノリにしてみちゃっただけなのよ、うん。
「助けられた女子がハーレムメンバー……略してハレメンに入らないよう細心の注意が必要だよな」
「そうね。貴族令嬢が隣の大陸のハレメンになるとか……アンチハーレム派としてはちょっと」
「それな。なんか対策を考えるか」
「取り敢えず、お手紙でも出しましょうか。明日、拉致するわって」
「そういや出し忘れてたな」
互いに「「あはははっ」」と笑う私達。
それを見たスイレンさんは眉間に皺を寄せて……スイハ達はキョトンとしたわ。
「………彼はいつもそんな唐突に拉致されるのか?」
そう言えば、スイレンさんは奴に会ったことあるわね。
「ここ最近はちゃんと手紙出してから拉致ってるわよ。沢山、奥さんいるし。沢山、子供いるし」
「………………理不尽に振り回される彼には同情するが、そこはやっぱり受け入れられないな……」
スイレンさんの一族は、一夫一妻制の愛妻家が多い一族。
私達もハーレム自体を否定する気は無いけど、苦手なものは苦手だわ。
グランは少し苦笑しながら、質問する。
「スイレンさん、便箋か適当な紙ないか?広告の裏でもいいんだけど」
グラン、この世界……いや、それは言い過ぎね。
でも、魔王城(屋敷)に広告の裏はないと思うわ。
逆にあったら驚きだと思うの。
というか、広告の裏で充分だという扱い(笑)
「広告の裏ぁ?あるぞ」
「「あるのっっっ⁉︎」」
スイハがどこかへ行って、一枚の紙を持ってきてくれる。
「ほら」
広告を受け取るとそこに書いてあったのは、『グラリジ人形、再入荷‼︎』の大文字と私達をデフォルメ化させたような人形が……。
「「いや、なんでっっっ⁉︎」」
思わず叫ぶ私とグラン。
ちょっと待ちなさい‼︎デフォルメされてるから、分からない人は分からないでしょうけど……分かる人には分かるわよ、このキャラ‼︎
いつから、こんなの売ってたのかしら⁉︎
というか、再入荷ってことは一度目が売り切れたってこと⁉︎
どういうこと⁉︎
「いやぁ、国に帰ったら驚いたよな。お前らの人形、売ってんだもん。それもグラリジ人形が魔王領のブームになってるし。予約待ちも多いみたいだぞ?」
「可愛らしい人形ですわよね。カップルが互いに片割れを持つとラブラブになるって噂らしいですわよ。お二人も仲が良いですし、ご利益ありそうですわ」
スイハとアウラ様の言葉に、私達は絶句する。
………はっきりと言いましょう。
私達にそんなご利益ないわ。
絶対ないわ。
一体、何かどうしてこうなったのかしら……?
「リジーさん、リジーさん」
「なんですか、グランさん」
「この商会って俺らが護衛した……」
「ん?」
グランに言われて見ると、そこに書いてあった商会の名前に私はハッとする。
「あぁぁぁぁぁぁぁあ……‼︎この商会っ……あの女性がいたっ……‼︎」
思わず叫んでしまう私。
スイレンさん達をギョッとさせちゃったけど……この女性がいる商会ならこれ、売りそうだわぁ……。
「なんだ?どうしたんだ?」
スイハは心配……というよりは興味津々と言った感じで聞いてくる。
あぁ、話が聞きたい感じなのね?
もう話すの決定っていう空気なのね?
「グラン、パス。私は監視しなきゃいけないから」
「えっ⁉︎俺が話すのか⁉︎」
「お仕事で忙しいのよ、私」
まぁ、監視すると言っても見てるだけだし……大事に大事を重ねて、何かあったら警告音が鳴るようにしているけどね。
単にあの人の話は、精神をゴリゴリ削るのよ。
後、純粋に恥ずかしい。
「………んじゃあ、話すか。合宿と全然関係ない……昔話を」




