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第33話 リズベットお姉さん、ハルトお兄さんの貫禄


リズベット目線‼︎

久しぶりの更新ですみません‼︎不定期だろうけど、しばらくはこれに集中するかも。


 






 ディングス王国の魔物の森。



 そこで、セーゲル君というSランク冒険者と、今回のターゲットである聖女ちゃんがいるパーティーの前に立つ私達。


 彼は唐突に現れた私達に警戒を示した。

 うーん、流石Sランク。

 威圧がピリピリするねぇ〜。


「お前達は……」

「乗っ取り犯のリズベットと」

「ハルトだ。よろしくな」


 私達の挨拶にセーゲル君は無言で剣を構える。

 むー?挨拶は大事なんだよー?

 まぁ、いいけどね‼︎


「さて。俺らが来たのは、理由がある。これはあくまでも生徒の戦闘合宿だ。お前は出しゃばり過ぎだよ」

「……………冒険者ギルドでは、聖女に一つも傷を負わせるなというオーダーだった。ならば、戦闘自体させないのが得策だろう」


 ほうほう、なるほどね。

 冒険者ギルド側としては、聖女が怪我を負った際、冒険者側の責任にさせられるかもしれないとか思っちゃったのかな?

 でも、だよ。


「それじゃあ本末転倒でしょう?怪我をするのが前提なんだから、守っちゃ意味ないと思うよ?」

「…………オーダー通りに動くだけだ。邪魔をするなら……斬る」

「「‼︎」」


 …………へぇ……どうやら頭が硬いタイプらしいね。

 私達はちゃーんと言葉で注意したよ?

 だけど、それでも私達に剣を向けるというなら。



 物理的に応えることになっちゃうよ?



「ハル君、ちょっと痛み目に遭わせーーー」

『『ちょーーーっと待った‼︎』』


 ふぇ?


 ブオンッと電子音をたてながら、空中に電子スクリーンらしいものが展開される。

 そこに映っているのは……私達で。

 …………あれ?これは聞いてないよ?



『とーとつに始まる‼︎ガルディア魔法学園戦闘合宿の〜』

『ゲリラ中継コーナーのお時間です。いぇーい、ドンドン♪ぱふぱふ♪』



 …………電子スクリーンから唐突に響いたフリージアちゃんと、グランヒルト君の声に私達は転けそうになる。

 いや、なんかちょっとね?

 これから戦闘行くぜ‼︎って真剣ムード風な空気が流れてたのに、一気に脱力したからね⁉︎

 というか、あれはTVですか⁉︎

 ニュース番組とかである中継映像とスタジオのアナウンサーみたいな感じですか⁉︎


『はい‼︎いきなりなんだと思ってる方も多いと思いますが……今回のこの戦闘合宿は各国の国王陛下にご連絡してあるってのはお話ししましたよね?まぁ、国を跨いでるから当たり前ですよね』

『………一応、許可を頂くために合宿内容の詳しいプレゼンをしたら、面白いから中継はできないのかとか言ってくれちゃいまして』

『まぁ、我が国の合宿ではこんなことしてるよ〜とか。エンターテイメントになりそうな面白いシーンがあったら、国王陛下方にゲリラ中継することになりまして。とーとつに中継が始まることになったという訳です‼︎』

『ちなみに貴族諸君の行動は全て(・・)録画してある。後ほど反省会で使用する予定だから、あまり恥ずかしいところを見せるなよ』


 ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁあっっっ‼︎

 遠くから生徒達らしき悲鳴が響く。

 あぁ……羞恥シーンを公開されるとか、地獄だよねぇ……。

 ……………というか、フリージアちゃん達、そんなことまでしてたんだ。

 確かに監視してるとは言ってたけど、録画まで……流石チートさんだね。


『国王方達も中々に毒されてきてるよな。普通なら面白そうだからって理由でゲリラ中継しろとか言わねぇだろ。昔から俺らの破・天・荒☆に振り回されていることだけはあるな。慣れがある』

『………まぁ、とにかく‼︎現在、各国の国王&合宿会場に中継で映像をお送りしております‼︎実況は冒険者ギルド所属の《リインカーネイション》が担当させて頂きます‼︎』


 ……………………フリージアちゃん達、冒険者でもあったんだね。

 というか、王太子と公爵令嬢が冒険者してていいの?

 大丈夫なの?

 王侯貴族って結構、面倒臭いよね?

 身の安全的な話とか、威厳的な話とか。

 お姉さん、少し心配だよ?


『あ。説明の間、待ってくれててありがとうね、リズベットさん、ハルトさん。現在の中継シーンはSランク冒険者《断絶》のセーゲルと、第Ⅶ大陸から来たお二人との戦闘開始直前の映像よ』

『んじゃあ、好きなだけ暴れまくってくれ。ちなみに、ノースプラッタ、ノーグロテスクで頼むぞ。グロ耐性が無い人がいるかもなんで』

「………地味に注文が多いなぁ……」


 ハル君は苦笑しながら呟く。

 うん、私も注文が多いと思っちゃった。

 でも、楽しそうだからいいんじゃないかな?


「じゃあ、ハル君‼︎」


 私はにっこりと笑ってから、真剣な眼差しを向ける。

 そして……私の伴侶に告げた。



「愛しい我が伴侶。《断絶》のセーゲルを黙らせなさい」



 ハル君が大きく目を見開き、蕩けるような笑みを浮かべる。

 そして、私の手の甲にキスをした。


「勿論だ、我が女神。愛しい伴侶。君が望むなら俺は世界さえ手に入れてやる」

「あ、世界はいらないかなぁ」

「あははっ、知ってる」


 そうハル君が笑った瞬間ーーーー。

 彼は、一瞬で私の前から消えていた。


「ぐふっっっ⁉︎」



 ついでに、Sランク冒険者君が空を飛んでいた。



『えっ⁉︎』


 背後にいた聖女ちゃん達はその光景に絶句する。

 そりゃそうだよねぇ。

 冒険者君は重装備の大剣持ち。

 普通なら空を飛ぶなんて、ドラゴン相手にしないとならないはず。

 でもね、今回は相手が悪かったよ。



 だって……《聖母()》のためならどんな願いを叶えられる、《聖母の伴侶(ハル君)》が相手だもの。



『お、おぉっとーーー⁉︎重装備のセーゲル選手、空へとフライアウェーイ‼︎』


 プロレスか(笑)。


『というか、ハルトの動きは尋常じゃないくらい早かったな』

『グランくらい?』

『だな。でも、ハルトのはリズベットさんのお願いがなきゃ出せないだろうから……どうなんだろ?』


 ねぇねぇ、名前を出したら身バレしない?

 というか、グランヒルト君、今のハル君レベルの速さが出せるんだね……お姉さん驚きだよ。



 冒険者君は地面をゴロゴロ転がって、お腹を押さえて蹲る。

 あらら、一撃で終わりかな?


「がはっ、一体、何をっ……」


 涙目になりながら、質問する冒険者君。

 ハル君はそんな彼に優しく笑いながら……グッと拳を握り締めた。



「殴った」



『………………………』


 シンッ……と静まるその場。

 だけど、ハル君は拳を握り、空に突き上げた。


「下手に武器使うよりも人間には拳という武器があるんだから、拳を使った方が強いんだよ‼︎多分‼︎」

『考え方が脳筋だぁぁぁぁ‼︎多分とか言ってるしぃぃぃぃ‼︎』

『アイツ、リジーと変わらねぇじゃん。良い勝負なんじゃないか?』

『ちょっと‼︎女性に対して脳筋って失礼じゃない⁉︎しばらくイチャイチャしないわよ⁉︎』

『それは止めて‼︎俺の生き甲斐だから‼︎』


 フリージアちゃん達の会話に再び転けそうになる。

 なんというか、脱力させるのがお得意だね⁉︎


「なぁ、お前らの会話、一気に脱力するんだけど‼︎というか、皆に聞かれてるけど良いの⁉︎」

『あぁ、別に良いのよ。どうせ今回、バラそうとしてるし』

『そうそう。いつまでも認識阻害魔法使ってるの怠いし。ほら、俺ら庶民派だから』

「武闘派の間違いじゃないかな?」

『『リズベットさんに座布団一枚‼︎』』


 やった〜、座布団一枚獲得〜‼︎

 きっと、この二人のことは深く考えちゃいけない系なんだね。

 もうノリと勢いでいく系なんだね。

 結構、私達も同じ感じだから深く考えないようにしよう。

 うん、別に面倒になった訳じゃないよ‼︎


『じゃあ、ひとまず戦闘は終わったみたいだしゲリラ中継は終えるわね。皆、頑張って頂戴‼︎』


 プツンっと電源が切れるような音と共にスクリーンが消える。

 流石、フリージアちゃん。

 これから私がお説教するって分かったんだね?



「という訳で、全員正座しなさい‼︎お姉さんからお説教です‼︎」



 蹲ってて正座どころじゃなさそうな冒険者君だけじゃなくて、聖女ちゃん達も呼んで一列に並べる。

 私はハル君が出してくれた座布団の上に正座して、みんなの顔を見た。


「あのね?さっきも言ったけど、これは生徒達の戦闘訓練なの。怪我前提なの。だから、ギルドでオーダーされたからって全部、補佐役の冒険者君がやっちゃダメなのよ?」

「………だが……」

「ねぇ。このクエストの依頼主は学園だよね。ギルドじゃないよね?依頼内容はあくまでも、生徒達の補佐。付き添いなんだよ?依頼主の意向に添えないなら冒険者辞めれば?」

「うぐっっ⁉︎」


 冒険者君は今更ながらにその事実に気づいたのか、そのまま顔面蒼白でパタリと倒れる。

 聖女ちゃん達が大慌てだけど、多分、冒険者として間違ったことをしてたという後悔と……鳩尾を殴られたから気持ち悪くなってるだけだと思う。

 治してあげるけど、もう少し反省させておこうっと。


「で、次は君達ね。まぁ……冒険者君の、独断プレーが目立ってたけど……それでも、君達は冒険者君に楯突いてでも、その暴走を止めた方が良かったよ」

「ですが……」


 この中でリーダーっぽい男の子が困ったような顔をする。

 まぁ、口を出す暇がなかったんだろうけど。

 でも……。


「じゃあ、君達はパーティー内の一人の暴走の所為で危険が及ぶかもしれないのを甘んじるの?」

「……………え?」

「魔物は派手に動いているモノに集まりやすいんだよ。冒険者君は強いから問題なかったかもしれないけど……彼、結構派手に動いてたよね?木を巻き込んで倒してたりもしてたし。場所によっては沢山、魔物に囲まれてたかもね」

「一人で対処できる数にも限りがあるからな。戦争時に、敵も味方も分からなくなって……両方まとめて殺すという話も少なくない。広範囲の攻撃魔法を使っていたら……どうなっていたか」


 私の後ろに立っていたハル君の補足説明に私は頷く。

 あぁ、確かに。

 前世の中に戦争で悲惨な思いをした時もあったなぁ……アレは酷かったよ。

 敵さんの魔法使いが、味方もまとめて殺したんだもん。

 アレほど憤ったのは初めてだったかもしれない。



 私達の話を聞いた彼らは顔面蒼白になって、ぶるぶると震え出す。

 魔物だけじゃなくて、冒険者君も結構危険だって分かったかな?

 まぁ……魔物の集まる習性は、あくまでも私達のいる第Ⅶ大陸の話だから、この大陸でもそうかは分からないけど。


「こういう対処も合宿で覚えることだと思うよ?」

『え?』


 私の言葉に意味が変わらないのか、彼らは首を傾げて困惑する。

 すると、ハル君が呆れたように溜息を吐いた。


「戦闘合宿なんて言ってるが、グランヒルト達は生存訓練まで想定してると思うぞ。じゃなきゃ、サバイバル合宿なんてしないだろ」

『生存訓練?』

「戦闘合宿って銘打ってる所為で、魔物と戦う奴が多いが……別に戦わなくても良いじゃないか。魔物と戦わないことも一つの戦闘だ。勝てない敵がいて挑むのと、逃げて情報を持ち帰り……仲間に協力してもらう、自分より強い奴に託す。どちらが勝ちだと思う?」

「試合に負けて、勝負に勝つってヤツだよ」


 そう言われて目から鱗だったのか、彼らは目を見開いて固まる。


「生きていれば明日に繋がる。だけど、そのためには生きる知識、経験が必要だ。グランヒルト達がこんなことを始めたのは、何かあった際……魔物の大氾濫(スタンピード)や戦争が起きた時、少しでも生き残れる可能性を高めるためなんじゃないか?」

「だよねぇ。それに、君らがつけてるその編み紐、防御魔法やら装備者が瀕死になりかけたら体力を回復させる効果とか、緊急時に避難させる効果とか過保護かってくらいについてるもの。それに、死んじゃったとしてもフリージアちゃんなら生き返らせられるし」

「守られてるからって油断するのも駄目だが……安全な状態で経験を積めるようにと、二人がみんなのことを思ってこの合宿を始めたということを理解した方が良いと思うぞ」


 まぁ、そこまで深くは考えてないかもだけど。

 魔物の大氾濫(スタンピード)とか起きちゃった時、へっぽこ貴族達が100パーセント死にそうだから……ちょっとでも慣れさせるために始めたとは言ってたし、強ち間違いじゃないはず。

 まぁ、良い風に言いすぎた気もするけど……フリージアちゃん達の株を上げてあげたってことで。


「んじゃあ、お姉さん達はもう行くね‼︎バイバイ‼︎」

「頑張れよ、若人」


 去る時にしれっと冒険者君に回復魔法をかけて、私達は去る。






 ちょっといい話とかすると照れちゃうからって、逃げた訳じゃないよ‼︎









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