第30話 悪巧みですか?いいえ、押し付けです
今回はちょっとR-15かな?
不定期更新作品を、また始めちゃいました。
ハイファンタジーの男主人公の作品を書いてみたかったんです……ノリは若干、リジーに似てると後から気づきましたが。
なので、ちょっとこれの更新が遅かったらそっちのシナリオ考えてたりするかもしれません。許してください。
よろしくね‼︎
スイレンさんの驚き発言、「儂、スイハに魔王譲るからもう魔王じゃなくなるし」。
私達はギョッとしながら彼の方を見たわ。
「え?魔王辞めるの?」
「あぁ。そして、初恋の人を探すのだ‼︎」
「「………………え?」」
右拳を挙げるスイレンさんはなんか……超浮かれてるわ。
…………というか……ちょっと……小躍りもしてるんだけど?
「…………初恋の人って?」
グランの質問に、スイレンさんはウキウキるんるん♪で答える。
曰く。
十年前に出会った一目惚れした少女を探したいらしい。
スイレンさんの一族は一夫一妻制で妻を溺愛するから……初恋の人を十年以上に想っていても普通なんだとか。
そして、その女の子に懸想していたから……周りのお節介(スイレンさんを結婚させよう運動)を回避するのが大変だったらしいわ。
イッツ・アバウト。
「……………そいつ、種族は?」
「………さぁ?」
「……………年齢は?」
「肉体年齢は六、七歳ぐらいだったか?今は何歳ぐらいだろうなぁ……」
グランはその質問の答えを聞いて、顔をどんどん険しいものに変えていく。
………そりゃそうよ……種族によっては十年で身体的に変わってたり、変わってなかったりするもの。
なんて、的を射ない答えなのかしら……。
というか………。
スイレンさんって、何歳なのかしら……?
スイハ(見た目私達と同い年くらい)の甥っ子がいるってことはそれなりの年齢で……。
十年前、相手が六、七歳ってことはロリコン……じゃ………。
「ロリコン……」
「ちょっと、グラン‼︎思っても言っちゃ駄目よ‼︎」
「それ、お前も思ってるって暴露してるからな?」
思わず口を噤むけど、スイレンさんはキョトンと首を傾げていて。
ロリコンが伝わってないみたいだわ……よかった。
「…………リジー……このジジイの記憶、探れるか……?」
グランにコソッと聞かれて私は目をを見開く。
「あら?協力してあげるの?」
「おいおい、忘れたのか?」
「え?」
グランは呆れたような顔で笑う。
そして、肩を竦めながら答えた。
「ここは乙女ゲームの世界(または類似世界)です」
「はい」
「こういう時、テンプレだと初恋の女の子=………」
「ハッ‼︎」
私はワザとらしく口元に手を添えて驚いたフリをする。
こういう時のテンプレ。
それは………。
魔王の初恋の人=ヒロインの可能性大‼︎
「魔王にお花畑を押し付けられるわね⁉︎」
「おーいえす‼︎」
グランとハイタッチして、互いにニヤリと笑う。
「ここは乙女ゲームの世界〜」あたりから普通の声のサイズになってたからか……同じ転生者組のリズベットさんと、ハルトさんは事情が読めたみたいだったわ。
「あぁ〜……乙女ゲーム転生系テンプレなんだねぇ。ということは、フリージアちゃんが悪役令嬢で、グランヒルト君が攻略対象かな?」
「うわぁ……面倒そう。俺とリズは乙女ゲーム関連転生しなくて良かったなぁ〜。なんか、乙女ゲーム系ってエッチなのはNGっぽそうだし」
「いやいやいや。ここ最近の乙女ゲームは直接描写はないけど、それとなく匂わせるシナリオもあるわよ?」
私の答えにリズベットさん達は「「ジェネレーションギャップ‼︎」」と叫び、二人で「転生時期的な問題かな?」とか「歳かなぁ……」とか真剣な顔で悩み始める。
……そんなに気にすることでもないと思うけど……。
「ちなみに、グランヒルト様って王子なんだったよな?思春期真っ只中なのに、ムラムラとか大丈夫なの?王子だと婚約中に下手なことできないでしょ?」
「「ぶふっ⁉︎」」
思わず噴き出す私達。
え?ハルトさん?オブラートに包むって言葉、ご存知ないの?
「何ぶっちゃけてんだ、テメェ……」
「え?だからーーー」
「ほぼ初対面なのに質問がぶっ込み過ぎなんだよ‼︎」
「えー。だって同じ転生者組じゃん。多少、ぶっ飛んでても……」
「問題だわ‼︎」
…………………頭痛くなってきた……。
リズベットさんは申し訳なさそうに、苦笑する。
「ごめんねぇ。ハル君って歩く18禁みたいなものだから……」
「貴女の旦那様ですよね?そんな扱いなんですか?(思わず敬語)」
「え?だって、エッチなのには変わりないもの」
…………ドヤ顔で言うことではないと思うわ、リズベットさん……。
ちょっと話が脱線し始めた(というか、私の一言が原因ね。ちょっと気をつけるわ……)けど、頭を切り替えてスイレンさんの記憶を魔法で探る。
スイレンさんはギョッとするけど、それを無視して……私は、目的の記憶を見つけたわ。
「あ、あったわよ。映像化するわ」
「おう」
私の声で言い争いを止めるあたり、じゃれあいだったのかしら?
まぁ……とにかく。
スイレンさんの過去の記憶を、何もない空間に映画のように投影した。
満開の花畑。
そこに映る六、七歳ぐらいの女の子。
薄緑の髪に柔らかな桃色の瞳……。
女の子はにぱーっと笑って、こちらに駆け寄ってくる。
『リリィ、大人になったら‼︎おにーちゃんのお嫁さんになる‼︎』
「はい、ビンゴ〜」
「わーい、ぱちぱちぱち。お花畑をどう処ぶーーー対処するかの問題解決だわ〜」
私達は拍手して、スイレンさんに「おめでとう」を繰り返す。
スイレンさんは意味が分からなそうに、困惑していたわ。
「な、何が……」
「お前の初恋の女の子は、我が国のお花畑聖女リリィです。つまり、直ぐに再会できます」
「何っっ⁉︎」
「でも、ただ会うだけじゃあ駄目そうよね……惚れっぽいから、運命的なシーンにすれば確実に落ちるはずだわ」
グランは再び呆れたように肩を竦め、にっこりと笑う。
「リジーさん、リジーさん。あと数日で学園で何がありますか?」
「………え?学園で?何って…………あ」
グランはニヤリと笑う。
その笑顔は……とんでもなく腹黒くて、とんでもなく魔王チックな笑みだったわ。
「戦闘合宿……これを使わない手はないだろう?」
あぁ……そういうことね?
政治的なことはあまり得意じゃないけれど、グランとはずっと一緒にいたんだもの。
何をしようとしてるか……私、分かっちゃったわ。
「うふふふっ……うふふふふふふっ。そう……そうよねぇ。戦闘合宿は強敵と会った時を想定してるんだもの。私達が参加したら、パワーバランスが崩れると思ってたのよ」
「流石リジー。俺が考えてることが分かったか?」
「えぇ、勿論」
グランの耳元で、彼が考えていたであろう内容を囁く。
グランは「正解」と言って、腹黒そうな笑みを更に深めた。
「ついでにハルト達にも参加してもらおう」
「え?何々?面白い感じ?面白いなら、私も混ぜて‼︎」
「リズが参加するなら俺も参加する」
リズベットさん達にも内容を耳打ちする。
………すると……二人も悪そうな笑みを浮かべたわ。
「とっても面白そうだねぇ?一枚、噛ませて?」
「これは参加しない訳にはいかないな。面白すぎる」
四人で顔を合わせて「ふふふふふふふっ」と笑い合う。
当事者であるスイレンさんだけが話についていけず、私達の笑みにビクッと怯えていたけど……我慢して頂戴。
これも全て、貴方のためなんだから。
「えー……では。ただいまより、《運命的な出会いを人工的に演出して、ヒロインをスイレンさんに押し付けてしまおう作戦》を開始しまーす(笑)」
「「「おー‼︎」」」
グランの掛け声で拳を挙げる私達。
当事者のスイレンさんは、「えっ⁉︎えぇっ⁉︎」と驚いてたから完全に置いてけぼりだったけど……こうして、私達の作戦は開始されたわ。




