表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/108

第29.5話 王女は愛しい人に手を握られながら、眠りにつく


アウラ目線‼︎短め‼︎


 






 《第Ⅱの魔王》様のいた建物から違う建物にお姫様抱っこで来たわたくしは、靴を脱がされてどこかへ連れて行かれる。



 ………スイハの国は、わたくしの国とは違う文化のようで、とても興味深いですわ。

 キョロキョロと周りを見ていたら……横にスライドさせる扉?のようなものを開け、不思議な部屋の隅に降ろされた。

 スイハはまた扉のようなモノを開け、布が詰まっていた棚からそれを下ろしながら……わたくしに声をかけてきたわ。


「今、布団を引くから待ってろ」

「布団?」

「あぁ。この領地では、敷布団を畳の上に敷いて寝るんだ」

「…………シキブトン……タタミ……」

「アウラにも色々と教えていくから、ゆっくり学んでいこう」


 スイハが布団を引き終えると、わたくしはそこに寝かされる。

 ベッドほどふわふわではないけれど、これはこれで居心地がいいわ。


「…………お日様と草の匂いがしますわ」

「誰か天日干ししてくれたんだろ。草の匂いはこの畳だな。植物から作られてるから」

「まぁ……」


 知らないことを知るのは、とても面白い。

 ここに転移(?)をしてから、わたくしの目に映るのは興味深いものばかりで。

 さっきまで絶望の淵にいたと思っていたのに……。

 わたくしは、今、違う大陸にいる。

 大好きな人の下にいる。



 ………………こんなに幸せでいいのかしら?



「………………夢じゃないわよね……」

「夢でたまるかよ」

「…………スイハ……」


 枕元に座ったスイハは、とても優しい顔で微笑んでいて。

 ぎゅうっと、わたくしの手を握り締めてくれた。


「夢なんかじゃない。アウラはもう自由なんだ。これから、王女じゃなくて一人の女の子として好きなことができるさ」

「好きな、こと……」

「リジー達と遊んだっていい。旅をしたっていい。この大陸だけでも色んな特徴がある国が揃ってるから楽しいだろうしな。他の大陸に行って、美しい海の中の都や幻想的な森を見に行ったりだってできるんだ」


 スイハから聞いていた旅の話。

 わたくしにとっては、一つの物語のようなものだったけれど……今のわたくしならば、そこへ旅立つこともできる。


「楽しいことがたくさん待ってる。一緒に色々と見て、学んで、知っていこう」

「…………えぇ、そうね。そうよね」


 声が震えてしまう。

 視界が、涙で滲んでしまう。

 ずっと、あの国に囚われるのだと思っていた。

 だけど、今のわたくしは自由になった。

 好きな人の側で、笑ってられる。

 ……………嬉しくて、泣いてしまいそうだわ。


「お休み、アウラ。元気になったら、色々と教えてやるからさ」

「えぇ……えぇ。沢山、教えて頂戴、スイハ。お休みなさい」




 あぁ……こんな幸せな気持ちで眠るのは、初めてかもしれない。




 わたくしは彼の手を強く握り締めながら……目を閉じたわ。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ