第28話 キャラの大渋滞
な、な、なんと‼︎
今回は同じシリーズのあの人達が登場‼︎
まぁ、分かる方もいるかもしれませんが……タイトルの通り、クラッシュクラッシュしてるよ‼︎
ギャグだよ‼︎
よろしくね‼︎
レッツ恐慌。
まさにそんな感じになっちゃってるわね。
「あー……もしかしなくても、魔王と仲が悪い大陸か」
グランの言葉に思い出す。
確か、大陸ごとに仲よかったり悪かったり、戦ってたりするんだったかしら?
「……この大陸の魔王ってどんな感じなの?」
スイハがアウラ様に聞いてくれる。
彼女はちょっと言いにくそうに答えてくれた。
「えっと……人々の恐怖の象徴。人類の敵。
第Ⅶ大陸の人々は、そう教え込まれていますわ」
「………つまり……」
「第Ⅱ大陸であろうと、魔王関係者を牢屋に放り込んでいたとか……信じたくない事実だと思いますわ」
アウラ王女の言葉に私達は納得してしまったわ。
でも、凄く不思議なのよねぇ。
「…………驚き過ぎじゃないか?たかが魔王だろ?」
「………たかが魔王、ですの……?その……第Ⅶの魔王と他の種族は戦争しますので……魔王は恐怖の対象なんですわ」
「………物理的に黙らせればいいのに」
「いや、それができるのはお前らくらいだって‼︎………って、アウラが驚いてるなぁ」
ポカンっとしているアウラ王女に、スイハがチュッとキスをする。
王女は顔を真っ赤にしつつも、なんか色々と知って狼狽しているみたいで。
うわぁ〜甘い〜。
あぁ、そうだわ。
「安心なさって?第Ⅱ大陸の魔王領と第Ⅱ大陸の各国は不侵略条約を結んでいて。それどころか人も、魔族も皆が仲良く暮らしているわ」
私の言葉にアウラ王女は目を見開き、驚く。
ついでにスイハも驚いてたわ。
「え?そうなの?」
「おう。俺とリジーが殴り込みに行ったからな」
「………………………はい?」
「カチコミとも言うわね」
「…………ふぅ」
スイハは大きな息を吐く。
そして………叫んだわ。
「お前ら予想以上に無鉄砲だなっっっ⁉︎」
「褒めるなって」
「褒めてねぇよ‼︎いや、親指でグッ‼︎じゃねぇよ‼︎馬鹿か‼︎確かに、大陸ごとに魔王と人類の関係性は違うと聞くけど、少なくともおれがいた頃は第Ⅱ大陸内における関係は友好的じゃなかったのに。お前ら、どんだけだよ‼︎」
………スイハもツッコミ体質だったのねぇ。
「問題があると言えば、ちょっと頭が沸いてる聖女のことだけど……それに関しては私達が処ぶーーー対処するわ」
「なぁ、今‼︎処分って言いかけたよな⁉︎」
「でも、あの女が何かしらしたら困るわね…………」
「そこはスイハ達のイチャ甘ラブラブに期待だろ。それこそ直ぐに子供を産めば、あの聖女も手ェ出せないだろうし」
「「なっ⁉︎」」
明け透けな言葉におれ達は顔が真っ赤になる。
グランとリジーはニマニマしながら、笑った。
「なるほど。アウラ様もスイハも美しい顔立ちしてらっしゃるから、さぞかし可愛い子が産まれるでしょうね‼︎」
「……子供が欲しいなら、直ぐに妊娠させてやるけど?」
「グラン?TPOを選びましょうか?」
「すみませんでした、焦がさないで。感電させないで。地味に痛いんだよ、リジーの鳴神」
「………ドラゴンぐらいなら殺せるのを地味に痛い程度で済むんだから、相当よねぇ……」
私はグランの耐久力に感心しながら、話を続けたわ。
「最終的にはスイレンさんに聖女けしかけて、既成事実を作らせればいいとして……」
「叔父上の扱い雑っっっ‼︎」
「取り敢えず、帰るか……」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっっっ‼︎」
驚いたような声が響き、私達はギョッとする。
何事かと思えば、ナナリーが私とグランを指差してプルプルと震えていて。
そして、更に叫んだ。
「貴女‼︎悪役令嬢のフリージア・ドルッケン⁉︎」
うわー。
この子も転生者のパターンだったのねぇ……。
「ナナリー?ど、どうしたんだい……⁉︎」
「思い出した……思い出したのよ……」
アウロ王子が慌てているけれど、ナナリーの耳には届いていない。
あぁ……もしかして?
〝リリィ〟って名前で思い出しちゃった感じかしら?
それどころか、グランを見て目を潤ませていたわ。
「嘘……グランヒルト様が……グランヒルト様が目の前にっっっ………‼︎」
「…………………」
グランは身の危険を感じたのか、私の背後に隠れる。
止めて頂戴。
私もこの子の相手したくないわ。
「グランヒルト様っっっ‼︎私、貴方のことーーー‼︎」
「そろそろ収拾つかなくなってきたから、誰かまとめて頂戴っっっ‼︎」
「じゃあ、私がまとめてあげよっか?」
思わず叫んだ私の言葉に反応する声が一つ。
シンッ……と静まり返ったその中で、クスクスと笑いながら一組の男女が現れた。
桜色を帯びた銀髪に桜色の瞳の美少女と、黒髪に瑠璃色の瞳を持つ爽やか系青年。
二人は腕を組みながら、楽しげに笑っていた。
「……………ここでまた誰か出てくるのかよ……完全にキャラの大渋滞が起きてるって……」
グランが呟くと、青年の方が「いやいや」首を振る。
そして、呆れたように溜息を吐いた。
「こっちも出るつもりはなかったんだけどね?なんか、混沌極まるみたいになってきたからさぁ……」
彼がそう言うと同時に、彼女がにっこりと笑い全員に告げた。
「では。《聖母》リズベット・フリューゲルの名において、この場の調停を行います」
ざわりっ……‼︎
聖堂にいた人々が騒つく。
えっと……《聖母》って何かしら?
「グラン……」
「いや、俺は知らないって」
それだけで伝わる私達も、アレだけど……。
アウラ王女が驚いているってことは、それなりの身分がある方ってことかしら?
「アウロ王子は、アウラ王女を国外追放としました。ならば、王子……その言葉の責任を取りなさい。王位継承権第一位であり、我が友人であるアウラ王女は全てを犠牲にしてきました。ならば、貴方が犠牲を払う番です」
降り積もる雪のように静かな言葉でありながら、まるで突き刺さるような鋭さを感じさせる。
……………チートである私の身体が震えるって、凄いわよね?
「アウラ王女……いいえ、アウラ。貴女はもう自由だよ。何も縛られず、好きな人と結ばれる未来を、歩んで欲しいな」
「………………リズ……」
そして、アウラ王女に語る声はどこか慈悲深く……慈愛に満ちた優しい声で。
最後に……ナナリーに向けた彼女の視線は……。
………………………〝無〟だった。
「楽しかった?男達を誑かして、アウラを追い詰めて。チヤホヤされるのは嬉しかった?あぁ、返事はいらないよ?ただ、私達はこの国を見限るけどね」
『なっ⁉︎』
リズベットと名乗った彼女の言葉に、聖堂にいた人々は悲鳴のような声をあげる。
しかし、彼女は無表情のままだったわ。
…………………私とグランが、恐怖を感じるほどの。
「だって、私はハル君と一緒にいられればどこにいても変わらないんだもの。この国にいたのは、実家があるからじゃないよ?アウラって言う、希望ある未来の指導者がいたからなんだよ。だから、アウラがいなくなるなら私達もここにいる必要はないし?お父様とお母様には悪いと思ってるけど、家の愚弟もそこの女の子に首っ丈で……なんか我が家も未来がなさそうだし?なら、面白そうな子達がいる大陸に移住するのも一つの手だよねぇ、ハル君」
「だな、リズ」
チラリと向けられた視線は、私とグラン。
………………え?面白そうな子って……私達?
「うん、決めた‼︎私達もアウラについてっちゃおう‼︎良いよね、サリーちゃん‼︎」
そう空に向かって彼女が声をかける。
…………え?電波系?と思ったら、まさかの………。
『構いませんよ〜。お二人が御子を産んで下さればなんでもオッケーです‼︎』
「流石、サリーちゃん。話が早い‼︎」
……………………な、な、なんか空から声が降ってきたぁぁぁぁぁぁっ⁉︎
えっ⁉︎えぇっ⁉︎なんか、無駄に神聖な力を纏った声なんだけどっ⁉︎
ちょっと、自分がシリアスクラッシャーだって分かってるけど、流石にコレは対応できないわよ⁉︎
何事⁉︎
「…………………えぇぇぇ……そんな軽いノリでいいんですの……?というか、ハルトさんの意見は……」
「甘いですよ、アウラ王女。俺の意見はリズの意見。リズが望むなら全て叶えるまでです。だから、リズが移住するって決めたら移住するだけ。オッケー?」
……………どうやら、あの黒髪さんがハルトさんって言うらしいわ。
…………………どうしよう……キャラが濃い。
「ちなみに、同じ転生者であるグランヒルト君とフリージアちゃんも良い?私達もそっちに行って。まぁ、駄目って言われても行っちゃうけどね」
「「っっっ‼︎」」
思わず身構える私達。
どうして、この人は私達が転生者だと知っているの?
……………と思ったら……ハルトさんが、リズベットさんを後ろから抱きながら、答えてくれたわ。
「俺らも転生者なんだよね。というか、もう何百回転生したかって感じでさ。大体、転生者って分かるんだよな」
「「まさかの転生大先輩‼︎」」
ズッコケなかった私達を褒めて欲しいわ。
後……どうしてもツッコミたいことが一つ。
何故……何故っっっ………‼︎
ハルトさんは堂々とリズベットさんの胸を揉んでいるのっっっ⁉︎
「で、ハル君。抱きつきながら胸を揉むの止めようね?恥ずかしいよ?」
「あははっ、嫌かなぁ。リズの胸、柔らかいし」
「エッチさんだなぁ」
ついでにオープンなタイプのスケベだったぁぁぁぁぁぁ‼︎
爽やか系なのに⁉︎
それに、リズベットさんも指摘していくタイプ⁉︎
なんか、私、キャラ崩壊してないかしら⁉︎
グランも頭を抱えて、呻いているし。
「キャラが……キャラが濃いぃぃぃぃ………‼︎」
「それな‼︎」
「……………というか、おれ、忘れられてね?」
「「「「「あ」」」」」
泣きそうな顔で呟いたのはスイハで。
…………そういえば、今回の主役だったわね。
えっと………。
「グラン‼︎」
「《転移》‼︎」
なんかもう色々と面倒になって、私達六人は第Ⅱ大陸に転移したわ。
うん。




