第23話 この二人はノリと勢いで生きてます(笑)
お久しぶりでごめんなさい‼︎
タイトル通りですよ。皆さん。ギャグに走ったけど、後悔はしてません。
よろしくね‼︎
一体、何を見せられているのだろうか?
わたくしは、そう思わずにいられない。
いつもいつも、わたくしの可愛いアズールヒルトが王になればいいと思っていた。
だから、わたくしは敵であるグランヒルトを消そうとしてきたわ。
でも、アレは死ななかった。
だけど、こんな模擬戦を見せられたら死ななかった理由も明白だった。
グランヒルトの元へスパイさせていた者が言っていた、グランヒルトが化物だという言葉。
それは、嘘じゃなかった。
化物、なんて言葉じゃ生温いわ。
これは……あの二人は、一体、何?
……………こんなの、敵うはずがない。
敵対してはならない存在だったのに、わたくしは彼に暗殺者を差し向けていたの?
グランヒルトの気分次第で、きっとわたくし達は殺されていた。
なのに、殺されていなかったのは………。
グランヒルトが、ただ、わたくしに慈悲を与えていただけ。
あぁ……今更、アレの本性を知って恐れるなんて。
わたくしは、震えが止まらない身体を……抱き締めたわ。
*****
『グランヒルト様とリジー〜。少し、速過ぎるので、もう少し遅く動けません?』
唐突にそう言われた私達は、動きを止める。
お兄様の方を見ると……苦笑しながら周りに視線を向けた。
『見えてない。ある意味、いつの間にか地面が抉れてる』
「…………すまん。ちょっと白熱し過ぎた」
グランは息を吐き、訓練場を見る。
うわぁ……私も熱中しちゃって周りが見えてなかったけど、これは凄い。
抉れてるし、地面は融けてるところがあるし、焦げてるところもある。
結界を張ってる人達も死屍累々って感じで倒れている人もいれば、亡者のような青白い顔色だし。
ちょっと暴れ過ぎたわね?
「グラン〜。これ、やり過ぎたかしら?」
「いいんじゃないか?他の生徒達もこれぐらい目指そうってヤツだから」
「うん、きっと無理だと思うわ」
グランはサラッと言ったけど、私達はチートなんだから……他の人がこれぐらいやるのは無理よ。
まぁ、でも?
これで私達が規格外だって皆に知らせることができたわよね。
「……………はぁ……なら、次で最後だ」
グランの纏っていた空気が一気に張り詰めて、私へのプレッシャーになる。
私も笑顔を浮かべながら、魔力を放出した。
「構わないわ」
世界すらも軋みそうな力。
完全にチートよねぇ……。
グランとこんな風に戦えるのは楽しかった。
もう終わってしまうなんて、悲しいけれど……もう終えないと、周りの人への被害が凄そうだものね。
あ、そういえば……。
「…………ちなみに、グランが勝ったら私に何をさせたいの?」
「え?エロいことだけど?」
ヒョォォォォ………。
高めていた魔力がスカッと抜けて、その場にいる人々のギョッとした視線が突き刺さる。
………………グラン……貴方……。
「…………いや、そうだろうなぁとは思っていたけれど‼︎なんで人前で言ったのよ‼︎」
「あ、やっべ。気が抜けてた」
「気が抜けてた以前の問題‼︎貴方、王子‼︎オーケー⁉︎」
「えー……でも、いい機会だからもう素でいこうかと……そろそろ王子ぶるのは面倒くさいし……」
「ガチ暴露じゃないのっっっ‼︎」
スパコーンッッッ‼︎
思わずハリセンでぶっ叩いたのは悪くないはず。
だけど、グランには殆どダメージがなかったわ。
というか、私がハリセンで叩いたからか……余計に覚悟を決めちゃったわ。
「いいですか、リジーさん‼︎」
「なんですか、グランさん‼︎」
「ぶっちゃけ俺は下心マックスな普通な男です‼︎好きな女とはエロいことしたい‼︎甘やかしたい‼︎」
「ぶっちゃけ過ぎだわぁぁぁぁぁぁぁあっっっ‼︎」
ねぇ、分かってる⁉︎
貴方、地味に憧れの存在である王子だったのよ⁉︎
というか、色んな貴族とか学園関係者がいるのよ⁉︎
国王陛下とかもいるのよ⁉︎
ぶっちゃけ過ぎじゃない⁉︎
「ていうか……面倒くさいから、王位継承権もアズールに投げたいくらいなんだけど……もう殺されかけるのも怠いし……」
ねぇ、サラッと殺されかけていたってバラしてるわよ。
王家の闇をバラしてるわよ。
「あはは〜、嫌ですよ〜‼︎こちらも面倒くさいので‼︎」
まさかのアズール様も王位継承面倒宣言っっっ‼︎
国王陛下は自分の息子達の本音を聞いて、もう乾いた笑みを浮かべちゃってるじゃない……。
「それに、リジーは俺が王子じゃなくてもついてくるだろう?」
にこやかな笑顔で言うグラン。
その笑顔は、私がついて行くのを疑っていなくて。
………………そういうのは、狡いと思うわ。
「まぁ、何が何でもリジーを娶るって約束してるから、嫌だって言っても拉致って行くけど」
「ねぇっ、一瞬良い空気になったのを返してくれるかしらっ⁉︎」
「という訳でえいっ」
「きゃあっ⁉︎」
グランはいつの間にか私を抱き上げて、クルクルと回る。
………………あぁ、もぅ……折角、最後の一撃を噛まそうと思ったのに。
やる気が失せちゃったじゃない。
だからーーー。
「八つ当たり、よ」
私は上空に向けて、雷の矢を出現させる。
大きく、高濃度魔力の………一矢を。
「アース、ファイ‼︎退けっっっ‼︎」
『『うんっ‼︎』』
グランがドラゴン達を退けてくれる。
うふふっ、ありがとうね。
では、空高く舞うーーーードラゴンさん。
「理不尽でごめんなさいね?」
パァァァァアンッッッ‼︎
電光石火で矢が放たれ、結界を簡単に弾き飛ばし、空高く真っ直ぐに進む。
それと同時に、結界を張っていた者達の嘆きの声と空高くから獣の咆哮が響いた。
「よし、ヒットね‼︎」
でも、ただの魔力矢じゃ倒せないみたい。
結界で微妙に力が削がれてしまったし……異常に魔力耐性が強いのかもしれないわね。
グランもそれを分かっているからか、亜空間からただの刀を取り出す。
そして、私を地面に降ろすとニヤリと笑ったわ。
「じゃあ、堕としてくる」
「えぇ」
グランが一瞬で消え去り、再び空高くで絶叫が響く。
そして、その巨体が落ちてきた。
ドシーーーンッ‼︎
真っ白なドラゴン。
首と胴体が真っ二つに分かれており、グランがドラゴンの胴体に着陸する。
「リジー」
「はいはい」
無詠唱で《蘇生》を発動させ、いつものノリで卵に変える。
真っ白な卵で、サイズが大きい以外は普通の鶏の卵みたいだわ。
『経験値ーーー』
あ、久しぶりに現れたわね、アナウンス。
そういえば……。
「グランがドラゴン殺したらまたレベルがヤバくなるんじゃ……?」
「……………あ。」
思い至らなかった私達、馬鹿ね。
「まぁ、うん。やっちゃったもんは仕方ない」
「そうね」
なんて呑気に言っていたら、いつものようにパキパキパキ……パッカーンッ‼︎と卵が割れて、デフォルメ化された白いドラゴンが出てくる。
ドラゴンはこちらを見て叫んだわ。
『流石に速攻で殺害はどうかと思いますわ‼︎』
「「八つ当たりだ(よ)」」
『なんて酷いお父様とお母様‼︎』
お~いおいと泣き始める白いドラゴンを、アースとファイがヒョイっと持ち上げる。
白いドラゴンはギョッとしながら、彼らを呼んだ。
『アース⁉︎ファイ⁉︎』
『ライトもパパ達の子供だから、ボクの方がお兄ちゃんだよ‼︎』
『ふふん‼︎』
『何故か分かりませんが屈辱ですわ‼︎』
なんて家族が増えていたら……お兄様のアナウンスが流れたわ。
『取り敢えず、説明お願いしていいかな?』
ですわよね。




