第22話 RPG好きによる、RPG好きのための模擬戦
お久しぶりで、ごめんなさい‼︎
今後もよろしくどうぞ‼︎
ちなみに解説は後書きに‼︎
ある晴れやかな日ーー。
学園の訓練場はとんでもないことになっていたわ。
「グランさんやい」
「なんですか、リジーさん」
訓練用の体育着もどきに身を包み、訓練場の様子を出入り口から見つめる。
はっきり言って、帰りたいわ。
「なんでこんなに観客多いのかしら?」
そう……訓練場には人、人、人。
学園の生徒だけじゃなくて、貴族……それに国王陛下を筆頭にする王族の方までいらっしゃる始末。
一体、どうしてただの模擬戦でこんなに人がいるのよ‼︎
「そりゃあ、俺が広めたからな」
「……お前の所為かぁぁぁぁあっ‼︎」
ハリセン一閃。
グランの頭をひっ叩くも彼はサラッと避けられる。
チッ……速さがとんでもないグランには、私のハリセンなんて余裕で避けられてしまうわ……。
「あははっ、ほら行こう‼︎リジー」
「ねぇ、なんでそんなに笑ってるの‼︎というか、抱っこして入場するの⁉︎」
「はいはい、行くぞ〜」
グランにお子様抱っこされながら、入場する。
流石にそんな入り方をしてくるとは思わなかったのか、驚いたような周りの視線と呆れたような視線。
あぁ……きっと後者の視線は陛下達ね。
「へぇ。珍しく側妃も出てきたか」
「え?」
ガバッと王族の座る席の方を見ると、そこには国王陛下と王妃様、側妃様……アズール様とその婚約者であるカメリア様の姿。
滅多に側妃様がいらっしゃることはないから、とっても驚いてしまったわ。
「………本当、珍しいわね?」
「まぁ、俺の力を見に来た感じかな」
「ふぅん?」
グランがニヤリと笑い、悪そうな笑みを浮かべる。
……あら…何かするつもりなのかしら?
まぁ、私には分からないいざこざなるものがあるんでしょうけど。
でも、やっぱり黒い笑みを浮かべると魔王様みたいだわ。
『えー……グランヒルト様、リジー。そろそろ模擬戦始めるから、離れてくれるか?終わったら好きなだけイチャイチャしてくれていいから』
この日のために用意したマイク(拡声魔法を作って付与した)を介して、本日の司会であるお兄様が言ってくる。
私はグランに降ろしてもらい、互いに距離を取ったわ。
『さて……本日の模擬戦の司会は生徒会長のエドガー・ドルッケンと』
『生徒会役員のクレマチス・タリーフェが担当させて頂きますわ。皆様、よろしくお願い致します』
二人が挨拶をすると、パチパチと僅かな拍手が沸く。
それを聞いてお兄様は苦笑した。
『本来ならわたしとグランヒルト様が行うはずでしたが、急遽、わたしの妹フリージアが代理をすることになりました』
会場……正確には、生徒達と貴族達からざわざわと怪訝な声が響く。
まぁ、そうよね。
力を見せているお兄様ならまだしも、ただの令嬢にしか見えない私が相手じゃ……そんな反対するような反応よね。
あるいは、力不足だと思われてるかしら?
『まぁ、文句の声も多そうですが……はっきり言って、本気のグランヒルト様が見れるいい機会だと思いますよ?』
『………ですが……フリージア様は大丈夫でしょうか?』
『ご安心を。では、皆さん。結界を』
お兄様が手を挙げると、訓練場の四隅に王宮魔術師が並び、結界を張る。
それに加えて、リリィもこちらに視線を向けずに結界張りに参加し……。
その上に、アースとファイがドーンっと土の結界と火の結界を継ぎ足したわ。
あら、凄い。
『多分、これで……他の方への被害はないはずです』
『いやいやいや……こんな国家戦略級の結界を張っておきながら、はずってなんですの』
『……………壊さない自信はあるかい?グランヒルト様、リジー』
「「白熱したら、どうなるか分からない(わ)」」
『………避難時の説明に移ります』
お兄様はサラッともしものための避難説明に入る。
生徒達と貴族達はそれを聞いて、馬鹿にしたように笑ったり何言ってんだ?って怪訝な顔をしてるけど……まぁ、どうなったって知らないわ。
私はグランに向き直り、首を傾げた。
「本気気味でやった方がいいの?」
「あぁ。生徒達には目指すべき目標があると指し示し……貴族達には俺達を害することはできないって牽制の意味があるからな」
「分かったわ」
ニヤリと思わず笑ってしまう。
あぁ……だって仕方ないわ。
こんなに真剣かつ、本気で暴れられるのはいつぶりかしら?
やっぱり、RPG好きとしてはこうじゃなきゃね?
「勝ったらどうする?」
「そうねぇ……相手の言うことなんでも聞く、っていうのはどうかしら?」
「…………あははっ、それ最高」
ぞくりっ……。
グランの瞳が獣のように細められて、私の警戒心が上がる。
ちょっと楽しみ過ぎて、頭に血が上って油断したわ。
なんでもは駄目だったけど、後悔先に立たず。
これはもう勝つしかないわ。
『では、グランヒルト・ファイ・ディングスとフリージア・ドルッケンの模擬戦を開始します‼︎始めっっっ‼︎』
その合図と共に、私は数百本単位の雷槍を出現させる。
それと同時に雷装を展開。
私は純白のレースで彩られた黄金の戦乙女のような鎧を纏う。
「グランには初めて見せるわよね?」
一際大きな雷槍を手に取り、私は笑う。
グランは、私の姿に見惚れているようで……反応が鈍かった。
でも、ごめんね?
貴方を待ってあげるつもりはないの。
「はぁっ‼︎」
「っっっ‼︎」
一瞬で間合いを詰め、グランに槍を放つ。
でも、やっぱり速さが異常なグランは後出しでも私の槍に反応できてしまう。
だけど、私の槍を受け流したタイムラグを私は見逃さないわ。
「うげっ⁉︎」
一斉に放たれる数百もの雷槍。
ドガガガがガガガッッッ‼︎と土を抉るその光景は、とても凄まじい。
けど………。
「はぁ……やっぱり、これじゃあ駄目ね?」
土煙が晴れた先……そこには二刀流の構えで光刀を構えるグランの姿。
やっぱり魔法無効化があるから、効かないわよねぇ。
ふぅ……と溜息を吐くと、グランは叫んだわ。
「ちょっと見惚れさせてくれてもいいだろ、馬鹿リジー‼︎」
「だって、そういう隙を突かないと勝てないもの」
「この脳筋‼︎」
「脳筋はグランの方でしょ⁉︎」
グランは姿勢をとても低くして、攻勢に出る。
超物理攻撃特化型ーー。
きっと一撃喰らっただけで私は死ぬでしょう。
だけどーーー。
(身体強化全効果付与‼︎)
グランの振り下ろされた二閃の剣撃を、槍の中央で防御する。
バキッッッ‼︎と私の足元がクレーターになってしまったけど、ギリギリ耐えれたわ。
「むっ……身体強化か……」
「身体強化しないと耐えきれない馬鹿力って……相変わらずチートねぇ‼︎」
「全効果の身体強化発動させてるリジーに言われたくねぇよ‼︎」
なんで言い合いをしながらも私達は互いに笑いあっていて。
戦いは更に白熱していくーーー。
*****
目の前で起きている光景は一体、なんなのだろうかーー?
きっとこの場にいる全員がそう思っていることだろう。
隣に立ち、一緒に解説をしていたクレマチス嬢も呆然としながら、わたしに質問してきた。
「か、会長っ……あの……お二人の姿が見えないのに……地面が……」
訓練場には数多の雷鳴が鳴り響き、地面が抉れ、所々は融けてしまっている。
だが……この場にいる人々にグランヒルト様とリジーの姿を見れるものはいない。
それは勿論わたしもだ。
その理由は簡単。
二人が速すぎるんだ。
「わたしも、二人に教えてもらっていたからその強さは知ったつもりだったけど……認識が甘かったみたいだ」
遥か高みの存在だと思っていた。
でも、それよりももっともっと……遠く、姿さえ見えない存在だった。
「本気の二人を見るのは初めてだよ」
二人は一体、どこまでいこうとしているんだろうね?
過ぎる力は不気味であり、恐怖の対象だ。
でも、わたしはそれに憧れてしまう。
一体、どうすればそれほどの高みに至れるのか?
どれほど、二人に近づけるのかーー?
どうやら、私も脳筋だったみたいだ。
わたしは、その姿に……少しの恐怖と、好奇心を抱かずにいられなかったーーー。
エドガーの憧れは、強い人に憧れちゃうような感情です。
普通は怖がるはずだけど、二人とちゃんと交流してきたから憧れになったんだと思います。




