第18話 どれだけ成長したって、やっぱり私達はRPG好き
不定期ですが、今日と明日、珍しく2日連続更新です。
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入学式は滞りなく行われた。
王族が在学中なら、その人が生徒会長を務めるのが通例なのだけど……グランは「この学園にいる以上、わたしは一生徒です。先輩を押し退けて生徒会長になるなど、烏滸がましいです」なんてそれっぽい理由を述べて、生徒会長を回避したらしいわ。
まあ、でも生徒会副会長らしいけどね。
………まぁ、今日は入学式しかないけれど。
終わったら、学園内の見学でもしようかと思っていたけれど。
どうして私は生徒会室に拉致られてるのかしら?
「リジー。これはどう思う?」
「そうね……ちょっと攻撃特化になってるから、後衛を入れた方が良いわ。というか、これぐらいならグランも分かるでしょう?」
「俺一人の考えだと偏るかもしれないだろう?だからだよ」
グランはそう言いながら、戦術パーティーの編成を確認していく。
…………まさか……こんなことをしてたなんてね。
「………というか、一つ聞いていいか?」
浅黒い肌に赤毛の短髪の青年……ファディ王国からの留学生であるマルーシャ・トラリさん(生徒会書記)が怪訝な顔をしながら質問してきた。
「なんだ?」
「どうして、グランヒルト様は婚約者を膝の上に乗せてるんだ?」
「「………………」」
現在、この生徒会室にいるのはマルーシャさんと生徒会会計のコバルトブルーの髪を持つクレマチス・タリーフェ公爵令嬢。
そして、生徒会室長のエドガーお兄様。
…………お兄様は慣れてたけど、そういえばこんな風に人前でしてるのは何気に初めてだったわね。
「リジーとグランヒルト様は仲が良いから、普通じゃないかな?」
「いえいえ、エドガー様。普通じゃありませんわよ?」
クレマチス様が呆れたように言う。
私はグランの方をチラリと見た。
「降ろして」
「嫌だ」
「でしょうねぇ」
流石に公の場ではやらないけど、基本グランは私を膝の上に乗せるのが好きなのよね。
まぁ、私もこれに慣れているし……グランの好きなようにさせているわ。
「まぁ、気になさらないで。いつものことだから」
「………婚約者同士でも過度なスキンシップは禁止されてるはずじゃ……」
「好きな女に触れないなんて男にとったら生殺しだろう。というか、ちゃんと父上達には言ってあるから問題ない」
「いや、国王陛下が了承してることに驚きなんだがっ⁉︎」
クレマチス様とマルーシャさんがギョッとする。
だけど、グランは書類から視線を逸らさずに呟いた。
「そりゃそうだろ。俺はリジー以外の女を娶らないことを約束したからな。それを反故にした時は死ぬ」
「………そんな大袈裟な……」
「いや、実際に死ぬんだよ。そういう契約をしてるから」
「「「え?」」」
私とグラン以外の3人の動きが止まる。
そうよねぇ……今の私に触るためだけに命をかけちゃってるのよ、この人。
あと数年待てば普通に触れるようになるのに。
「グランも馬鹿よねぇ」
「リジーのためならいくらでも馬鹿になるが?」
グランはクスクスと笑いながら、私の頬にキスをする。
私はそんな彼の腕をペチッと叩きながら、怒った。
「生徒会役員じゃない私に仕事させてるんだから、ちゃんと働いて」
「すまん、すまん。戦術に関してはリジーの方が上だからな」
「まぁねぇ」
そう言いつつ、私は手元の書類に視線を戻す。
入学して驚いたこと。
それは、グランが乙女ゲームと全然関係ない行事を生み出していたこと。
なんでも、「貴族は民を守るもの。ゆえに必要最低限は戦えなくてはなりません」とか言って、全学年合同の縦割り班を作って、戦闘合宿みたいなのをさせ始めたんですって。
去年から始めたらしいけど、なんか……凄いらしいわ。
逆らおうとした者達は、何故か全員グランの言うことを順従に聞くようになっていたらしいし……。
実際の戦闘合宿では自分達が如何に弱いかを徹底的に教え込まれた所為で、プライドが高い貴族達はとても真面目に魔法や剣技の授業を受けるようになったらしいし。
冒険者ギルドの方にも護衛を頼んで協力させて……その見返りに貴族との接点を作ってあげたから、いい仕事が増えて感謝されているとか。
グランのバイタリティが凄くて、その話を聞いた私は思わず笑っちゃったわ。
というか……絶対、順従になった人達はグランに脅されたわよね……。
「二、三年のステータスは把握してるが、一年生はまだ実力検査をしてないからな。一年生であるリジーが把握してくれるとやりやすいんだ」
「………まぁ、構わないけど。あ、このパーティーは前衛ばっかりでバランス悪過ぎ。連携具合は?」
「猪突猛進が多いから、自分勝手な奴が多いな」
「なら、馬鹿な人達を一回調きょ……じゃなくて。グランが一回叩きのめしてから、こっちのパーティーの人達と会わせて、編成し直した方がいいわ。ここは後衛の回復が多めで前衛がいないから」
「分かった」
グランはRPGでトークはしてても、ソロプレイばっかりだったみたいだから、パーティー編成とか苦手なのよね。
その分、私が協力できるからちょっと嬉しいわ。
いつもグランは一人でできてしまうから。
「…………フリージア様は戦闘訓練に慣れていますの?」
そんな私達の会話を聞いていた、クレマチス様が驚いたような声で質問してくる。
あぁ……貴族令嬢はそんなこと、したことないのが普通よねぇ。
「リジーとグランヒルト様はわたしの師匠だからね。強いのは当たり前だと思うよ」
「「えっ⁉︎」」
クレマチス様とマルーシャさんが大袈裟なくらいに驚いて、グランとお兄様を見る。
…………どういうこと?
「手加減してても俺が相手になったら、殺してしまうかもしれないだろ?それに、戦闘訓練も成り立たないからな。基本、俺は人並み程度しか実力を見せてない。相対して、エドガーはちゃんと実力を見せていて、学園最強とも名高いんだ」
「…………え?お兄様、そんなに強くないのに?」
「「えっ⁉︎」」
「それだけ学園の生徒達が弱いってことなんだよ、リジー」
グランとエドガーお兄様は苦笑する。
あぁ……それじゃあ戦闘訓練とかさせたくなるわよねぇ。
じゃないと魔物の大氾濫が起きた時とか大変だもの。
私はこそこそと各パーティーのバランスを調節して……偏りが出ないようにする。
残るは……。
「………残る問題は私達と、聖女の扱いかしら?」
「…………あー……」
グランは面倒そうに溜息を吐く。
そして、私の腰にギュウッと腕を回したわ。
「一応、俺はエドガーのパーティーにいたんだが……抜けて、代わりに聖女を打ち込むか」
「そうね。ぶっちゃけ、私とグランが他の生徒と戦力差あり過ぎだものねぇ」
「だな。護衛にはAランク冒険者を使うか……最終手段はマッキーだな」
「あら。無理やり呼ぶの?」
「それぐらい構わないだろ」
あ、余談だけど……マッキーは無事にナターシャさんのご両親に挨拶を終えて、帰ったわ。
時々、連絡を取ってるけど……凄い数の子供が産まれたらしいわ。
………流石、ハーレム。
「中年太りしてたら、削ぎ落としてやろっと」
……………一瞬、肉の塊を削ぎ落として挟む料理を思い出したわ。
………あのピリ辛ダレが美味しいのよね……。
「俺とリジーは2人っきりで問題ないんだが……教員達が納得するかな」
「教員が駄目出しすることがあるの?」
「今のところ、ぐうの音も出ないようにしてるが……流石に王太子とその婚約者、2人パーティーはなぁ……」
「そうだよなぁ。普通、パーティーは5人で組むもんなんだろ?」
マルーシャさんの言葉に頷く私とグラン。
ここで余談。
5人パーティーの基本構成は、盾役、攻撃、魔法、支援、回復って感じね。
それを自分達の連携や好みに応じて変更していくわ。
あ、ちなみに……グランだけでも盾役、攻撃、魔法をできる。
で、そこに私(魔法、支援、回復)がいればほぼ最強状態の出来上がりね。
大体、ここにアースとファイ(盾役、攻撃、魔法)が加わったりするから……だいぶ過剰戦力になるわ。
「…………あ、そうだ」
「何かしら?」
「顔合わせの時に俺とエドガーが模擬戦をする予定だったから……それをリジーにすればいいんだ」
「……………あぁ……そこで実力を見せて黙らせるのね?」
ニヤリと悪い笑みを浮かべるグランに、私は同じ笑みを返す。
「そういうこと。学園の訓練場は王宮と大差ない防御結界が張ってあるし……でも、一応を考えて王宮魔術師団にも連絡しないと」
「ついでに聖女の力も使わせなさいよ。皆へのお披露目にもなるでしょう?」
「アース達にも手伝ってもらうか。防御系魔法使えたよな?」
「えぇ、勿論」
トントンと話が進む私達。
横には王宮魔術師団なんて国の最高峰の魔法使い集団の名前が出てきたことに頭を抱えるクレマチス様達が見えたけど、私達は止まらない。
だって、どれだけ成長したって、やっぱり私達はRPG好きなんだもの。




