第78.5話 第1回ダンジョンアタック〜アクス王国冒険者ギルドの裏方さん(3号)〜
実は長い付き合いな裏方さんこと、第1話の受付のお姉さんの話です(笑)
誤字報告、ありがとうございます!
いつも本当に助かってます! なるべく誤字んないように気をつけますが、見つけたらバシバシ教えてください!
台風が近づいてきてますので、皆様どうか身の安全に気をつけてくださいね!
では、よろしくどうぞ( ・∇・)ノ
皆様、こんにちは。
私の名前はアリエッタ。アクス王国の王都冒険者ギルドに短期出向中のディングス王国王都ギルドの職員です。
…………え?なんでディングス王国のギルド職員が他国の冒険者ギルドに出向してるかって?
……まぁ、これには色々と事情があるんですよ。
事の始まりは約10年ほど前のこと。
その日ーー私は小さな女の子のギルド登録をお手伝いしました。
その女の子の名前はリジーちゃん……。金髪碧眼の美幼女様でした。
……………はい。皆様お分かりですね?
そう……この美幼女様こそが……。
あの、ディングス王国王太子の婚約者であるフリージア・ドルッケン様だったんです……‼︎
ついでに相棒になったグラン君も王太子殿下でしたっ……‼︎
知ったのついこの間でしたけどねっ……オマイガッ‼︎
……。
…………。
…………はぁ。
本当、思いもしませんでした。この2人が貴族の中でもほぼ頂点の地位にいる子達だったなんて。
だって、全然貴族のお嬢様ってなんか、こう。アレじゃない?
偉そうとか。我儘そうとか。傲慢そうとか。
とにもかくにも嫌な感じのヤツが多いと思ってたんです。
現に、一応は身分を隠して(笑)冒険者やってるお貴族様はお貴族様であることを隠そうとしないし。貴族である自分を優先しろとかよく命令してきますし?
だからね?全然、思わなかったんですよ。
何日もダンジョンに篭って「大丈夫かしら?生きてる……?生きてるわよね……⁉︎」って心配させられたり‼︎
(ダンジョンには独自の理が敷かれているからなのか……現実との時間の流れが違ったり同じだったするの。同じダンジョンに同じ冒険者が潜っても毎回、ダンジョン内で攻略していた時間と現実で経過していた時間が違ったりするから、リジーちゃん達が帰ってこない時は本当にヒヤヒヤするのよね……安否的な意味で‼︎)
年齢にそぐわない依頼を受けたり、とんでもないレベルのレア物ドロップアイテム売りに来たり‼︎
他所から来た冒険者に喧嘩売られて、容赦なくフルボッコでやり返したり‼︎
(※ちゃんと規定に沿って決闘形式で解決してるので、お咎めなしです。)
そんなことばっかりしてるもんだからっ‼︎もう全然‼︎全然‼︎貴族らしくないから‼︎というか普通に問題児だったから‼︎
冒険者の自主性を重んじるルール(=別名・死んでも自己責任だよっ☆)がなければ絶対に止めるようなことばっかりするもんだから‼︎
だからまさかっ、この2人が王太子と公爵令嬢だとは思いもしなかったのよぉぉぉぉぉぉおっ‼︎(よぉぉお〜よぉぉぉお〜よぉぉぉぉ〜)←エコー
……。
…………とまぁ、そんな経緯で?最初の担当になってしまったのが運の尽きと言いますか?
私、アリエッタはなんだかんだと……《リインカーネイション》専属担当として、あの2人に振り回される日々を送ることに……。
…………えぇ、そうです。私が今、アクス王国の冒険者ギルドにいる理由はそれ。
他国であの2人(with魔王陛下と聖女様と、Sランク冒険者と他大陸の魔女(?)さん)がダンジョンアタックするからって、担当職員として他国に出向することになったのです。
ぶっちゃけ、現地の職員頑張りなさいよってのが本音だけど、仕方ないんでしょうね……。
だってあの子達の対応に1番慣れてるのは私ですものね……。他の人じゃどうしようもないものね……。
こうやって忙しくリジーちゃん達の尻拭いしてるから結婚適齢期逃しちゃった気がするんだけどっ……仕事だから仕方ないわよねっ……(涙目)‼︎
(※アリエッタさん、27歳。結婚適齢期=20歳を大幅に過ぎていたりする。)
現に……早速問題起こしてくれてるし。
はぁ〜……やってくれちゃったわね、リジーちゃん達ぃぃ……。
「アアア、アリエッタさん‼︎みみみ、見ましたか⁉︎」
アクス王国の王都冒険者ギルドで働く気弱そうな職員君が、同ギルド内に併設された酒場寄りの壁に展開された魔法板を見ながら声をかけてくる。
そこに映った空飛ぶ船と中ボスと、戦う幽霊達の姿に、私は大きな溜息を零した。
「えっと……タカオ君?だったかしら?」
「は、はいっ⁉︎」
「悪いんだけど《海底ダンジョン》の資料を貸してもらえる?」
「わ、分かりました‼︎」
彼はパタパタと小走りで、分厚い資料が束ねられた冊子を持ってきてくれる。
これは、各冒険者ギルドに絶対に置かれている《マル秘ダンジョン情報集》。その名の通り、この冊子には各ダンジョンの基礎情報、調査情報、冒険者から齎された(売られた)攻略情報なんかが載っています。冒険者にダンジョンの情報をギルドから売る時にも大活躍している、冒険者ギルドになくてはならない秘伝の書。
私はパラパラパラッとページを捲って、《海底ダンジョン》のページを開きました。
《海底ダンジョン》ーー。
《海底洞窟》・《海底神殿》・《海底大海原》の計3つの攻略ルートから成るダンジョンで……それぞれのルートにいる中ボスを撃破しなければダンジョンボスに挑戦出来ないという特殊な仕組みをしている。
《海底洞窟》ルートは迷路のように入り組んだ洞窟を進み、サハギン達を倒していくルート。篝火だけという少ない光源で視界が薄暗いのと、時間によって通路が水に沈むのでそれだけがネック。後、他のルートと比べると地味で面白みがない。
《海底神殿》は沈没した廃神殿を進んでいくルート。沈没してもなお美しい建物と人魚達に目を奪われるけれど……最後の《真珠の海廊》と呼ばれる場所で王女人魚達との連戦が起こるため、それなりにキツいルートだと言える。
最後の《海底大海原》。海の生物型魔物達を倒しながら沈没船に向かい、船に囚われた船員達を解放するというストーリー性が高いルート。船員達を解放した後は海賊船を託され、それを使って中ボスを倒しに行くことになる。
でも、今映像で映っているような……浄化が付与された攻撃を受けるとグールがレイスになるなんて情報、この情報集には載っていない。レイス達が協力してくれることも。本来なら冒険者が操縦しなくちゃいけない船の操作も代わりにやってくれるなんて情報もなかった。
ということは……。
「……ギルドマスターに報告。ダンジョンの新攻略情報の発見です。規定に従い、リリィさんとスイレン陛下に金一封の手配をしてください」
「ははは、はいっ‼︎」
「速やかに行動‼︎」
「はいっ‼︎」
パタパタパタと走って行くタカオ君。
私はページを見つめながら、溜息を零します。
はっきり言って、ダンジョンアタックの公開放送は冒険者ギルドにとってあまり良いものじゃありません。
だって、攻略情報が大放出されてしまうし。アタックのためにそのダンジョンが独占使用されてしまいますから、他の冒険者がダンジョンに潜れなくなっちゃいますし。
(ちなみに……今回はダンジョンの独占使用料をたぁ〜っぷり払ってもらってるらしいので、ギルド側としては逆にガッポリだそーです。チッ、守銭奴上層部め‼︎稼いでるなら給料上げろっ‼︎てか出張までさせられてるんだから、ボーナスぐらい寄越せ‼︎)
まぁ、でも??今回は、新攻略情報まで無料公開になってしまいましたから、上層部はアワアワとしてるでしょうね。主に新情報の売買で得られたであろう利益のことを考えて。ざ・ま・あ・み・ろ(笑)
…………まぁ。あの子達のやることに逆らうことなんてできませんもの。
少しは私以外もあの子達に振り回されちゃえば良いの。
あの子達の専属である私の苦労を他の奴らも少しは知・れ。
とにもかくにも。
なんだかんだで冒険をしているあの子達が輝いてるのも……確かですから。
今日も私は。
冒険者を楽しんでるリジーちゃん達が怪我なく帰ってくるのを、待ち続けるのでした。




