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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

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サクサク読める短編集

異世界から聖女を誘拐するからこうなるんだ

作者: 2626
掲載日:2026/02/07

 その世界には伝説があった。


 異世界から聖女が訪れる時、世界に救済をもたらす。

 しかし聖女を拉致した場合、世界は滅亡で覆われるだろうと。


 実際、その世界を訪れた聖女達は、皆、優れた技術や知識をもたらした。

だからその世界の人々は、聖女の伝説の片方のみを信じるようになっていった――。




 メギド王国の王太子フェロスは、決して立場が盤石では無かった。

異母弟マテウと、王太子――ひいては未来の国王の地位を巡って血みどろの争いを繰り広げていたのである。


 彼はある日思いついた。

「そうだ、聖女を私の後ろ盾の一つにしてしまえば良い!」

彼は早速、取り巻きと一緒に聖女をこの世界に招くための禁断の儀式を調べ始めた。


 聖女が自然とこの世界を訪れる場合は、大いなる吉兆。

だが、無理矢理に聖女をこの世界に招くなんて前例が無かったのである。


 しかし優秀な彼らは数ヶ月ほどで全ての課題と問題を消化し、無事に聖女をこの世界に招くための方法を編み出したのだった。

「やりましたね!殿下!」

「ああ、早速実行しよう!」




 彼らは聖女が異世界を訪れる時、決まってここから出現する門、『約束の門』を強引に起動させた。

その『約束の門』は不気味な音と光を放ったが、やがて彼らの想定通りに一人の異邦人の少女が姿を見せたのだった。

「あ、あれ……?」

少女は怯えた様子で周囲を見渡し、彼らに気付いた。

「ひっ……!」

フェロスは恭しく彼女に手を差し伸べながら、笑顔で言う。

「聖女様、我々は貴女様を待ち望んでおりました。強引な手段で招いた事はどうぞお許し下さい。ですが、我々には聖女様が必要だったのです」

少女は驚いた顔をしていたが、フェロスに訊ねた。

「あの……聖女って?」

「貴女様は選ばれた人間、この世界に救済をもたらす聖女様なのです」

「……でも、私、ただの女子高生で……」

「ジョシコーセー?……よく分かりませんが、聖女様、とにかく城へお越し下さい」

「……」




 馬車に乗った彼らが上機嫌で城に帰った後。

そのまま聖女を神輿に祭り上げて、フェロス達は無事に国王に即位した。

マテウはえん罪を着せられて処刑される間際に叫んだ。


 「異世界から聖女を拉致するなど!この世界は滅びるぞ!」




 聖女サチは一月ほど『帰りたい』『お父さん、お母さん、お姉ちゃん』と泣いていたが、やがて無表情になった。

「聖女様、観劇でも如何でしょうか?」

フェロスの取り巻きがご機嫌伺いにやって来ても、彼女は寝台から起きあがらないで無視するようになる。

そうなると彼女の世話をする侍女達も、一気に対応を蔑ろにし始めた……。


 「フェロス陛下、あれじゃ聖女様は長生きしませんよ」

取り巻き達は国の重役となっていたが、宴会の時に笑いながらそう言った。

「構わんさ、私は国王になった。もう彼女が生きていようといまいと、関係ない!」

フェロスは美女達を周りに侍らせながら、そう言った。

「ははは、陛下もお悪い御方だ!」


 この時、彼らは想定していない。

――聖女サチが彼らの話を聞いていた事。

そして、ある決意をした事を。




 ――翌朝。

焦った顔の侍女頭がフェロスの元にやって来て、聖女サチが城から脱走した事を告げる。

捜索した結果、『約束の門』の前で彼女の足跡が途切れていた事も。

「もう彼女の存在は不要だ。構わん、放っておけ」

良い厄介払いが出来たとフェロス達は笑って許し、処罰されなかったので侍女頭も安堵した。




 ――それから半年後の事だった。


 ズドン!!!


 明け方、凄まじい激震でフェロス達は目を覚ました。

「何事だ!?」

駆け込んできた騎士は、既に血まみれだった。

「『約束の門』から大勢の異邦人が現れて、都を、城を襲ってきています!」




 異邦人達は不気味な鉄の馬車に乗り、空を飛ぶ鉄の鳥、弓矢でも無いのに離れた所にも攻撃できる凄まじい武装を数多所有していた。

戦力差は歴然であり、あっと言う間にメギド王国の都も城も占領された。




 フェロス達は囚われて城の地下牢に放り込まれる。

震える彼らの前に姿を見せたのは、消えたはずの聖女サチであった。




 「ねえ、あんた達って馬鹿だよね?」

聖女サチは嘲笑を浮かべて、絶句するフェロス達に話しかけた。

「聖女って、地球とこの世界を繋ぐ鍵なんだって。あたしがいる限り、地球から幾らでも軍隊を送り込めるしその逆も可能なんだってー」

「う、裏切ったのか貴様!!!」

フェロスが思わず咆えた時だった。

聖女サチは腹を抱えて笑い出した。

「裏切ったってマジで笑えるー!ありがとね!あたしを裏切らせてくれて!

本当はあたし達凄く困っていたんだ。地球の資源は足りないし、人口は増えるし。少ない資源や土地を巡って戦争ばかり起きて。でもこの世界からそう言うのを全部奪えば、しばらくは何とかなりそうだって話になったの。

昔って言うか、何もかも遅れている世界だしね!

だから根こそぎ奪われてよ、ね?

ホント馬鹿だよねー、あたしを無理矢理誘拐しなければさ、地球で酷い目にあっていた女の子ばかり選ばれて、聖女としてこちらの世界に平和的に派遣されていたのに。あたしなんかを拉致して寄ってたかって虐めたからこうなるんだよ。

ざまあみろ!」


 そう言うなり聖女サチは軽やかな足取りで地上へと歩いて行った。




 ――フェロス達は声も出ず、その後ろ姿を見つめるだけだった。

これってバッドエンドなんでしょうか。

ハッピーエンドなんでしょうか。

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― 新着の感想 ―
似てると言った手前なんですが、星新一先生は巨匠すぎて似てても気にしなくて良いレベルなので全然大丈夫ですよ!星新一先生は、書いた話が桁違いに多すぎて、コレ系の話(ジャンル)では被らないほうが難しいです。…
地球では、人間のリソースを削り出すような戦争が、異世界のおかげで、延命されたんだからハッピーエンドだ! (星新一に似てて久しぶりに読み返したくなったよ)
もう地球にフロンティアはありませんからね〜 開拓&搾取可能な土地があったら押し寄せるわけで しかも誘拐犯がトップの異世界だし 国民の保護+教育の名目で植民地フィーバー再来ですわ 気になるところは魔…
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