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第4話 幼馴染十字ゲーム大会 中

 夕方になり明と陽姉も集まってきた。


 明は全身真っ黒で、完全な部屋着スタイルだ

 明が来ても詩央が着替えないってことは、もしかして明がこんな格好で来ることを予想してたか?

 確かに2人が並ぶと同棲カップルのオフスタイルに見えなくもない。


 だが、詩央をよく見ると髪を下ろして、上着のチャックが胸上まで上がっていた。


 自分が恥ずかしいのか、明の事を熟知してるからなのか不明だ。

 まぁどっちにしろ明を意識しての行動だから、我が妹ながら可愛いと思う。


 陽姉は袖の長い焦げ茶のクロップドトップスに、紺色のセーラーパンツを履いているへそ出しスタイルだ。

 右足には銀色に輝く翼のような小物が付いているアンクレットを身に付けている。


 セミロングの茶髪はハーフアップに結ばれていて、歩く度に結んだ髪が揺れていた。


 悟は陽姉の格好をどう思っているのか、聞くには夜を待つしか無さそうだ。

 陽姉が初恋相手の俺から見ても、今日の陽姉は可愛く思える。


 今もなお陽姉が大好きな悟の感想を、寝る前に根掘り葉掘り聞いてやろうと思った。


 「さて、皆さんお待ちかね。第一回目幼馴染十字ゲーム大会を始めます!」


 テレビの前に立った兄貴が宣言する。


 毎月2,3回行われるゲーム大会で、もうすぐ通算200回に達成しそうな勢いだ。


 このゲーム大会は当初兄貴と陽姉が、幼馴染全員で楽しく、仲良く遊べるようにと考えたもので、参加者全員に駄菓子などを配っていた。

 だが、大きくなった俺達は参加賞のような駄菓子ではなく、中学に上がった頃には上位3名に1000円以内で好きな物を買うというモノに変わっている。


 もちろん出すのは兄貴だが、そのお金がどこから出ているのかは不明だ。


 ゲームは毎回、前回最下位だった人がルーレットを回すルールになっている。

 ジャンルは王道のアクションゲームから、一部の人間しかやらないような料理ゲームや着せ替えゲームなど。


 前回の春休み中に行われたゲーム大会の最下位は瞳ちゃんだ。

 つまり、今日のゲームジャンルは彼女が選ぶ事になる。


 「じゃあ瞳ちゃん。このタブレットのルーレットを回してくれ」

 兄貴が瞳ちゃんにタブレットを差し出す。


 「それでは行きます!」


 瞳ちゃんが強気の言葉とは裏腹に優しいタップでルーレットを回す。


 瞳ちゃんは数秒待った後、再びタップしてルーレットを止める。


 「よし決まったな。今日のゲーム大会のジャンルは料理に決定!」


 ジャンルが料理と決まると各々反応を示した。

 現実でも料理が出来る女子4人は嬉しそうな表情を浮かべ、明と悟は真逆の表情になっている。


 ゲームが得意な明や悟は、自分から進んでやるジャンルではないためあまり得意ではないし、明に至っては唯一の苦手だと言っても過言ではない。


 俺と兄貴はなんでもそれなりに出来るオールラウンダータイプのため、特に気にしていなかった。


 ジャンルが決まった次は、テレビ横に置かれた棚からそのジャンルのゲームを1つ選ぶ。


 そして瞳ちゃんが選んだのは「キャンプファイト」というパーティーゲームなのだが、このゲームに入っているキャンプモードが今回の目的だ。


 このキャンプモードは数ある食材の中から5品を選んで、焚き火で串焼きを作るミニゲームがある。

 これが俺達が対戦するゲームだ。


 ゲームの操作は簡単で、コントローラーの左スティックを前に倒し串を火に近付け、焼けたと思ったらAボタンで引き上げる。

 焼き加減によって点数が付けられるため、5本焼いた合計で勝負なのだ。


 「じゃあプレイ順を決めていくぞ。この割り箸を一本引いてくれ」

 兄貴が割り箸の束を握りしめている。


 最初に陽姉が引き、それに続くように皆が引いていく。


 「さて、俺は……3番か」

 「俺は5番目だ」

 悟が引いた割り箸を見せてきた。


 「明は?」

 「俺か? 俺は2番目だ」

 明の声のトーンが明らかに低い。


 「が、頑張れ……」

 「おう……」


 「さて1番は」

 「1番は私」

 詩央が自信満々に割り箸を掲げている。


 「お、1番は詩央か。じゃあ詩央はコントローラー持ってソファの真ん中にどうぞ」

 兄貴が案内し、さらに右に明、左に俺が座る。

 ソファには3人まで座れるため、表彰台のような形で3番目まで座るのがいつもの体勢だ。

 しかし不意にも詩央と明が隣に座ったことにより、詩央のプレイングがブレないか心配だった。


 だがそんな心配は不要だったようで、詩央はゲーム画面に集中している。


 詩央が明の事好きなのでは?と気付いたのも、この状況の時だった。


 普段ミスしない詩央がミスしまくっていたのに気付いて、顔を覗き込むと赤面して顔が強ばっていたんだ。

 最初は気のせいかと思ったんだが、詩央の番が終わり明の隣を離れて瞬間。


 両手で頬を包んで嬉しそうにしていたのだ。

 それから詩央は声が上擦ったり、顔を赤くしながら明話してる姿を見て確信した。


 と昔の事を思い出してる間にゲーム画面が進んでおり、慌てて画面に視線を向ける。

 

 詩央が選んだのは鮎、鳥、チーズ、ねぎま、マシュマロの5品で現実でやっても美味しそうなラインナップだ。


 もちろん食材によって焼ける時間が違うため、集中力が必要である。

 まぁこのゲームに限らず妨害行為は禁止だけどね。


 ちなみに詩央はこのゲームで満点の500点を出したことがある猛者である。


 『スタート!』

 ゲームが始まったと同時に、詩央は鮎を手に取り焼き始める。


 鮎は時間がかかる上に焼き具合の把握もしづらく上級者向けなのだが、詩央が唯一満点を出したことがない食材で、やる度に狙っていると本人が言っていた。


 鮎が焼き上がると、次はねぎまを焼いていく。

 その次は鳥、チーズ、マシュマロと焼いていき、最後のマシュマロをあげた時点で終了。

 画面に各串焼きの点数が表示される。


 『鮎 95点、ねぎま 98点、鳥 99点、チーズ 100点、マシュマロ 98点。

 合計 490点』

 「ふー、もう少し鮎の点数稼ぎたかったなぁ」

 「さすがしーちゃん、いきなり高得点だね」

 陽姉が詩央の両肩に手を置き、はしゃいでいる。


 「目の前でいきなりこの点数とか、越えられる気がしない」

 明が詩央を挟んだ反対側で頭を抱えていた。


 「いや、明はそもそも400点越えられるか、どうかだろ」

 「だ、大丈夫ですよ下月先輩、私のプレイをお手本にすれば400点はいけると思いますから。が、頑張ってください」


 「ありがと、詩央ちゃん」

 明は詩央からコントローラーを受け取り、ソファの真ん中に移動した。

 空いた右隣は4番目の瞳ちゃんが座る。


 明は詩央のアドバイス通り同じ食材、同じ順番に焼いていく。

 「ここだ! 今だ! ここ! それ! やば焦げた!」


 『鮎 82点、ねぎま 90点、鳥 90点、チーズ 75点、マシュマロ 56点。

 合計 393点』


 「お、惜しかったですね。下月先輩」

 「くっそ、詩央ちゃんからアドバイスもらったのに」

 明は悔しそうに太ももをポンポンっと拳で叩く。


 「まぁ明が唯一苦手なジャンルだからな、仕方ないさ」

 「真央にゲームで慰めらせるとは、一生の不覚」


 「いや、お前はいつもそうだろ」

 後ろから悟の鋭いツッコミが飛んできた。


 「まぁまぁ、アッキーにしては頑張った方でしょ」

 「そうだな。頑張ったな明」

 年上組も明を賞賛している。


 「次までにこのゲーム特訓するか」

 ソファから急に立ち上がり、強い意志を見せた。

 年上組による無自覚な慰めが、明のゲーム魂に火を付けたようだ。


 「手伝ってくれるよね、詩央ちゃん」

 「も、もちろんです! 何時間でも何日でも何ヶ月でもお付き合いします!」

 不意のお誘いに声が上擦っていたが、詩央はとても嬉しそうだった。


 「次は俺か」

 明からコントローラーを受け取り、ソファの真ん中へ移動する。


 空いた左隣には5番目の悟が座り、両サイドが右川兄妹に挟まれる形になった。

 特に右隣の瞳ちゃんは太ももをピッタリとくっ付けてくる。


 俺もズボンを履いてるし、瞳ちゃんもスカートがあるとはいえ、柔らかい太ももが俺の心を乱してくる。

 それに少し右を向くと、瞳ちゃんの胸元が目に入って余計に集中できなくなりそうだ。


 「あ、あの瞳ちゃん? そんなにくっ付かれるとやりづらいんだけど」

 「あ、ごめんなさい」


 瞳ちゃんが少し右にズレるが、人差し指が入るぐらいだった。


 とりあえず、気を取り直してゲームに集中集中。


 「食材は何にしようかな?」

 悩んではいるが、5品中4品は実は決めてある。


 まずは定番のマシュマロ、焦げやすいが高得点も出しやすい必須食材だ。

 2品目はとうもろこし、焦げ目がわかりやすく軽い焦げ目ならむしろプラスになるという万能な食材である。


 3品目はウインナー、見た目だけじゃなく皮が弾ける描写があるため焼き具合が見やすい。

 4品目は鳥だ、マシュマロの次にオススメの食材で比較的簡単な部類である。


 ラストはどうしようか、難しめの鮎か短時間で焼けるチーズか。

 迷った末俺はチーズを選んだ。


 『マシュマロ 97点、とうもろこし 95点、ウインナー 96点、鳥 99点、チーズ 94点。

 合計 481点』


 「真央先輩すごいです!」

 プレイしていた俺より、瞳ちゃんの方が喜んでいた。


 「くそー、兄妹揃って上手いな。越えられるか? これ」

 悟も隣でボヤいている。


 「次は瞳ちゃんだね。はい」

 「ありがとうございます」


 瞳ちゃんにコントローラーを渡して立ち上がる。


 「真央にいもやるねぇ」

 「詩央には全然届かなかったけどな、とりあえず暫定2位だ」


 「まぁまぁ、まーくんの後ろにはまだまだ人が居るから。2位すら怪しいかもね」

 次にソファに座ったのは陽姉だった。


 

 『鮎 95点、牛串 97点、鳥 99点、ウインナー 94点、マシュマロ 100点。

 合計 485点』

 瞳ちゃんも詩央一緒で料理が得意な分、ゲームが苦手でもかなり出来るようだ。

 「とりあえず詩央ちゃんには届かなかったけど、真央先輩は越えられましたね」

 「すごいね瞳ちゃん」


 「ふふふ、実は詩央ちゃんと特訓してたんですよ」

 「いつの間に」


 どうやら知らない間に詩央と特訓していたようだ。

 ちなみに瞳ちゃんが1番得意なジャンルはレースである。


 「次は俺だな」

 「はい、お兄ちゃん」

 悟が瞳ちゃんからコントローラーを受け取ると、ソファの真ん中に移動した。


 悟の右側では陽姉が座っているが、左隣には兄貴が座ってしまい悟の表情が面白いことになったのは言うまでもない。


 「さてここから後半、悟は心配してないけど。兄貴と陽姉の実力が気になるな」


 後半にダークホースが隠れていた事は、前半の俺達には知るよしもなかった。

 今日のろじ裏


 入学式早々、私は真央君にドキドキさせられてばかりだ。


 雪穂の事を愛称で読んだと思ったら、お昼ご飯一緒に食べようって誘ってくるし。


 「真央君が喜んでくれる衣装はどれかな?」


 「これかな? それともこっちかな?」


 ゲーム大会の後お泊まり会だから、せっかく綺麗にした自分の部屋が衣装選びで散らかって「後でまた片付けないと」って少し気落ちしていた。

 そんな中悩みに悩んでオシャレしたら、可愛いって褒めてくれる。


 すごく嬉しくて、お昼ご飯のお買い物中はまともに真央君の顔が見れなかったけど、私はとても満足だった。


 でも一緒にお買い物に着いてきた瞳ちゃんも、真央君を意識して凄くオシャレをしていたの。

 家でゲームするだけなのに、どこかデートに行くのかな?って言うぐらい気合いが入ってた。


 私はお買い物デートがあったからオシャレしたけど、彼女はそんな予定が無くても真央君に可愛いって思われたいんだと思う。


 やっぱり真央君も、胸元が見えた方が嬉しいのかな?

 確かに瞳ちゃんは中学二年生にしては発育が良くて、同級生達にモテそうな雰囲気はある。

 それに私より積極的にアピールしてる。これは素直にすごいと思った。


 私だって本当は幼馴染の中で一番大きいってわかってる、でも真央君をそれで振り向かせるのは少し違う気がする。

 

 だから私もアピールしてるけどそれに気付かないのが、私達が惚れてしまった十塚真央なのよ!

 だから私も瞳ちゃんも雪穂も遠慮はしないけど、苦労も同じぐらいしそうだ。


 いや、もう苦労してるね。


 お昼ご飯を食べる時も、瞳ちゃんは真央君の隣に座っていた。

 私は真央君の顔を見ていたかったから正面に座ったけど、隣も座りたかったなって後で思ったんだ。


 それから夕方まで陽歌ちゃんと明君を除いた6人で、交代でゲームをしていた。

 この時も瞳ちゃんのアピールは止まらない。


 シレッと隣に座るし、分からない事は全部真央君に聞いてた。


 詩央ちゃんも居るのにほぼ、真央君に聞いてたあたりかなり計算高い女の子だと思う。

 でもこういう子って、とんでもない裏側があるんだよねって思ってたら、詩央ちゃん曰く瞳ちゃんは真央君の前だけ完璧な女の子になってるらしい。


 私と似たようなタイプなのかもしれない。

 今は両親が海外出張で1人だから、幼馴染でお泊まり会とかない限り部屋の中はテキトーだし、胸の秘密を隠す相手も居ないからきちんと合う下着は着けるけど、ダラけた格好で過ごしてる。


 詩央ちゃんは明君の前では少し整えるだけで、ほぼ素の状態だろうし。

 陽歌ちゃんは……しっかり者のお姉ちゃんのイメージがあってダラけてるようには思えない。


 今日は久しぶりに詩央ちゃん、瞳ちゃん、陽歌ちゃんとお泊まり会だから、今日こそこの胸の秘密を明かしたいな。

 正直、皆に隠したままなのもそろそろ限界だと思うから。


 そもそも持ってる胸当てすら少しキツく感じるから、女の子達だけじゃなくて、他の皆にも説明する日が来るんだろうな。


 その時真央君は、どんな反応するんだろう。

 喜んでくれたら嬉しいけど複雑だし、引かれたら泣いちゃうかもしれない。


 それでも、私はありのままの自分を好きになってもらいたいな。


 もしその時が来たら覚悟しててね、真央君。

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― 新着の感想 ―
キャラがたくさんいて恋愛模様も様々ですが、ひとりひとりの個性が立っていて混乱せずに読めました!幼馴染の学園生活という青春が十字路に例えられているのもこれから来るかもしれない別れのメタファーかなと勝手に…
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