41.溺れるほどの愛に包まれて
それから数週間後。
ヴェリキーの地で、私とアレクシス様の結婚式が行われた。
王侯貴族を招待しての盛大なものではなかったけれど、騎士団の大切な仲間に祝福されながら、小さな教会での式。
この日のために、アレクシス様は私にドレスを新調してくれた。
アレクシス様の瞳の色に似た黄色のドレスに、以前買っていただいた黄色の花の髪留めを付けて。
いつもの騎士服もとても素敵だけど、アレクシス様も今日は正装されていて、とても格好よかった。
私は本当にこの方の妻になるのだと実感して、この幸せに酔いしれた。
――夢のような時間はあっという間に過ぎ、日が暮れていった。
『寝支度が済んだら、俺の部屋でゆっくり話そう』
夕食の後アレクシス様にそう言われて、深く考えずに頷いたけれど。
いざ彼の部屋の前まで来て、急に緊張してきた。
そう、だって今夜は、いわゆる初夜という日なのだから――。
やっぱり私は、今夜はそのままアレクシス様のお部屋で寝るのかしら……?
もしかして、枕を持ってきたほうがよかった……?
「……って、違う違う! そうじゃなくて……!」
今夜は、あの日とは違う。わかってる。
私たちは正式に夫婦となった。初夜に何が行われるのかも、私は王子の婚約者としてしっかり勉強した。
だから――。
「モカ」
「アレクシス様……!?」
扉の前でぶつぶつと呟いている声が聞こえてしまったのだろうか。それとも騎士団長様の勘?
私がノックをする前に開いた扉の向こうから、胸元の大きく空いた寝間着姿のアレクシス様が現れた。
やっぱり、とても色気がある……。
もうドキドキする。
「どうしたんだ、そんなところで。さぁ入って」
「はい、失礼します……!」
ギギギ、と音がするのではないかと思うほど、自分でもぎこちないと感じる足取りで入室し、私はそのまままっすぐベッドに向かった。
「……モカ?」
「…………はっ!」
けれど、アレクシス様はソファに座ろうとしていたらしい。
一人でベッドに進んでいく私に、不思議そうに呼びかけた。
「す、すみません……!」
これではまるで、期待しているみたいじゃない……!
恥ずかしい……!!
「今日は疲れたよな。だが寝る前に少しだけ、話をしてもいいかな?」
「もちろんです……!」
私が慌てているうちに、アレクシス様がスタスタとこちらに来てしまった。
そしてそのままベッドに座るよう促され、二人で並んで腰を下ろした。
アレクシス様のベッド……すごく緊張するのに、なんだかとても落ち着く匂いがする。
「モカ」
「はい……っ!」
「俺と結婚してくれて、本当にありがとう」
アレクシス様がこちらを向いて、私の手に触れた。その瞬間にドキリと鼓動が跳ねて、弾かれるように彼を見上げたら、そこにはとても優しく微笑んでいる彼がいて。
「君と出会えたことが、俺にとって一番の幸運だ」
「アレクシス様……」
熱い視線から、その想いがまっすぐ伝わってくる。
そっと見つめ合うと、アレクシス様の優しい瞳が近づいてきて。
閉じられていくまぶたに誘われるように私も目を閉じると、優しく唇が重ねられた。
「好きだよ、モカ。愛してる」
「……私も、大好きです。アレクシス様」
それからアレクシス様のたくましい腕に抱き寄せられると、彼の鼓動も私と同じようにドキドキと高く脈を刻んでいるのがわかった。
緊張しているのが私だけではないとわかって、なんだか嬉しい。
「この先も一生、俺がモカの幸せな日常を守っていく。それをどうしても伝えたかった」
「嬉しいです。ありがとうございます……」
アレクシス様となら、きっと私は幸せな人生を送れる。そして私も、アレクシス様に幸せな人生を送ってもらいたい。
静かにそっと胸に誓いながらアレクシス様を見上げると、再び彼の唇が落ちてきて。
その熱に応えていたら、いつの間にか私たちの身体はベッドの上に横になっていた。
「モカ……本当に可愛い」
「…………」
彼に組み敷かれながら至近距離で見つめられ、頰を撫でられる。
緊張で身体が強張っているのを感じるけれど、大丈夫。今夜は私だって、本当に覚悟ができているから――!
「アレクシス様……」
そう思いつつも、彼の服をぎゅっと強く掴んだ私に、アレクシス様はふっと小さく笑った。
「大丈夫、何もしないから」
「ですが……」
「焦ることはないからな。モカはもう、正式に俺の妻なのだから」
「……」
そう言いながらも、額や頰、鼻の頭に口づけを落としていくアレクシス様に、私のほうがくすぐったい気持ちになっていく。
「あの、アレクシス様……!」
「?」
そんなアレクシス様の頰を掴んで、私のほうからぐいっと彼の顔を目の前に運び、口を開く。
「そうです……私は、アレクシス様の妻です」
「……うん?」
「……ですから私を、アレクシス様のものにしてください」
「モカ」
口にした瞬間、かっと顔に熱が集まるのがわかる。でも、きっとアレクシス様は私のすべてを受け入れてくれる。
「ありがとう、とても嬉しい。愛しているよ、モカ――」
そんなことを考えている私の唇に、アレクシス様の温もりが重ねられて。
短く息をしながら、少し余裕のない表情で私を見つめているアレクシス様も、とても素敵で。
「俺は本当に、心底君のことが好きすぎる」
「……はい、」
「…………だから、無理をさせたらすまない。先に謝っておこう」
「……!?」
それはどういう意味ですか……?
私に言葉を紡がせる隙を与えてもくれず、何度も何度も唇を重ねてくるアレクシス様に、ふと思い出す。
アレクシス様には人並み以上の体力があって、とても元気な方だった――。
「ア、アレクシス様、やっぱり待ってください! 少し話しましょう」
「もう待てない。話は後で聞く」
「そんな、あの……っ」
まるで魔物を追い詰めた騎士のような鋭い瞳に射貫かれて。
私はそれ以上何も言えずに、アレクシス様からの愛に溺れた。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございますm(*_ _)m
これにて完結です!
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