39.全然眠れん ※アレクシス視点
「……」
「すー……」
「……」
「……すー」
「………………」
全然眠れん……っ!!
一つのベッドにモカとともに身を入れて、早数時間。
すっかり夜が更けたというのに、俺の目も頭も未だ冴えたまま。
だが、それも仕方ない。俺の隣には愛しい愛しいモカが寝ているのだから。それも、こんなに無防備に、俺に抱きついて。
一度は「一緒に寝て何もせずにいられない」と言ったものの、やはりここは年上の大人の男として、包容力の大きさを見せようと、強がってしまった。
そういうことは、正式に結婚してからだ。
本気でそう思ったものの、「安心して眠れ」などと言ってしまったことを、今になって少しだけ悔やんでいる。
モカが隣で寝ているのに何もしないというのは、俺が思っていたよりもきつかった。
「……アレクシスさま……」
「! …………寝言か」
むにゃむにゃと、何か言いながら暖を取るように俺にすり寄ってくるモカは、この世の者とは思えないほど可愛い。
男の俺とは違う、やわらかな身体に心地いい温もり。寝顔を見つめると、ついその小さな唇に目が向いてしまう。
……口づけだけなら、してもいいのでは?
いかんいかん……! 寝ている女性に、俺は一体何を考えているんだ……!!
いくら婚約者であっても、してはいけないことがある。
大丈夫。俺は辺境騎士団の団長だ。どんなに過酷な鍛錬にも耐え抜いてきたではないか。
これしきのこと、命をかけた魔物討伐に比べたら余裕もいいところ――。
「アレクシスさま……だいすき……」
「……!?」
そう気を引きしめた直後。
顔の近くでそう囁かれながら女性特有の膨らみを腕に感じた俺は、驚きのあまり飛び上がってしまった。
〝ドスン――!〟
「……痛っ」
そして情けなくも、ベッドから転げ落ちた。
「むにゃむにゃ……アレクシスさまぁ……」
「……」
幸せそうな寝顔で、俺の代わりに枕に抱きついて。モカは俺の温もりを探すように手を彷徨わせている。
なんて可愛い生き物なんだ、これは……!!
最早、拷問……。
俺を探しているモカに、自分に活を入れてから再びベッドに戻った俺は、落ちないギリギリのところで横になった。
朝まで持つだろうか……。
かつてないほどの鍛錬だ。これは忍耐力が鍛えられるに違いない。
魔物討伐をシミュレーションしながら邪念を払いつつ、それでも時折身を寄せてくるモカに、我慢ならず視線を向けた。
しかし、モカの寝顔は本当に穏やかで、幸せそうで、見ていて癒やされるのも事実だった。
こんなに清らかな女性に、何かしようなどと考えてはいけないな。
本当に愛らしい寝顔だ。
………………いかん!
俺はまた余計なことを……!!
そんな葛藤を続けているうちに、長い夜は明けていった。
「おはようございます、アレクシス様!」
「……おはよう。よく眠れたようだな」
「はい! アレクシス様が一緒にいてくれたので、安心してぐっすり眠れました!」
「そうか……、それはよかった」
「アレクシス様は、もしかしてあまり眠れなかったのですか?」
「いや、そんなことはないが……!」
嘘だ。俺はモカのことが気になりすぎてまったく眠れなかったから、思い切り嘘をついてしまった。
しかし一晩中起きていたなんて知ったら、きっとモカが気にしてしまう。俺は一晩くらい寝なくても平気なのは、事実だ。
「それでは朝食をとったら、発とう」
「はい! 早く皆さんにも会いたいですね」
「ああ」
そしてモカの笑顔を見たら疲れが吹き飛んでしまうのも、また事実だった。
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