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捨てられ令嬢は、異能の眼を持つ魔術師になる。私、溺愛されているみたいですよ?  作者: miy


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77話



結婚式とお披露目パーティーは、侯爵家のお庭と大広間を使用して小規模で行う。



『イシスを要らぬ貴族たちに会わせるつもりなどない』


そう…フェルナンド様が言っていた…。



私たちが婚姻契約を済ませた夫婦であることは、周知の事実ですものね。


そのため、侯爵家に招いたのはほとんどが親族。


私も、親族の一員だけど…養女であるから…お披露目パーティーの主役は私になるのかな?




結婚式は明後日。

侯爵家での準備が進むにつれて、喜びと緊張感が混ざった複雑な心境になる。






「お師匠様っ!」


「…おぉ…」



私は侯爵家の応接室で、優しい笑顔の師匠…元大魔術師のグランド様と再会した。



「イルシス。見ない間に…また美しくなったな。…おっと…今はイシス、だったかな?」


「はい。イシスですわ、お師匠様!」


「ふむ…“お師匠様”とな?」



礼儀を知らなかった私は、小さいころから『師匠!』と…男の子みたいにお呼びしていたわ。



「えと…私は、もう淑女ですから…“お師匠様”と…」


「ほほっ、相変わらず…そなたはカワイイのう。…もう()()とはなぁ…」



師匠は…よしよし…と、小さいころみたいに私の頭を撫でる。この感じ、懐かしい。



「師匠、お久しぶりです。お越しいただきありがとうございます」


「フェルナンド殿。結婚式への招待状、有り難く受け取りましたぞ。イシスを誰が娶るのかと思うておったら…まさか…」


「そんな目で見ないでください。師匠が私たちのキューピッドなのですよ?」


「こんな年寄りを“愛の天使”にするおつもりか?


ふむ。矢を射る場所を…少し間違えたようだな…」



師匠の目が獲物を狙うみたいに鋭く光った。



やだ…私の旦那様、師匠に命を狙われてる?!



フェルナンド様は『師匠の悪ふざけだから大丈夫だよ』と、笑いながら私の肩を優しく抱き寄せた。





「イシス、私が()()伯爵家に戻したばかりに…辛かったであろう。本当に悪かった」


「そんな…助けてくださったのもお師匠様ですわ。

魔術を教えてくださったのも、異能について調べてくださったのも、フェルナンド様に出会わせてくださったのも!全部…お師匠様なのですよ?

私は、感謝の気持ちしかありませんわ」 


「そなたは…やっぱりカワイイのぅ」


「…いや…ですから…睨まないでくださいって、師匠」



フェルナンド様が苦笑している。



「少々妬ましいが…2人が幸せなら、許してやろうかの。


コホン。フェルナンド殿、最近耳にした社交界の噂では…アンデヴァイセン伯爵家が取り潰しになりそうだとか?」


「その噂ですか…ご令息が継げば、放っておいても伯爵家は消えたでしょうが、より早く…潰れそうですねぇ?」



取り潰し?え…そうなの?



何だか…お2人が悪い顔をしている気がする…。


アンデヴァイセン伯爵家と繋がりを切っておいて、私は大正解だったということなのかしら。





──────────





侯爵家の親族の皆様方がどんどん集まって来る。


結婚式の前日は準備があり何かと慌ただしいため、親しい方々はそれよりも前に侯爵家へやって来て簡単な挨拶を交わし…式の翌日まで滞在をされるそうです。



「イシス、こちらはレガリア伯爵…」



レガリア伯爵様は、お義父様とは少し年の離れた実兄。お顔が似ていらっしゃる。


昔からお身体が弱く…跡目をお義父様にお譲りになった方なのだとか。



「はじめまして…イシスでごさいます」


「強くて可愛らしいお嬢さんのようだね、フェルナンド。私の領地にまでその名は聞こえてきたよ。とてもお似合いの2人だ」


「お褒めいただきありがとうございます、伯父上。最近、体調はいかがですか?」


「今のところは…何とかやっているんだがね…」



レガリア伯爵様は、穏やかで優しいお人柄のようです。奥様も一人娘のノエル様も、とてもにこやか。



「式や披露パーティーの最中でも、お辛い時は遠慮なく仰ってください」



フェルナンド様は人混みが苦手だけれど、ご親族の皆様方とは談笑したり…終始落ち着いた表情をしていた。





私は、久しぶりにフォークレア子爵家の皆様とお会いすることができた。


ご長男のトラビス様が近々ご婚約なさるという…うれしい知らせを持って、ご家族全員でお越しくださった。





「フェルナンド!」


「あぁ…叔母上、ご無沙汰いたしております」


「あなたの結婚は侯爵家にとって本当に喜ばしいことね。お姉様ったら、私に何度も手紙を寄越してきたのよ。

愛するお嫁さんを、早く私に紹介してちょうだい!」



あぁ…分かるわ。

この方は間違いなくお義母様のご親戚ね。やっぱり、親族とはどこか似るものなのね。





私は…アンデヴァイセン伯爵家の誰と似ていたのかしら?


全く見当が付かないわ。







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