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捨てられ令嬢は、異能の眼を持つ魔術師になる。私、溺愛されているみたいですよ?  作者: miy


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閑話2(ルミナスSide)



翌日、俺は早朝に呪いの解呪へと出掛けた。


入江の下見をした日から3日が過ぎていたが、さらに周りを詳しく調査していたということで…許して貰いたい。



派遣されたこの地へ来てから数日。

思いがけずイシスという存在に興味を持ち、大きく膨らみ始めた俺の欲望が…突如萎んだ。


あぁ、これがいつもの俺だったかな?



よし。解呪に全集中できそうだ。





─────────





“龍の呪い”は非常に強かった。

あれほど強力な呪いを2重にかけるなど、普通はしない。



呪いを解いて…これで()()()()と器の蓋を開けた瞬間、中から溢れ出た凄まじい邪気を浴びることになった。

当然中身も無力化できているだろうと気を緩めていた私のミスだが…まさか、全く別の呪いが仕込まれていたとは。


あとほんの少しでも聖魔力が足りなければ、私ですら危うく意識を失っていたかもしれない。

対象者が私ではなかったことと、呪いがすでに果たされていたため…何とか凌げたのだろう。


呪いが生む強い邪気は“絡め取りやすい相手を選ぶ”といわれている。わずかでも心の隙を見せてはいけない。



やっとの思いで城へ戻った私は、後のことはイシスに任せてとにかく休んだ。





イシスは、呪いを込めた器の中身が何か?分かっていると言う。



─そんなはずはない─



中は空っぽだ…分かるわけがないんだ。


やはり、特殊な能力を持つ()()()()()()()なのだと確信した。

まぁ…私も自分の能力を隠す身だ…詮索は一切しない。




解呪した呪いがどれほど強力なものか、全て包み隠さず話したところ…辺境伯は、自分のせいで子供が呪われたのだと泣き喚いた。


…へぇ、心当たりがあったのか…。

ここまでされるとは、一体どんな恨みを買ったのやら?そして、どんな犯人なのだろうか。



翌朝、イシスの願いである瘴気溜まりを浄化してから…大人しく帝都へ帰ることにした。





─────────





「辺境の地について、皆様方へのご報告は以上となります」



俺は、一連の出来事を丁寧に説明した。


皇帝陛下と3人の皇子殿下、高位貴族数人が部屋に集まっていた。

俺が派遣された理由を知る皇帝陛下以外の方々は、辺境伯が他国から呪われていたとは想像もしていなかったと思う。その証拠に全員が無言だ。



「ルミナス殿…大変ご苦労であった。大魔術師のあなたにお願いをして本当によかった。我が帝国を救ってくれたこと、心から深く感謝申し上げる」


「陛下…有り難きお言葉…」



俺は解呪に苦労したから…まぁ、感謝されて当たり前。



「さて…皆の者、度重なる飛龍襲来の原因については今聞いた通りだ。

ルミナス殿が言うように、犯人は呪術師…あるいはその関係者であるだろう。また使節団や古代文字など、犯人特定のための材料は揃っておる。犯人は必ず突き止める。

証拠を揃え、バイセル王国との交渉を始めなければならない。急ぎ取りかかれ!」



5年前の使節団について、資料を集めるだけでも大変だろう。外交を任される大公閣下はとても慎重な方だからな。



俺はスルリとその場を抜け出し…魔塔へと向かった。





─────────





「魔塔主」


「何度も言わせるな。魔塔主様と呼べよ」


「兄さん」


「…は?…お前…どっか壊れた?そんな呼び方、50年振りに聞いたわ」


「ただいま」


「おう、お帰り」



魔塔の現魔塔主レイヴンは、俺の実の兄だ。


俺は、次期魔塔主候補だと言われているが、実際はそんなことはない。長寿の兄が…今後も魔塔主として長く君臨するはずだから。



「ルミナス、呪いはどうだった?上手くやれたか」



手元の書類に目を通しながら、兄さんが聞いてくる。



「死にかけたよ」


「そうか、死に……はぁっ!死にかけたぁ?!」


「ヤバかった」


「おいおい…心配させんなよ…」


「兄さん」


「2度目?!…な…何だよ…調子狂うわ…」



俺は…家族として、兄さんに俺の恋話を聞いて欲しかった。





「ふーん…イシス嬢ね。お前がそこまで入れ込むのは初めてだな。いい女なのか?」


「うん。でも…欲しがったらダメなんだ…っ…」


「そりゃ結婚間近だから当然な…って、オイ…泣くな!」



『ほら、ハンカチ』…と、兄さんがその辺にあった布切れを俺に渡す。



「…お前は…外と内との人格差が相変わらず酷いな…」



ごめんなさい。兄さん。


俺は、せめて魔術師としてイシスを魔塔に呼びたいと話す。



「それは、帝都へ戻ってくれば交渉は可能かも?ってレベルだな。まぁ、陛下に頼んでみるという手もあるが…イシス嬢はそう簡単には囲えないぞ…多分…」


「……グスッ……」



ベソをかく俺を見て、兄さんは呆れたように『先ずは、お友達から…だろう?』と言った。




さすが…魔塔主。俺と違って常識がある。








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