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捨てられ令嬢は、異能の眼を持つ魔術師になる。私、溺愛されているみたいですよ?  作者: miy


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54話



翌朝、フェルナンド様と一緒に執務室へ行くと…疲れた顔をしたローウェン様だけが座っていた。



「ローウェン殿…おはようございます。あれから、ガーラント辺境伯のご様子は…?」


「朝まで寝てはおりません。…“すまない”と…今もずっと繰り返し謝り続けています」


「…やはり…そうでしたか…」



ローウェン様も寝ていないはず。

愛していた奥様…辺境伯令嬢のことを想って、辛かったに違いないわ。



「ローウェン様、先ずは…皇帝陛下へご報告をいたしましょう。犯人が他国の人間である以上、こちらで勝手な行動はできませんでしょう…?」


「イシス嬢の言う通りです。ローウェン殿、急ぎ書状を」



驚いた…!…どこから現れたの?ルミナス様。


フェルナンド様が、素早く私を抱き寄せる。



「私が陛下に直接お渡ししますよ。ついでに、呪いについても詳しく説明しておきます。あの銀色の器は…証拠として持って行くことにしますが、構いませんか?」


「はい、問題ありません。よろしくお願いいたします、ルミナス殿。…書状もすぐに…」



ローウェン様は本当にご立派な方ね。

心身ともにお疲れでしょうけれど…気力で頑張っていらっしゃる。



「あら、ルミナス様…もう魔力は回復されまして?」


「あ、あぁ…ポーションも使ったから」


「まぁ、ポーションを?」



回復ポーションに頼る感じはしなかったけれど?…解呪…大変そうでしたものね。





─────────





「ルミナス殿、魔導ゲートの使用許可が下りました。

ゲートまでお送りしたいところですが…義父上の代理として城に残らねばなりません。ご無礼をお許しいただきたい」


「ローウェン殿、お気になさらず。辺境伯軍の兵士が“銀色の器”さえ運んでくれれば十分だ」


「では、お気を付けて」



お2人は握手をして別れ…ルミナス様は魔導ゲートを使用し、帝都へと戻られました。






「やっと…少し落ち着けるな」


「本当ね。異常な飛龍襲来の原因を解決できたし、魔物の森も…弱体化に成功したわ」


「…いや…うん。まぁ、それは…そうだな」



フェルナンド様は、まだスッキリしないことが?



「任された役目は…務め上げたわよね?」


「イシス、十分過ぎるよ。ここから先は、帝国とバイセル王国との外交問題にも関わってくる。もう私たちの手は離れた。

ガーラント辺境伯とローウェン殿には…苦しい結果になってしまったが…」


「あ…イシス様!」



若い騎士が、私を見つけて駆け寄って来る。



「失礼いたします。大魔術師ルミナス様より、お手紙をお預かりいたしました!」


「お手紙?…私に…?」


「はい!イシス様に、必ずお手渡しするようにと申されました!」


「そうなの?ありがとう。ご苦労様でした」



ん?今、フェルナンド様が舌打ちしたような…?



『…ったく…やっといなくなって落ち着けると思ったのに…手紙とか寄越すなっ!』



小さく呟いているつもりみたいだけれど、丸聞こえだわ。2人は相当相性が悪いようね。


そんなフェルナンド様を横目に…私は手紙を読んだ。



「………………」


「どうした?あの男、手紙におかしなことを書いているのか?」


「フェル…違うわ」



“瘴気溜まり”を…浄化してくれた。



「…あ、だから…ポーションを使ったの?」



ちょっと変わった人だったけれど…ルミナス様には感謝しなければ。ありがとうございます。




────────




ランチェスター侯爵家を出る時、必ず辺境の地を救うとお約束した。


最初は『フェルナンド様を守るのだ!』

と、思っていたけれど…この地が帝国を長く守り続けてきたことや、その大変さを知った今では…辺境伯様やローウェン様、辺境伯軍の皆様のことも救いたいと、心から思っているわ。


そんな中でも、やっぱりフェルナンド様が1番大切。

私にとってかけがえのない人…離れられない愛しい人だと…とても強く感じる。


3ヶ月の婚約期間のうち、すでに1ヶ月以上をこの辺境の地で過ごしてきたけれど…。




結婚って、どこでするのかな?








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