表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
捨てられ令嬢は、異能の眼を持つ魔術師になる。私、溺愛されているみたいですよ?  作者: miy


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

65/100

53話



「本当に…皆様方にはご迷惑をお掛けした」



辺境伯様とローウェン様は、揃って私たちに頭を下げる。



「これで終わりではなく…まだ、話には続きがあります。辺境伯、聞く覚悟はできていらっしゃいますか?」


「……はい……」


「呪いですが…簡潔に言うと、銀色の器には飛龍を呼ぶ呪い、器の中身には子殺しの呪いがかかっていました」


「……な……こ、子殺し…?!…だと…」


「『飛龍を呼ぶ』とは、生物を狂わせ誘い込むこと。あの場所…この地にかけられた呪いです。

『子殺し』とは、対象者の子供を呪い殺すこと。辺境伯、あなたにかけられた呪いです。


つまり…この城を飛龍に襲わせ、あなたの跡継ぎを()()()にするという呪いだ」



ルミナス様!そこは言い方があるでしょう?!



「ま…まさか、そんな…やはり…私のせいなのかっ…」



辺境伯様の顔は完全に血の気を失っていた。



「…嘘だ、嘘だっ!!…あぁ…アレン!…シルフィ!…わあぁぁ!……すまない、すまない…ローウェン!」



辺境伯様が狂ったように子供たちの名前を何度も泣きながら呼ぶ。

ローウェン様が抱きかかえてもその叫びは止まない…。



フェルナンド様は俯いて目を閉じ、黙っていた。






こんな時でも変らないのが…『2重の呪いで死にかけた』…と、仏頂面のルミナス様。

確かに、死にかけたなら機嫌が悪くなっても仕方はないけれど…もう少し周りを見てください。



「イシス嬢、中身は何だった?」


「え…中身?…ルミナス様は見たのでは…?」


「器の中は、真っ黒な…強い…濃い呪いの邪気だけだった。何か()()が入っていた形跡はなかったよ。

イシス嬢が中身を知っているのなら、最初は中身があったが…今はない。


要するに、子殺しの呪いは本懐を遂げたということだ」



それは…辺境伯様のお2人の子供が、呪いにより命を喪ったという意味に他ならない。



「器の中に入っていたのは、赤い飛龍の“胎児”だと思います」



器の中身が空だったのならば、私が()()のは胎児の念?ということになる。


胎児は飛龍を呼び込むための道具にされたのだと…そう思ってはいた。それがまさか、子殺しの呪いだったなんて。



「“胎児”か。子殺しの呪いの媒体としては、最も強いとされるものだな。そこにも龍を使うとは…凄い執念を感じる。一体、術者はどんなヤツだよ」



本当に…犯人はどのような人物なの。

辺境伯夫人を愛していたのに…その愛する人が生んだ子供を呪うだなんて。



辺境伯様は叫ばなくなったものの、まだ嗚咽を漏らしている。とても見ていられない…。


私たちはローウェン様にご挨拶をして、執務室をそっと出た。





──────────





「…あれ?イシス…おやすみのキスは?」



私は、ベットでフェルナンド様の胸にキュッとしがみついていた。



「……………」



私が黙っていると、フェルナンド様は上掛けを肩まで引き上げて…ポンポン…と、軽く私の背中をたたいてくれる。



「…ずっと…このままでも…私はいいよ…」


「…ずっと?…」


「離れないでいてくれたら…いい」


「キスできなくても?」


「…したい…」


「正直」


「君には…嘘をつけない。キスしていい?」



私はしがみついていた胸から離れる。

フェルナンド様はチュッと啄むように軽く口づけると、優しく髪を撫でてくれた。



「どうした?」



瞳は濃いブルーなのに…あったかくて慈しむような眼差し…。



「…ん…飛龍の赤ちゃんのこと。討伐された母龍のお腹から、まだ生きているのに取り出されて…可哀想だった。

しかも…子殺しの呪いに使われていただなんて…」


「それは、記憶…か…」


「うん…視えちゃったから。強い念があったのかもって」


「…そうか…苦しかったな…」


「…うん…」



フェルナンド様が肩をそっと撫で、トントンしてくれる。

私の中に溜まっている嫌な気持ちが少し軽くなった。



辺境伯様は…大丈夫なのかな。









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ