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捨てられ令嬢は、異能の眼を持つ魔術師になる。私、溺愛されているみたいですよ?  作者: miy


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47話



私は…上半身を起こしたフェルナンド様の首に両腕を絡ませて、口づけを強請った。


優しく触れる唇はあたたかい。もうそれだけで…うれしくなる。



「…んっ…、…足りないの。…もっと…」


「もっと?…じゃあ、遠慮なく…」



フェルナンド様はグイッと私の腰を強く引き寄せると、角度を変えながら…何度も…深く甘く口づけた。



「……ん、…んんっ……ぁ……」



フェルナンド様をいっぱい感じたくて…息苦しさに耐え…夢中で縋り付く。





…チュッ…とリップ音がして、唇が離れる。



「ポーッとして…可愛い…イシス」



唾液で濡れた私の唇の端を…親指でそっと拭うと、涙の跡にも口づけてくれた。


途中、フェルナンド様の熱い舌が…私の口腔内を暴れ回っていた気もする…気持ちよくてあまり覚えていない。


へニャッとフェルナンド様の胸に倒れ込む。



「…ごめん…やっぱりやり過ぎた?イシスが煽るから…止められなくて…」



今度は、フェルナンド様が口移しで私に水を飲ませてくれた。




──────────




「もう…本当に平気?」


「平気だ。イシスも大丈夫か?」


「…だ、大丈夫よ…」



バリアに囲まれた木の根元で、ピッタリと引っ付く私たち。ここからどうしようかな。



…うーん…

あの黒い()()は、どこから襲ってきた?

フェルナンド様が他の魔力による影響をこれほど強く受けることなんて、そうはないはず。

でも、私は無事だったから…やっぱり魔力量の差…?


いいえ、決めつけるのは早い。まだ分からない。



「…入江を覗いた時…?…具合が悪くなったのかな?」


「…そうかもしれない…」


「どんな感じだったの?」



フェルナンド様は、ジッと考えている。



「どうなったのか…一瞬で…はっきりとは覚えていないな。意識が、どこかに引っ張られるような?悪い夢の中にいるようで苦しかった気がする…が…」


「魔力による影響ではないみたいね。何かの術に…意識を絡め取られた?」



術だとしたら?原因は入江にあるってこと?



「フェル…あなたを()()わ」



    ♢


入江の内側でグルグルと黒い“何か”が渦を巻いていて…海へ向かってドス黒い触手を伸ばしている。


触手がフェルナンド様を見つけて、グルリと囲って真っ黒に染めてしまった。


フェルナンド様の頭の中は、嫌なことで埋め尽くされている。


戦場、人混み、擦り寄る女性…フェルナンド様は狂ったように大暴れする。


しばらくすると…真っ黒な夢の中が、霧が晴れていくみたいにパアッと明るくなった。


    ♢



「一体…入江に何があるというの?」



黒くて禍々しい()()



「…あれを…バイセル王国が?…」



場所からして、バイセル王国の置土産と考えて先ず間違いはない。



「フェルを苦しめて…許さないわ…」


「…イ…イシス、…ちょっと…」



私の魔力は轟々と怒りに燃え上がっている。

若干…フェルナンド様が引くくらいに。



「フェル…少しだけ側を離れる。すぐに戻って来るから、待ってて!」


「駄目だ!」


「入江の中を確かめたいの。私、絶対に無理しない。遠い場所から、この眼を最大限に使って()()だけにするわ」



そう言っても、フェルナンド様は私の手を握って離さない。



「イシス、もう一度入江を確認する必要があるのか?」


「えぇ。フェル…私なら大丈夫だから、手を離して」


「離さない。諦めろ、どこだろうと一緒に行く」


「…っ…もう…」


「どの辺りから()()つもりなんだ?」



…確か…

フェルナンド様の記憶では、禍々しい触手のような黒い気が…海へ向かって発せられていた。海側から入江を()()のは困難だろうし危険を伴うと思う。



「入江には近付くべきではないわ。離れた場所で…高い木の上とか?陸地からでも入江の内側が覗けるところかな」


「高い…とすると、あれかな…」


「あ、そうね…あれだわ」







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