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捨てられ令嬢は、異能の眼を持つ魔術師になる。私、溺愛されているみたいですよ?  作者: miy


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46話



魔物の森の状態は、かなり落ち着いてきた。



瘴気は聖魔力による浄化をすることでその力を完全に失うため、帝国神殿に聖女派遣の申し入れをしてみるとローウェン様が話していたわ。



来てくれるといいのだけれど。



私は、城の最上階から海を眺めることを…朝の日課にしていた。


こうしているだけでも、飛龍襲来のようなインパクトの強い出来事は感じ取れるの。

この辺境の地で、大きく混乱を招く元となっているのはやはり飛龍。だから念のため…。



「今日、飛龍は来ないわね」



ならば…海のほうまで行ってみることにする。




─────────




「場所は?」


「辺境伯様に、印をつけてもらったわ…」



私は地図を取り出し、バイセル王国の船が停泊していたところに付けたバツ印を指差す。



「…もう少し西側かな?…」



フェルナンド様が一緒でよかった。



海へ向かおうと簡単に考えていたけれど、距離もあるし…城では船を使っていないため、入江に向かう道も整備はされず草ボーボー。

躓いて転んだら…草に埋もれて行方不明になりそう。


ちょっとした探検みたいだわ。


そういえば…5年前は歩きやすいように一部草を刈り取り、木を切って、そこが絨毯を敷いた道みたいになっていた…と、ジェンキンス様から聞いていた気がする。



「イシス、手をこちらへ」


「…あ…ありがとう…」



腰の高さまで伸びた草をかき分け、歩くのに苦労している私を見兼ねてか…フェルナンド様が手を引いて誘導してくれる。



辺境伯夫人の話を聞いたからではないけれど…私の婚約者…最高に優しくて強くてカッコよくて、こんな人に愛されているなんて信じられない。いいのかな?


昔、1人でどうやって生きていたのか…思い出せないわ。

うん。今が幸せ。



「ここで…間違いないだろう」


「…わぁ…」



断崖絶壁とまではいかないけれど、かなりの高さがある岸壁に囲まれている大きな入江。



「フェル?…顔色が悪い…」



私もあまりの高さに、海を覗いてヒヤッとした気持ちにはなったけれど…フェルナンド様の様子はそれとは違う。



「…すまない、少し…気分が…」



咄嗟に宝石眼で()()と、黒いぼんやりした何かがフェルナンド様に絡まっている!



何これっ!これが原因?!



黒いモヤを瞳でしっかりと捉え“無力化(ディスペル)”すると、眼が反応し激しくスパークした。


すぐにフェルナンド様に保護と状態異常回復の術をかけ、ダッシュで入江から離れる。休めそうな木の根元に座らせ、その一帯にバリアを張った。



目を閉じて額に少し汗をかき、短い間隔で急くように呼吸をするフェルナンド様…とても苦しそう。


身体を寝かせたほうがいいのかな?


私は膝枕をし…服を少し緩めたりして様子を見る。



私まで心臓を握り潰されたみたいに辛い。凄く不安。

もし…この人に何かあったら…どうする?!


嫌だ、怖い。絶対に失いたくない。






「…う…」



…少し顔色がよくなってきた…?

ハンカチで額の汗をそっと拭う。長い前髪をよける私の手を、フェルナンド様が強く掴んだ。



「…フェル…?」


「その声は、イシス…か…?……あぁ……」



濃いブルーの瞳が焦点を合わせるように…私を探している。



「大丈夫?私よ?」


「…ん…、…水…を…」



私はマジックバックから水筒を取り出し、冷たい水を口に含む。

フェルナンド様の頭を膝からそっと持ち上げて…口移しでゆっくりと水を飲ませた。


ゴクリ…と、喉を鳴らす音は…彼が生きていることを感じさせてくれる。





よかった。顔や唇の色が、本来の色に戻ってきた。



「…イシス…心配するな、もう大丈夫だ」



そう言って手を伸ばし、私の目尻に触れる。

濡れている感覚…気付かないうちに泣いていたみたい。



微笑むフェルナンド様には、ちゃんと生気が宿っている。



「本当?…じゃあ、いっぱいキスして…」


「え?…い…いっぱい…?…」










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