閑話(フェルナンドSide)
私がイシスに『愛している』と伝えてからも、特に関係が変わることはなかった。
最初は…同じ部屋で過ごしたり、ベッドで一緒に寝ることに戸惑いや恥じらいもあったが、今では新鮮で楽しいようだ。
何か変わって欲しいけれど…変らないのがイシスのような気もする。
とはいいつつも、クリストファー殿下から手紙が届いて、実は少し焦っている…。
『王都でイシス嬢争奪戦が始まるぞ』などと、もの凄く嫌なことを書いてきたからだ。
殿下は呪いの手紙をわざわざ送ってきたのか?と、破り捨てそうになった。
イシスが社交界で有名になっているのは事実だし、飛龍討伐を成功させたことで、その高い能力までも絶賛され始めていることは分かる。
でも、誰にも渡さない。絶対に。
そのためには、イシスからの愛が欲しい。
『欲しい』と言って貰えるものではないと分かってはいるが、彼女の1番近くにいるのが私であることを許して貰いたい…心からそう願っていた。
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「フェルを…愛してる…」
イシスが二度も愛してると…私に言った。
夢かと思った。
とにかくうれしくて、この世界がいつもの3倍輝いていると感じた。
今まで生きてきて、最も幸せな瞬間だったかもしれない。
もうイシスが愛しすぎて、顔中いっぱいにキスをした。止められなかった。
すぐに結婚を申し込み、受けてもらえたことで私の気持ちはさらに舞い上がり……唇にキスをした……。
柔らかくてあったかい…最高の唇だった。
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恥ずかしい話だが、イシスとの触れ合いやキスは…私にとって全て初めてのものだ。
勿論、恋人との付き合い方や…閨の教育などはちゃんと学んでいる。ただ、実践する場がなかった。
20歳のころには結婚相手を求めて見合いをしていたが、どうしてもオーラが気になり…何人も断っていた。
その時には、誰かとのキスや…それ以上などは…到底無理な話だと、もう諦めていたと思う。
イシスのように美しいオーラを持つ令嬢を見たのは初めてで、本当に衝撃的だった。
その愛らしい姿や言動…彼女の全てに、私は心を奪われ始める。
最初は想像もしていなかったが…触れたい、抱き締めたい、キスしたい…そんな抑えられない男の衝動が疼き出すのに時間はかからなかった。
この年齢になるまで、恋人と過ごした実体験がないからか…溜め込んでいた甘い感情というものが全てイシスに注がれているのだと思う。
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父上にはすぐに結婚の手続きを頼んだ。
皇帝陛下は渋々結婚を認めてくれたという。
渋々とは…イシスを誰かと結婚させる予定でも立てていたのか?と勘ぐってしまう。
それでも、今この辺境の地にいる私の希望は最大限考慮する…ということなのだろう。
婚約期間は3ヶ月必要だと書かれていた。
3ヶ月だと?!
最初は意味がわからなかったが…どうやら…私は自分が結婚を諦めていたせいで、世間の結婚事情に疎かったようだ。
要するに、イシスが身籠っていないことを明白にするための期間として…3ヶ月が必要なのだ。
失礼だろう。
というか、過去も未来も…私の子以外を身籠らせるわけがあるか!
非常に腹立たしい。
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婚約してからのイシスは、私にどう接したらいいのか分からない様子…過剰にドキドキして困っているみたいだ。
可愛いな。
イシスが瘴気溜まりを封じたお陰で、襲ってくる魔物の数はかなり減り、そこまで強い魔物は滅多に現れなくなった。
辺境伯軍なら十分に討伐できるレベルの魔物ばかりだ。
だから…夜の見張りも、私たちが担当しなくてもよくなった。
本当に…私のイシスは凄いな。
スヤスヤと寝息を立てる可愛い寝顔を見ていると、とても幸せな気持ちになる。
「おやすみ…イシス」
イシスのプルンとした唇に…そっと自分の唇を重ねる。
…後…もう1回だけ。
…チュッ…




