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捨てられ令嬢は、異能の眼を持つ魔術師になる。私、溺愛されているみたいですよ?  作者: miy


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5話



「雇っていただけるんですか!」



衣料品店、雑貨店に続いて…3軒目のレストランで、やっと働かせて貰えることになった。



「あぁ。皿洗いが1人辞めちまってねぇ、誰でもできる簡単な仕事だよ。そんなに給料はよくないけど、いいかい?」


「はい!私は“イシス”です。女将さん、よろしくお願いします!」




───────




こうして、私はレストラン『シャンテ』で働き出した。

週に3日、伯爵家に全くバレることなく…もう1年以上お世話になっている。



女将さんのライラさん、旦那さんのロイドさん、イケメンな息子のサイラスさん、美人で明るい娘のクリステルさん、皆さんとっても優しいです!


まぁ…伯爵家の者たちと比較したら、どこを見てもいい人しかいないんですけどね。



しかも、お昼の賄い付きなんて…もう最高。



厨房の隅っこで、ロイドさんやサイラスさんの調理姿を見ながら…いつもたっぷり美味しくいただいてます。


私の栄養状態、かなり改善されました!

女性として気になる“お胸”は…クリステルさんの3分の1くらいしかないのでまだまだ寂しいですけど…。






「いらっしゃいませー」



忙しいランチタイム、クリステルさんの美声が店内に響く。



私が一生懸命に洗い物をしていると…ふと…背中に視線を感じた。気になって振り返る。

カウンター席に座る男性が、こちらを見ていた気がするけれど…勘違いかもしれない。



洗い場は、カウンター席から見ようと思えば見える。ただ、見えても私の後ろ姿のみ。


クリステルさんのようなボン・キュッ・ボンなら後ろ姿も魅力的だと思うけれど、私のような痩せっぽち女の後ろ姿には哀愁しか漂ってはいない…。


うん、間違いなく気のせいだわ。




──────────




「では、失礼します」



はぁ…今日も忙しかったぁ…。



初めて洗い場で大量のお皿やカップを洗った日、指がフヤケてシワシワになっていたことを思い出す。


女将さんには手袋をしろと言われたけど…細過ぎる私の指には手袋がブカブカで、上手く扱えずにお皿を割ってしまった。

当然、弁償しなければならない。つまり、稼いだお金が減るのだ…悲し過ぎる。


それからは、魔術で手指を保護して素手で洗っているから何の問題もない。





店の裏口から出て、首や肩を回しながら数歩歩いたところで…声をかけられた。



「ちょっと…いいかな?」


「…え?…私…?」



あれ、この人…カウンター席にいた男性では?

私は訝しげに首を傾げ…男性を見る。



「いや…怪しい者ではない。この前、ここで私とぶつかっただろう?覚えていないか?」



裏口の前で、私とぶつかった…?



「あっ!!…あの時の…?」


「よかった…覚えていてくれたか…」


「すみません。急いでいたもので、申し訳ありませんでした。それで、私に…何か?」



まさか、怪我をしたから慰謝料くれとか?!どうしよう!!



「立ち話ではちょっと…。時間があるなら、広場のベンチにでも座って話さないか?」



広場なら人目もあるから安心ね。


それに、この男性…言葉遣いも丁寧で、身なりもちゃんとしている。

何より常識がありそうだし、慰謝料の線は薄いと見た。



「少しなら…大丈夫ですよ」









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