41話(39話の続き)
「もう…私は…フェルを守るためにここにいるのよ」
腰に回されたフェルナンド様の腕の力が強くなる。
─チュッ─
ん?首筋に柔らかな唇の感触が…!
─チュッ─
肩にも…?!
「ひゃっ!」
「…愛してる…イシス」
何となく愛されてるのかも?って感じてはいたけれど、耳元でそれを囁くなんて…反則!
ドクンッ!と、私の胸がいつもの3倍高鳴る。カーッと顔が火照り…耳まで熱くなっていくのが分かる。
─チュッ─
「あっ!」
耳の後ろにまで…もう…恥ずかしくてフェルナンド様の顔が見れない。両手で顔を覆う。
「イシス?」
「フェル…いつもと…何か違う」
「……ごめん……怖かった…?」
スッと腕が離れ、私の背中から温もりが消えていく。
あ、離れちゃう!
ふり向いてフェルナンド様の腰に思い切りしがみついたら、勢い余って…フェルナンド様をソファーに押し倒した状態になってしまった。
「…ヤダ…離れないで…」
「…っ…イシス…」
「…離れたら…嫌なの」
フェルナンド様が…ボソッと何か呟いた。
“クッ…拷問…”
腰に抱き着いたままジッとしていると、フェルナンド様の手が優しく私の髪を撫でた。
「分かった、もう離れないよ。そうだなぁ…今日からは同じ部屋で過ごそう。嫌だと言っても離れないからな」
フェルナンド様は抱き着く私をそのままに…ムクリと起き上がると、いつもみたいに優しく抱き締めてくれた。
─────────
ベッドで…私はフェルナンド様と並んでいる。
どうしてこうなったのかな…?
同じ部屋で過ごそうってことは常に一緒に行動するってことで…今は…フェルナンド様のお部屋のベッドが大きいから、ここにいる。
「今日は、何があったの?」
「何って…?…視ていいよ?」
感情を消した瞳で私を見つめてくるけど…うーん…そうじゃないの。
「フフッ…昨夜からイシスのオーラがよく見えるようになった。やっぱり、君も心に蓋をしていたのかな?それとも…私には心を許してくれた?」
「誤魔化さないで、ちゃんと話して」
フェルナンド様は困ったように微笑む。
─────────
「辺境伯令嬢には、婚約者がいたんだ…結婚間近のね」
「…だけど…フェルと結婚するって話…」
「飛龍襲来が全てを変えた。貴族社会では結婚相手が変わるなんて、よくある話だが…」
そう知ってはいても…実際の話を聞くと…とても辛い気持ちになる。
最終的に…婚約者だったローウェン様がご令嬢と婚姻契約を結び、後継者となったらしい。
「意識のない状態のご令嬢を見て…泣いていた。
飛龍襲来の2日前から、魔物討伐で2人は別行動をしていたそうだ。
ローウェン殿は…突然、愛する人と話すことも触れ合うことも…できなくなった」
フェルナンド様はそう話しながら、暗い瞳をしていた。
飛龍討伐のために、私が1人で飛び出して行ったことを考えているのかもしれない。
離れないでと言いながら…私が先に離れてしまっていたのだと気付く。
「ローウェン殿は、3体の飛龍襲来の日から…ずっと後悔に苛まれ苦しんでいたんだ。
何があっても側にいるべきだった…もっと愛を伝えたかった…なぜそうしなかったのかと。
聞いていて…とても辛かったよ。今日、私も一瞬そんな経験をしたからね」
「……フェル……」
「私はイシスを愛している」
─真っ直ぐで…とても力強い言葉─
私を想う気持ちがオーラを纏って伝わってくる。
これでもか…と、私の心の中に一挙に押し寄せてグイグイと迫ってきた。
「私は誰よりも君が大切だよ。今日のような思いは二度としたくない。
イシスを愛しているってこと…ちゃんと伝わってる?」
…えぇ…
フェルナンド様の愛のオーラはとても熱いわ。




