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捨てられ令嬢は、異能の眼を持つ魔術師になる。私、溺愛されているみたいですよ?  作者: miy


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25話



フェルナンド様にお願いして、タチアナ様のことはしばらく私に任せて欲しいと…取り急ぎ殿下にお伝えしていただきました。



タチアナ様のドレスは高級な布地で仕立てられており、ワインはしっかりと繊維の奥まで染み込んでしまっていました。


残念過ぎる。


どうとでもなる…んだろうけれど、問題はその“どうとでも”具合よね。



「タチアナ様、このワインの染みを今すぐ取り去ることはできそうにありませんわ」


「…えぇ…」


「でも、染みの色を変えることはできると思うのです」


「え?」



またキョトンとするタチアナ様。本当に可愛らしい方ね。



「ですが…この染みがなくなれば、チェルシー嬢の愚行もなかったことにされるかも…それでもよろしいですか?

この一連の出来事は2人の秘密、ということになるのです」


「は、はい!大丈夫ですわ。秘密です」



私はワインの染み部分にそっと手を当て、呪文を詠唱する。

元のドレスの色に合わせるように、少しずつ変化をさせていった。


私、色を変えることにはご縁があるのかも?お役に立ててよかったわ。



「…すごい…こんなことって…魔術…?」


「できましたわ。ついでに、ドレス全体に保護の術をかけておきました」


「イシス様、本当にありがとうございます!これでパーティーへ戻れますわ」



パッと立ち上がり、今すぐにでも控え室から飛び出て行ってしまいそうなタチアナ様を…私は笑顔で引き止めました。



「タチアナ様、今日は…タチアナ様が1番美しく幸せな女性であって欲しい…私はそう思っているのです」


「…イシス様…」


「だから、お顔もちゃんと綺麗にしましょうね?」


「あっ!!」



今気付いたの?涙でグッチャグチャよ。


もう…可愛い妹ってこんな感じなのかな?



フェルナンド様も、私のことをこんな風にあたたかい目で見守ってきてくださったのね…きっと。




─────────




皇帝陛下がパーティーの終宴を告げる。



─パチパチパチパチ─



皇帝陛下と皇族方が会場から出るまで、参加者たちは拍手で見送った。


これにて、第三皇子殿下の婚約披露は全て滞りなく終わりました。本当によかったわ。

私の初めてのパーティーも社交界デビューも…終了ね。


あの後、タチアナ様のお顔は魔術でしっかり整えさせていただいたので…最後までパーティーの主役として殿下のお隣で輝いていらっしゃいました。


私も大満足です。


チェルシーとその仲間たち?は、タチアナ様のドレスが元通りになっていてさぞ驚いたことでしょうね…ふふっ。




─────────




「…イシス…」


「……ん……」



あれ?帰りの馬車に揺られて眠ってしまったみたい。

気付けば、フェルナンド様に抱きかかえられて部屋の前まで来ていた。


疲れてしまったから、もうこのままベッドまで運んで欲しいな…そう思って、フェルナンド様の胸元に頬を擦り寄せる…あぁ眠たい。



「…イ…イシス…?…疲れているだろうけど、ドレスを脱いで湯浴みしたほうがいい」



あ…そっかぁ、お気に入りのドレスがシワクチャになってしまうものね。



「…ん…ありがと…フェル兄様…優しくって大好き」



ミリアムさんが部屋の扉を開けてくれたみたいで、フェルナンド様は私をベッドに降ろした。



「メイド長…イシスを頼んだよ」


「畏まりました」



この時の私は知らなかった…フェルナンド様のお顔が茹でダコみたいに真っ赤になっていたことを。







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