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捨てられ令嬢は、異能の眼を持つ魔術師になる。私、溺愛されているみたいですよ?  作者: miy


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24話



私は控え室を出て、化粧室へと向かっていた。


長い廊下の角へと差し掛かる…。





「キャッ!」



え?また?



「わざとじゃないんですぅ、ごめんなさぁい」


「まぁ!まだパーティーは続くのに…これじゃあ大変だわぁ。可哀想!」


「殿下に泣き付けばよろしいのでは?」


「そうですわよねぇ、婚約者ですもの…アハハッ」



クスクス…ケラケラ…と数人の令嬢たちが嘲笑う声。


殿下?婚約者?って…まさか…



─タチアナ様?─



廊下の角を曲がった先には…チェルシーと3人の見知らぬ令嬢たちが、タチアナ様と向き合っていた。


チェルシーの手には空になったグラス、そして…タチアナ様の淡いゴールドのドレスには赤ワインの染み。



…これって…

カイラ様に聞いた『パーティーで起きる悪質な嫌がらせ』というアレでは?



「…イシス様っ…」



目にうっすらと涙を浮かべたタチアナ様が私の名を呼ぶ。

チェルシーと令嬢たちは一斉にこちらを見て…ギョッとしていた。


まさか人が通るとは…思っていなかったようね。


とにかく、目立たず騒ぎ立てないこと。それが1番大事…って、カイラ様が仰ってた。

私は大きく息を吸うと、ゆっくりタチアナ様へと近付いて行った。



─コツ、コツ、コツ、コツ─



規則正しいヒール音だけが広い廊下に響く。


チェルシーと令嬢たちは、目を見開いたままじっと黙っていた。

なぜなら…私が彼女たちの目をずーっと睨み捉えているから。



()()は…確か、魔眼の能力とかいわれていたかしら?




“蛇に睨まれた蛙”

その状態で、ピーチクパーチクと…いえ、ゲコゲコ…?…騒がしく話せるものなら…やってごらんなさい?





『タチアナ様、どうか毅然とした態度で。大丈夫です、私が側についていますわ』



タチアナ様に小声でそうお伝えしてから、チェルシーと令嬢たちを威圧から解放する。



「わ、私は大丈夫ですわ。チェルシー様こそお怪我はなくって?お足元にはお気をつけくださいませね。


では…皆様…ごきげんよう」



タチアナ様は美しいカーテシーでご挨拶をなさいました。




チェルシーと令嬢たちは胸を押さえ、荒い呼吸を繰り返して青ざめている。


弱い者イジメしかできないような彼女たちには、軽めの威圧でもキツかったかしら?

完全に戦意喪失、白旗ね…よし、タチアナ様の圧勝!



「タチアナ様、お手をどうぞ」



私はタチアナ様の手を取り、近くの控え室へとお連れした。




────────




…グスッ…グスッ…


涙が止まらない…お可哀そうなタチアナ様。

私だって、このお気に入りのドレスに何かあったら号泣だわ。



「グスッ…イ…イシス様…私、どうしたら…ヒック…いいのですか…」



フェルナンド様を少しそっとしておくために控え室から出てきたのに…どうしましょう…緊急事態発生。


カイラ様は、ドレスの汚れた令嬢をちゃんと最後までケアされたと仰っていたわ…。


私はタチアナ様の両手を優しく握りました。



「先ほどはご立派でしたわ。タチアナ様は、この後どうされたいですか?」


「私は…グスッ…殿下とご一緒に、最後のご挨拶まで頑張りたいです」


「そうなのですね…今日の主役ですものね。わかりました…では、頑張りましょう!」



私が片腕を突き上げてニッコリと笑うと、タチアナ様はキョトンとして…涙が引っ込んでしまったみたい。



「だ、だって…ドレスが、殿下から贈っていただいたドレスがこんなことに…」


「あ…そうでしたわね。でも、タチアナ様には私がついていますわ、ご心配なく」


「…え?…」




ドレスとか、多分どうとでもなるかな?








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