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捨てられ令嬢は、異能の眼を持つ魔術師になる。私、溺愛されているみたいですよ?  作者: miy


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23話



「イシス」



フェルナンド様が私の肩を抱いて、その場を立ち去ろうとする。



「あ、あのぅ!フェルナンド様ぁ!」



突然、甘ったれた声で親しげに名前を呼ばれたフェルナンド様は、ジロリとその声の主…チェルシーを睨んだ。



「…私の名を勝手に呼ぶな…汚らわしい」


「で、でもぉ」


「黙れっ!」


「…ヒッ…!」



フェルナンド様ったら…殺気が出てる?


地獄の底から聞こえてくるみたいなフェルナンド様の声に、チェルシーは縮こまった。


そんなチェルシーを押し退け、バジルが前へと出て来る。



「ご令嬢!私と踊らないか!」



随分とポップな感じのお誘いね。


無理。



「お断りしますわ」


「なっ、何だと?!」


「少し休もう、イシス」


「はい、フェル兄様」



残念兄妹を完全に無視して、私たちはその場を後にした。

これ以上のやり取りは、この喜ばしいパーティーを台無しにするだけだわ。



休憩できる控え室は、パーティー会場の各所に用意してある。

私たちは会場係に声をかけ、一室を使わせていただくことにした。



部屋に入った瞬間、フェルナンド様が後ろから私をギュッと抱き締める。

それはいつもより強い力で…硬い騎士服が柔らかい私のドレスを押しつぶしてしまう。



「…はぁ…」



ため息とともに腕の力を緩めたフェルナンド様は、私の肩にそっとおでこを乗せる。

これは、私のオーラに癒やされるから…と、時々されるお気に入りのポーズ。


きっと、パーティー会場は視たくないオーラで溢れていたのよね。



「お疲れね…フェル兄様。大丈夫?」



身動きできない私が前を向いたまま声をかければ、また少し腕の力が強くなる。


あぁ…大丈夫じゃなさそう。





「…………い。…………や……」


「……フェル兄様?……」


「…イシス…ごめん。嫌な思いさせた」



どうしたのかしら…子供みたいな話し方。


大変だわ、パーティーが久しぶり過ぎてフェルナンド様が疲れておかしくなっているかも?

私は腰にガッチリと回された腕をやんわりと解き、その手を引いてソファーへと導いた。



「……あ……」



ソファーに座らせたフェルナンド様を上から見下ろした私は、濃いブルーの瞳から涙が零れ落ちていることに気が付いた。



─まさか、私のために泣いているの?─



すぐ側にいた私のオーラから、負の感情を強く読み取ってしまったのかな。

家族を愛する心底優しい人だから…私が辛い気持ちでいると思ったのね。



でも…違うの、フェルナンド様。



あの残念な兄妹に“会った”のは今日が初めてで…だから、血は繋がっているけれど見知らぬ他人なのよ。


トラウマになりそうなエピソードすら思い付かないわ。


えっと、そうね…貴族にも失礼で馬鹿な人っているのね?

感想は以上よ。



さっきは、周囲の人たちのことを()()いたから…情けないやら気持ち悪いやらで、とても嫌な気持ちにはなったわ。


オーラに出てた?

でも、それだけよ?図太くてごめんね?



「…泣かないで…」



泣いた顔すら美しいなんて…反則…!



私はフェルナンド様の少し長めの前髪を撫で、チュッとつむじ辺りに口づけた。

それから頬に残る涙を指でそっと拭い、濡れた目元にも優しく口づけた。




私を慰める時、いつもフェルナンド様がそうしてくださるから…同じように…。







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