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くさなぎときつねの思い出ごはん。  作者: ちはやれいめい
ざしきわらしの章《しょう》
21/22

19 かえるばしょのないざしきわらし

 夏休なつやすみもわりにさしかかって、すずしい日がふえてきた。

 夕方ゆうがた営業えいぎょうがはじまるまえに、わたし玄関げんかんでリードをにぎって雪路ゆきじたちをよぶ。


雪路ゆきじ小町こまち散歩行さんぽいくよ」

「まちかねたぞマコト。はようせい。はらをすかせてカレーをおいしくいただくぞ!」

「さんぽなのだ!」

「そんなせかさなくても、ちゃんとくってば」

「しゅくだいというのにかかりきりで、ぜんぜんうごいてくれなかったではないか」


わたし学生がくせいなの。いまの時代じだい学生がくせい勉強べんきょうしないといけないの。わかる?」


 現代げんだいというものをおしえているのに、雪路ゆきじはふまんげ。


「マコト。なかつくえにかじりつくより大事だいじなことがあるだろう。おもてにろ」

「もう。いいはなしっぽくってるけど散歩さんぽきたいだけでしょ」

「わがはいと雪路ゆきじだけであるいたらホケンジョというのにつかまるとったのはマコトであろう」


 雪路ゆきじ小町こまちがうちにむようになってはや半月はんつき

 二人ふたりは「われわれは何年なんねんもこのいえんでいますが?」というかおをしてくらしている。


 なぜか、二人ふたりともねるときはわたしのふとんのどまんなかをりたがる。

 ダンボールベッドはいちども使つかわれることがないまま、しげんゴミになった。

 あやかしはワガママだね。



 雪路ゆきじにはリードをつけて、小町こまちはリードなしでわたしのよこにくっついてあるく。


 すれちがうひとたちが「わんことにゃんこの散歩さんぽだ!」「仲良なかよしねえ」「かわいいわねぇ」とわらってをふっていく。


 長谷寺はせでら手前てまえあたりでぐるっとまわって、みせもどる。 

 


 信号しんごうをわたって、かどがったときだった。

 ちいさなおんながひとり、うずくまっていた。


 まだようちえんくらいかな?

 むらさきいろ上品じょうひん着物きものている。


 このあたりでかけたことのないだから、旅行中りょこうちゅうにかぞくとはぐれたのかな。


「ねえ、どうしたの? おうちのひと、いっしょじゃないの?」


 しゃがんでめせんをわせてきいてみる。

 いていたおんなが、かおをあげた。


「ユカリのおうち、もうない。どこも、かえれないの」

「あなたはユカリちゃんっていうのね。かえれないって、どういうこと?」


 雪路は女の子のすそをくん、とかいではなをならす。


「マコト。この(わらわ)はあやかしものだ。いえにつくあやかし。人間にんげんが『ざしきわらし』とよぶもの」

「ざしき、わらし? ユカリちゃんはひとじゃないの?」

「そうだ。マコトにしかえておらん。だから、はたからみたら、マコトはなにもないところにはなしかけているへんなひとだ」

「え……」


 ふりかえると、道行みちゆひとたちがちらちらこっちをていた。



 たしかに、ふつうなら、おさながひとりぼっちなら、どうしたのかなってこえかけるよね。


 だれもユカリちゃんをていない時点じてんでなにかへんだってづくべきだった。



 ここではなしをきくのはすごーくまずい。


「ユカリちゃん、ついてきて。うちではなしをきくよ」


 をさしだすと、ユカリちゃんはじっとわたし見上みあげて、をにぎりかえした。


 たしかにここにいて、ふれたかんかくもあるのに、だれにもえていないなんて。


 あやかしって、ふしぎ。

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