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くさなぎときつねの思い出ごはん。  作者: ちはやれいめい
ねこまたの章《しょう》
17/22

16 あてなるもの

「あーあ、アイスクリンはちがうのかぁ……。じゃあなんなのさー」


 一人反省会ひとりはんせいかいをしていたら、みせほうからかあさんのこえがした。


「マコトー。そろそろ営業えいぎょうはじめるから、手伝てつだってー」

「はぁーーーい! 雪路ゆきじ小町こまちわたしはお仕事しごとしないとだからわるまでここでっててね」

「ぬー。はやくもどってくるのだぞマコト」

「はいはい」


 エプロンをつけて、店先みせさきにのれんをかける。



「こんばんは、マコトさん。もうひらいてるかな?」

「はい! いらっしゃいませ、先生せんせい!」



 じょうれんである、初田(はった)先生ごふうふだ。

 市内しないにある個人病院こじんびょういん院長いんちょうさんで、このあたりのひとはだいたい先生せんせいにお世話せわになっている。


 すごくたかくて、なつでも英国えいこくのジェントルマンみたいなスーツにぼうしだから、とおでも先生せんせいだとわかる。

 先生せんせいおくさんが二人ふたりでおじぎする。


「テーブルせきいてるからどうぞ!」



 ひるくらべると客足きゃくあしはおだやかで、店内てんないはまだほかにおきゃくさんはいない。


「わたしはがわりをおねがいします」

わたし、やき魚定食ざかなていしょくにする」


「はい。がわりとやきざかな、かしこまりました!」


 すぐに伝票でんぴょうきつけてキッチンにわたす。


とうさん。がわりとやき魚定食ざかなていしょく

「お、先生せんせいおくさんだな。いつもありがたいな」


 とうさんは伝票でんぴょうをボードにはり、フライパンをもつ。


 フロアにもどると、いつのにおりてきたのか雪路ゆきじ小町こまち先生せんせいたちのあしもとでじゃれついていた。


 おくさんはネコきらしくて、ニコニコしながら小町こまちのあたまをなでている。


「あー! だめだよ小町こまち! 雪路ゆきじも! かいにもどりなさい! どうぶつだめなおきゃくさんもいるんだから!」

わたし、ワンちゃんもネコちゃんも大好だいすきだよ。雪路ゆきじちゃんと小町こまちちゃんっていうのね。ここでワンちゃんとネコちゃんかいはじめたんだね」

「い、いえ、ええと………」


 雪路ゆきじはともかく、小町こまちはただのおきゃくさんだ。

 うちのじゃないといたいけど、ならなんで名前なまえをつけているの? なんでみせに? ということをせつめいできるがしない。

 とりあえずわらっておこう。えへへ。




「えーと、あ、しろくて、ためたくて、あまいもので明治時代めいじじだいよりまえっていったら、先生せんせいたちはなにおもいうかべます?」



 初田先生はったせんせいたちにおちゃしながらしつもんする。


「おや、しゅくだいですか?」


「え、あ、あー……そんなかんじです……。いくらかんがえてもわからなくて」


中学二年生ちゅうがくにねんせいなら、国語こくご古典こてんますね。こたえはおそらく枕草子(まくらのそうし)でしょう」


「ん……? なんで枕草子まくらのそうしなんです?」




「あてなるもののひとつです。『けず()に、あまづられて、新しき(かなまり)れたる』」


「けずりひに、あまづら……かなまり? どういう意味いみです? わたし、古典こてんはあんまりとくいじゃなくて」


「『上品じょうひんなもの、かきごおりにあまづらというからとったシロップをかけて、金物かなものうつわれたもの』とやくします。平安時代へいあんじだいにさとうなんてありませんから、はちみつやかられるミツがぜいたくひんでした。れいとうがないのでこおりも、貴重きちょうなものです」



 かきごおりは、しろくて、つめたくて、あまい。そして、ぜいたく。



「……もしかして、それかも! 先生せんせい、ありがとう!」

「いえいえ。しゅくだいのお手伝てつだいができたならなによりです」


 先生せんせいおくさんはそろってわらった。  





出典しゅってん 清少納言せいしょうなごん 枕草子まくらのそうし

 あてなるもの けず甘葛入あまづらいれてあたらしきかなまりれたる 

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