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くさなぎときつねの思い出ごはん。  作者: ちはやれいめい
きつねの章《しょう》
12/22

むかしむかし 草凪《くさなぎ》と雪路《ゆきじ》のやくそく

 ── 明治めいじ五年ごねんなつのはじめ ──


 けてまもない時間じかん


 鎌倉かまくらにはすずしいかぜいていた。


 (いおり)がある長谷はせおかしたにはうみえる。

 そらうみもどこまでもあおくすみわたっていて、ているだけでここちがいい。


 オレは、草凪 清継(くさなぎきよつぐ)

 まれたころから長谷(はせ)んでいる。

 ちちのあとをついで、()()()()()()になった。



 ぬぐいをくびにまき、きもののたもとをタスキでうしろにむすぶ。


 にわにはびこるざっそうをぬいていく。

 指先は草の汁ですっかりみどりに染まっている。


 ちちだいまではそれなりに仕事しごとがあったのだが、さいきんるのはせいぜいあまごいや土地とちのおきよめくらいだ。


 まちあるけば洋服ようふくひととすれちがう。

 ハイカラ、というやつか。


 いちにならぶのは、カステイラだの、コーヒーだの、シャレた海外かいがいしな


 あやかし退治たいじだのサムライだの、そういう時代じだいはおわりつつあるのだろう。


 おんみょうじの仕事しごとも、オレのだいでおしまいにするべきかもしれない。


 このくにまれかわるのだから。



 すっかりにわがきれいになったあたりで、すうっとしろいキツネがあらわれた。


「いつからにわのそうじやになったのだ、草凪くさなぎ。あやかしたいじはしないのか?」

「よう、雪路ゆきじ。またメシをいにきたのか?」

「そうだ。あのかおりがよくてうまいやつをたのむ」

「はいはい」



 まえに、この雪路ゆきじというキツネにカレーという西洋料理せいようりょうりつくってやった。


 そうとうったらしく、まぐれにあらわれては料理りょうりをねだる。


 ひとりでうのも味気あじけないから、雪路ゆきじといっしょにべるのがつねだ。


 ボートルにしお小麦こむぎに、カレエのこなをいれる。

 カエルをショウガとニンニクでいためて、昆布こんぶのだしでのばす。

 うみこうのひとはこういうものをべているというのだからふしぎなものだ。



「ほら、できたぞ雪路ゆきじ今日きょう天気てんきがいいからえんがわでおう」

「いいこころがけだな、草凪くさなぎうみながらうめしはかくべつだ」

「えらそうだなぁ」


 オレのよこで、雪路ゆきじ茶色ちゃいろくしながらカレーにかぶりつく。



「なあ雪路ゆきじ。オレが()()()()()()をやめたらどうする?」


「おかしなことをうのだな。どこでなにをしようと、おぬし草凪くさなぎであることはかわるまいよ。りょうしをしようが、はたけをやっていようが」


「…………たまにまともなことをうんだよなぁ、おまえは」



 あやかしのこえをきく()()(ちから)をとったらオレになにがのこるのだろうとかんがえていたが、そうだな。


 オレはなにをしていようと、オレなのだ。


「わしがこれをべにきたときにいつでもしてくれたら、それ以上いじょうはのぞまんよ」


「はっはっはっ。それじゃあ、いつか雪路ゆきじのための食事しょくじどころでもひらくか。もっといろんなものをつくれるようにならないといけないな」


「ほう。いつでもめしをたべられるみせか。ならばわしのせき用意よういしておくのだぞ」


「はいはい」


────────────────────────────


 そんな、やくそくともえないようなはなしをしてから数年すうねん




 いつのにか雪路ゆきじはあそびにこなくなってしまった。


 オレは結婚けっこんして、つま二人ふたりちいさな食事しょくじどころをひらいた。


 カレーは、カエルにく不評ふひょうだからとブタにくにおきかえられた。


 おきゃくさんのこえこたえていく。


 ながネギはたまねぎへ。

 ニンジンやジャガイモといった野菜やさいれる。



 およそ百五十年ひゃくごじゅうねん雪路ゆきじ草凪くさなぎ子孫しそんにめぐりあう。




 草凪くさなぎ雪路ゆきじのやくそく おしまい



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