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くさなぎときつねの思い出ごはん。  作者: ちはやれいめい
きつねの章《しょう》
11/22

11 食堂《しょくどう》くさなぎの新《あたら》しいはじまり

 わたしたちの日常にちじょうがもどってきた。


 がさめても、じゃましてくるシッポはない。


 部屋へやのすみにはダンボールベッドがおきっぱなしになっている。

 けっきょく使つかってくれなかったんだよなぁ、雪路ゆきじのやつ。


 おおきくのびをして階段かいだんをおり、サンダルをつっかけてそとる。



 がのぼって、うみがキラキラしている。


「わー。もうなみにのってるひとがいる。元気げんきだなぁ」



 カンカンカンとふみきりのおとにふりかえれば、江ノえのでんえる。


 キツネのあやかしなんていう、明治時代めいじじだいのおきゃくさまがたなんてしんじられないや。


 

 なんだかさみしい気持きもちで海岸かいがんあるいていたら、いつのまにか足元あしもとしろいもふもふがいた。


 はじめてみせたときのように、そ知‘し’らぬカオでそこにいて、見上みあげてくる。



「マコト。わしははらがへったぞ。カレーをくれ」


 もふもふがしゃべった。



雪路ゆきじ!? あんた、カレーをべてまんぞくしたんでしょ。なんでまだここにいるの?」



 雪路ゆきじはフンとはなをならしてえらそうに、ほんとうに、それはもうえらっそーにう。


「カンタンな道理どうりだぞ、マコト。ここにいればまたいつでも草凪くさなぎのカレーをえるだろう。だからわしはここにいてやることにした」


「たのんでない」


「そうつれないことをうな。もしもわるいあやかしがおそってきたときには、わしがたおしてやる」



 シッポをふりふり、おぬし世話せわをしてやるぞなんてっちゃう。

 ほんとうに、なんてナマイキなキツネだろう。


令和れいわ日本にほんわるいあやかしなんてないよ。なにとたたかうっていうの」

「デンキヤというところのはこが”眠気ねむけとたたかうあなたにヤルキデル(ゼェェット)!”とうたっていたぞ」


「それはテレビ。ただのえいようドリンクのCMだよ!」


「しいえむ? 新手あらてのあやかしものか?」



 っていたら、ご近所きんじょさんである山田やまだのおばちゃんが、かいいぬのヨークシャテリア、シンちゃんといっしょにやってきた。


 日中にっちゅうはあついから、おばちゃんはいつもあさごはんのまえ……これくらいの時間にさんぽしている。

 シンちゃんはおばちゃんのゆっくりなペースにわせてぽてぽてあるいている。


「おはようマコトちゃん」

「おはよー、おばちゃん」

「もしかして、くさなぎでいぬをかいはじめたの? かわいいねぇ」


 

 山田やまだのおばちゃんには雪路ゆきじいぬえているの?

 



「わんわんわおーん」

「キャン」

「わうー」

「キャンキャン!」


 雪路ゆきじはわざとらしくいぬのマネをして、シンちゃんと会話かいわする。


 しかも、いぬっぽくわたしあしにあたまをこすりつけたりなんてしてきた。


 おばちゃんは、ほほにててニッコニコだ。


「かいはじめてもないのにこんなになついているなんて! よっぽどマコトちゃんのこときなのね。名前なまえまってるの?」

「え? ええと……」


 すごくなついているいぬっぽいものをれていて、「らないですね」なんていわけはできない。


「あててみせましょうかー? ゆきみたいにまっしろだから、ユキちゃんでしょ!」

「お、おしーい! 雪路ゆきじです」


 うわーん、ちがう、そうじゃないんだよー! 

 うちのペットじゃないから!

 


「わうん!」


『犬のふりをするな雪路!!!!』


 といたいけれどガマンだ。


 ってしまったら、わたしいぬくちゲンカするへんなおんなになってしまう。

 それだけはさけないと。



 だって山田やまだのおばちゃん、もんのすっごいスピーカーなんだもん!!


 まえわたしがそこでころんでショッピングバッグの中身なかみ全部ぜんぶぶちまけちゃったとき、たまたまとおりかかった山田やまだのおばちゃんがたすけてくれた。


 つぎには近所中きんじょじゅうのひとにれわたってたんだよ!!

 おばちゃんくちがかるすぎるよ!



 ………あれ? これはまずくない?

 このながれだと、山田やまだのおばちゃんは「草凪くさなぎさんちでわんこをかいはじめたわよー!」ってはなしてまわるよね。


「それじゃあ、あたしはシンちゃんのおさんぽつづけるからね、またね、マコトちゃん。こんどだんなとごはんべにくわねぇ」

「あ、はい。まいどー」


 おばちゃんのすがたがえなくなってから、ためいきをつく。



 いつのにかわたしにはシンちゃんがつけていたのとおなじリードがにぎられている。


「いだいなあやかしたるわしには、これくらいのジュツは造作ぞうさもない」

「そういえば雪路ゆきじはあやかしだったね…………」


 これからずっと、わがいぬのフリをするつもりかな。



「さてマコト、いくぞ。たくさんあるいてはらをすかせたあとにうカレーはうまい。最高さいこうのちょうみりょうだな」

「……うちにマンマンなんだね」

「ただめしをらうつもりはない。わしはちゃんとやくつぞ。げにコウケンしてやるのだ。くさなぎがながさかえれば、わしはそれだけながいあいだカレーをべていられる」


「はいはい……。なにをどうするのからないけど。でも、わたしだけじゃめられないよ」


「ならはやくもどってほまれ千夏ちなつをせっとくするのだ!」


 なれたうみぞいのみちを、いぬのふりした雪路ゆきじをつれてあるく。


 いい天気てんきだなー。かぜ気持きもちいいや。



「ただいまー! とうさんかあさんきいてよー」


 みせにもどったら、二人ふたりこまったカオをしていた。




「おかえり、マコト。雪路ゆきじ一緒いっしょだったか。またかわったおきゃくさまがたぞ」

「へ?」


 みせさきに、二本にほんのシッポのミケネコがいた。


 うしろあしできようにがって、マネキネコみたいにひだり前足まえたしをもちあげる。


「やあやあ、わがはいは小町(こまち)もうす。雪路ゆきじから、「ここはいにしえうしなわれた料理りょうりをていきょうしてくれるみせだ」といてな。草凪くさなぎよ。わがはいのおもあじ再現さいげんしてはもらえぬか?」



 みせにコウケンするってこういうことか─────────!?


 小町こまちびよせた元凶げんきょうは、店先みせさきだんをほっている。


とうさん、かあさん。どうする?」


「じきじきにリクエストしてくれたんだから、つくるしかないだろう。料理人りょうりにんとして!」


「わたしはさんせいよ。きっと雪路ゆきじのカレーをつくったときみたいにたのしいわ。三人さんにんちからわせればなんとかなるなる!」



「もーー! とうさんとかあさんがのりなら、わたしもやるしかないじゃない」


「すなおじゃないなマコト。わしにはわかる、おぬしたのしんでおるな」


「それはどうかな」



 なんだかんだって、このたのしいとおもっているわたしがいる。


 あやかしがもとめるおものごはんをつくるなんて、きっとわたしたちにしかできないし、最高さいこうにワクワクするじゃない。



 食堂しょくどうくさなぎが、あやかし()()()()()みせになるまであとすこし。




 きつねのしょう おしまい

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