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くさなぎときつねの思い出ごはん。  作者: ちはやれいめい
きつねの章《しょう》
10/22

10 よみがえる思《おも》い出《で》の味《あじ》

 わたし世界ノ珍品堂(せかいのちんぴんどう)というみせかった。


 

 いろんなスパイスのかおりがいりまじる店内てんないには、ワニにくだのウサギにくだのシカにくだの、スーパーでみることのないめずらしいものがところせましとならんでいる。


 うわぁ、ワニなんてウロコとつめまでついているよ。どうやってべるのかな。


 いや、世界せかいのどこかにこれをべているから、みせにあるんだよね。


 わりダネがならぶみせで、中学生ちゅうがくせいわたきあきらかにういていた。


 そしてついに、カエルにくをゲットした。

 何語なにごかわからないパッケージのうえ日本語にほんごのラベルシールがはりなおされていて、食用しょくようウシガエルといてある。


 うへー、……かたちがまんま、カエルだ。


 カチカチにこおっている。

 カエルってみどりいろかわをはぐとピンクなんだ。


 ショーケースのガラスに、カエルをかかえるわたしがうつっている。

 えほんにてくるわるいまじょになったきぶん。



 いえもどって、自然しぜんかいとうされるようにカエルをれいぞうにいれる。


 今日きょう営業えいぎょうがおわってから、わたしたちはカレーつくりかかった。


 カエルにくはほどよくけていてぷるんぷるんだ。


 とうさんは真剣しんけんなかおでカエルからホネをそいで、細切こまぎれにしていく。

 フライパンにバターをいて、ながネギといっしょにいためる。

 ジュワ! といいおとかおりがひろがる。


 そこに小麦粉こむぎこをよくからめる。

 ショウガとニンニクもすりおろしてくわえる。


「あらら、カエルってこうしてとおすと本当ほんとうにトリにくみたいなのね。はじめてたわ」


おれも、じぶんちでカエル料理りょうりつくがくるとはおもわなかった。調理師学校ちょうりしがっこうのころもカエルなんて使つかったことがない」



 かあさんの感想かんそうに、とうさんもうなずく。


 とおったら昆布こんぶだしをそそいでカレーれ、じっくりと煮込にこんでいく。


 こうして、ついにカエルカレーが完成かんせいした。


 

 さらにごはんをのせて、カエルカレーをりつける。


 雪路ゆきじはこれまでにないほどのいきおいでかぶりついた。

 


「これだ、このあじだ!! 草凪くさなぎといっしょにべたあのごはんだ! わしはこれをべたかったのだ!」


「ほんと!? やったぁあ!!!!」


 ついにわたしたちは、ご先祖せんぞさまがつくったカレーの再現さいげん成功せいこうした。

 三人さんにんでハイタッチ!



 雪路ゆきじ大好だいすきだというカレーを、自分じぶんたちでもべてみる。


 トリにくのようなしたざわりなのに、なんとなく白身魚しろみざかなにもにている。

 あっさりしたカレースープのような。でも、しっかりスパイスを入れて煮込にこんだおかげでおくがふかい。


 このあじっていたら、たしかにブタにく野菜やさいゴロゴロカレーは()()()という感想かんそうになる。


「ふしぎなあじ明治時代めいじじだいのカレーってこうなんだね」

雪路ゆきじおれみせのカレーをおもあじとちがう、とうわけだな。たしかにカエルのカレーは、うちのカレーとはぜんぜんちがう」


父さんはカレーを食べてうなった。

 

すくないヒントをたよりに料理りょうりつくるなんて、推理小説すいりしょうせつのたんていになったみたいでたのしかったわね。雪路ゆきじのおかげで貴重きちょう体験たいけんをできたわ。ありがとう、雪路ゆきじ


 

 かあさんもえがおでおかわりまでもっている。



 カレーをきれいに完食かんしょくして、雪路ゆきじはうれしそうになく。


「ありがとう、(ほまれ)千夏(ちなつ)、マコト。わしはとてもまんぞくしたぞ。あのときべたのとおんなじだ。こうしてこころをくだいてくれるもののなんとうまいこと。どれほどときがながれようともわらぬものはあるのだな」


「……雪路ゆきじ、カエルカレーべられてかったね」


「ありがとうな、雪路ゆきじ大昔おおむかし料理りょうり再現さいげんするなんて、料理人りょうりにんとしてとてもたのしい経験けいけんだった」


「わたしもたのしかったわ。キツネのあやかしとおしゃべりして一緒いっしょにカレーをべたなんて、だれかにってもしんじてもらえなさそうだわ」


 とうさんとかあさんも、しんみりしてる。




「ふふふ。おぬしたちならつくってくれるとしんじていたさ」


 

 雪路ゆきじはシッポをふってていく。


草凪くさなぎの、とおいとおいどもたち。わしはおぬしらにえてうれしかったぞ。またいたらべにくるから、よろしくな」


 そうって、ちたよるまちえていった。



 ……雪路ゆきじは、わたしとうさんが、草凪くさなぎさんではないととっくにづいていたんだ。

 わかっていて、ともだちの草凪くさなぎさんとおなじようにせっしていた。



 つぎ雪路ゆきじるとしたら、また百年ひゃくねんくらいたったあとなのかな。

 わたしまごやひまご時代じだいに。



 きっと、わたしはもう雪路ゆきじと会うことがない。



 おフロに入ってパジャマにきがえたら、布団ふとんにもぐりむ。


 布団ふとんりあいがないのが、ほんのちょっとだけ、さびしい。



 せめて百年後ひゃくねんごでなく、きているうちにもう一回来いっかいきてくれないかな。


 そうしたらわたしは、キツネの友人ゆうじんのためにカエルカレーをつくるんだ。


「あいかわらず、キツネのくせに意地いじがはっているんだね」なんていながら。

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