俺も、お前のように。
「よう太陽光発電」
相変わらずの筋肉隆々系スキンヘッドに挨拶をする。
目元にタトゥーなど入っている。
「えっ?・・・あんた、生きてたのか!・・・つーか酒臭っ!」
「この店で一番強い酒をくれ」
「いや、もう辞めとけよ。てゆーかせめてこの店で酔っぱらえよ。何ですでにべろんべろんなんだよ」
「なんでもう飲んでるのかだと?これが飲まずにいられるかってんだチキショーめ!」
「その酔い方はなんとなく世界観が違う気がするぞ。いやよくわからんけど」
俺はこれまであったことを店主に話す。なんせべろべろに酔ってるから、うまく説明できたかどうかは分からない。
「まぁアンタの話は何とかわかったがよ、何でこの街を離れる必要があるんだ?その店でみんなで一緒に住んだらいいじゃねーか」
「だってさ。ぐずっ。ひっくひっく。楽しかったんだよ。面白いんだよ。あいつらぁ」
「お前、怒り上戸だったり泣き上戸だったり忙しい奴だな・・・それならなおさら何で街を出るんだよ」
何でだって?そんなのは決まってる。もう俺が必要ないからだ。ゲラルトもソアラも、シャーロットも、家族を守るために俺を必要としてくれていたんだ。それが無ければおれなんて、ただの記憶喪失アジアンフェイスのアル中じゃないか。厄介者でしかない。
「楽しい想い出を壊さないためだよ。美しい想い出のまま終わらせたいんだよ。そんなことも分かんねーのかよこのハゲぼうず」
「こりゃ剃ってんだ・・・まぁアンタが決めたことならオレは口出ししねーよ」
スキンヘッドはいかにも高そうな酒をグラスに注ぐ。
「餞別だ。金はとらねーよ」
「払えといわれても一文無しだよ」
「本格的にいったい何しに来たんだよお前」
いつもの似たようなやり取りの後、グラスの酒を飲み干す。
「美味っ!これめっちゃいい酒じゃないの?悪いな店主!」
「まぁいいさ。・・・行くのかい?」
「・・・あぁ。世話になった」
俺が立ち上がると、スキンヘッドもついてきた。
扉の向こう、白く光る街並みに、昼の風がそっと頬をなでていった。まるで背中を押すように。
たった数歩外に出ただけなのに、この街が、もう懐かしい。
「なぁ。オレはアンタにちゃんと伝えないといけないことがあるんだ」
「なんだよスキンヘッドにそんなに改まられると怖いぞ。愛の告白とかじゃねぇだろうな」
「そんなわけないだろ」
「じゃあなんだよ」
スキンヘッドは、真剣な表情でこちらに向き合う。そして―――
「ありがとう。そして・・・頑張れよ!」
スキンヘッドはそう言って、にやりと笑う。きっと俺も、笑っていたと思う。
「・・・あぁ!元気でな!」




