表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

40/60

人が人を殺害する理由




「ねぇ、寝た?」


「……いえ、まだ起きてます。シャーロットさん」


 もう何度、同じやり取りを繰り返しただろうか。

 

 ベッドの中で、お互いの指先だけが触れている。


「私、悔しくて……悲しくて……でも、怖くて怖くて……どうすればいいのか分からないの」


 小さな声だった。震える吐息が、夜の静寂に溶けていく。


「あんなにも大切だった人たちを、拷問されて、殺されて……あの時は、何をしてでも復讐したいと思った。でも――」


 間を置き、言葉を呑むようにしてから、彼女は続けた。


「――でも、自分が助かってしまったら、もう……怖いの。自分は、そんな目に絶対遭いたくないって……思い始めてる」


 俺は黙ったまま、ただその声を聞いていた。


「ねえ……怖いの」


 彼女がそっと近づいてくる。湯上がりの柔らかな香りが鼻先をかすめた。


「ありがとう。助けてくれて」


 シャーロットは遠慮がちに身体を寄せてくる。その動きは弱々しく、それでいてどこか艶めいていた。パジャマの上のボタンが二つほど外れていて、胸元がわずかにのぞいている。ブラは……つけていないようだった。


 唇が震えていた。キスをしようと、顔をゆっくりと近づけてくる。


 ――けれど、どうしてだろう。


 嬉しさよりも先に、胸を締めつけるような悲しさが込み上げた。


「待ってください、シャーロットさん」


「……どうして? 私、まだ何もされてない……ちゃんと、綺麗な体よ?」


 彼女は微笑むが、その目から一筋の涙がこぼれた。



 オレは、決断しなければならない。もはやシャーロットとソアラを救うには、これしかない。



「いえ、お礼を貰うにはまだ、早いですよ」


「……どういうこと?」


「あなたはあの時、オレに言った。お礼になんでもするから、お父様とお母様を殺したヤツを殺して、と。だから、お礼は―――」


 そう。


 まだ、早い――。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
 40話まで読ませて頂きました。  まず、なんと言っても、説明を削りに削ったスピード感と、呑めば呑むほど強い主人公の活躍の爽快感が特徴の作品に仕上がっていると思います。  ラブコメ的すれ違いや、主人公…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ