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白の聖騎士、キメ台詞を言う

今週は短めですが、次週が少し長めになります。

「ずいぶん長い話だったが、それで貴様が『精霊神』の代わりに人間を正しい道に導くつもりだとでも言うのか!そのために精神魔法で聖王国の国民を操って帝国との戦争に向かわせていたとでも言うのか!・・・そんな事は許される事ではない!」


 クレディはまっすぐに怒りの声を上げる。クレディ自身は勇気の塊のような男なので戦う事に対して一切ためらいはないが、それは自分自身に関してだけだ。他の者を戦いに巻き込むことは好まない。


クレディの怒りのきっかけに王女として国民への責任感を持つシエナも、

 

 「『精霊神』を気取って国民を操っていた事は聖王国のためだと主張するのでしょうが、それはただの自己満足にすぎません。確かにあなたなりに聖王国の未来を考えての事かもしれませんが、人は誰かに操られて未来を得るわけにはいかないのです。聖王国の目指すべき未来を主張するなら、操るのではなく議論の場に正式に持ってきて裁決にかければよかったのです。宰相であるあなたにはそれができたのだから」


 畳みかけるように『イイ感じのセリフ』を言う。


 (あれ?俺が白の聖剣にツッコミ入れている間に『イイ感じのセリフ』を先に言われてねえ?『許される事ではない』とか『それができたのだから』とか俺も言いたいやつなんだけど。やはりクライマックスともなるとみんなここぞとばかりに『イイ感じのセリフ』を言ってくるなあ。俺も何か言わないと・・・・)


 とレオナルドは慌てるが、そんな事を無視してピジョンは答える。


 「わかっていませんねえ。人間たちの議論など意味がないのです。所詮は人間、議論したところで間違った結論を出すこともあるのですから。全ては『精霊神』に任せていればいいのです。そうすれば間違いなどないのです」


 (この言い方はまるで・・・。しかし、それだとピジョンが語った事に矛盾が出てくる。だが、そうとしか考えられないか)


 ポッパーはあることに気づくが、それがあまりにも馬鹿げた発想であると自覚する。

 

 しかし、そう考えれば全てが納得できるためにあえて話を切り出す。


 「『精霊神』を気取ったつもりはないんでしょう。つまりピジョンは聖剣に封印された『精霊神』から直接の意志を受けて聖王国の国民を操って帝国との戦争に向かわせた、もしくは・・・」


 「ピジョン自身が『精霊神』だと言う事だな」


 少しためらったポッパーの言葉を引き継いでレオナルドが結論付ける。


 その衝撃のセリフにクレディとシエナは顔を見合わせ、ポッパーは


 (この結論を平然と言いますか。相変わらずレオナルドは底が知れませんね・・・。ピジョン自身が『精霊神』だと先ほどの聖剣に封印されているという話に矛盾が出るはず。それがわかっているはずなのに言い切るのは何か確信があるのでしょうか)


 そんな事を考えているが、実際は、


 (ふうー。危なかった!正直初めはなんのこっちゃわからなかったけど、話の流れから最後の結論だけはなんとなくわかったからな!最後のキメ台詞だけは俺が言ってやったぜ!悪いな~。ポッパー。『イイ感じのセリフ』界は血も涙もない弱肉強食の世界!ためらいがあればこうやって先に言われてしまうのだ!)


 この程度の考えしかないレオナルドだった。

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