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第九十八話 忠誠心

 王室内でクーデターに参加した人たちは、王妃殿下とその側近以外、結果的にはいなかった。その為、王妃殿下とその側近以外に、処分された人たちはいなかった。


 とはいうものの、グラスジュール殿下に対する忠誠心を持っている人は少ない状況。


 多くの人たちは嫌々従うことになったので、面従腹背になる可能性があった。


 このままだと、今後の政治運営に支障が出かねない。


 近衛師団のように、短期間で忠誠心を高めていくのは難しい。


 決してやさしいことではない。


 その為、王室内の人々については、時間をかけて忠誠心を高めていくことにしたのだけれど、ここでグラスジュール殿下にとっては、予想外の動きがあった。


 グラスジュール殿下が今回、王妃殿下とその側近を始めとした王室内の人たちに、比較的甘い方だと思われる対応を取った一つの理由は、王室内の混乱を最小限に収めるということだった。


 グラスジュール殿下は暴君の素質があるということで、クーデターに関係した人たちや日和見の人たちは、厳しい処分を受けるのでは、と王室内の人たちは、戦々恐々としていた。


 このような状況下で、厳しい対応を取った場合、王室内が混乱し、それを治めるのに時間がかかる可能世があった。


 しかし、予想以上に甘い対応だったことで、グラスジュール殿下が想像していたよりも慈悲深い人物であることが認識され、王室内は混乱しなかった。


 それだけではなく、グラスジュール殿下のことを見直す人たちが増え始め、そしてそれとともに、グラスジュール殿下への忠誠心を高めていく人たちも増え始めていったのだ。


 グラスジュール殿下としても、この傾向は喜ばしいことだった。


 後は貴族たちへの対応ということになってくる。


 王室内の人たちほどの影響力はないものの、貴族たちの影響力も決してないがしろにはできない。


 味方は多い方がいい。


 国王陛下の宣言前、貴族たちのほとんどは、ウスタードール殿下を王太子に推すようになっていた。


 王妃殿下が長年、ウスタードール殿下を王太子ににする為に根回しをしてきた結果だ。


 貴族たちの中で、グラスジュール殿下を推す人はほとんどいなくなってしまうほどになっていた。


 グラスジュール殿下は王室内でも貴族たちの間でも、孤立していたと言っていい。


 グラスジュール殿下はそれがわかっていたので、なおさらわがままにふるまい、傲慢な態度を取って、


「王太子にふさわしくない」


 ということをさらに印象づけて、


「みなのものが言う通り、グラスジュールは王太子にはふさわしくない」


 ということを国王陛下も認識せざるをえないところに持っていき、王太子の座の返上を国王陛下に認めてもらおうとしていたのだ。


 ただ、ウスタードール殿下を推す貴族たちがほとんどになったとは言っても、積極的に推していたのは、わたしの出身家であるフィリシャール公爵家だけだったと言っていい。


 わたしの父と継母は、ウスタードール殿下とコルヴィテーヌを結婚させたいと思っていた。


 ただ結婚させるだけではなく、王太子殿下としてのウスタードール殿下と結婚させたかったのだ。


 それにはグラスジュール殿下とわたしの両方がじゃまになる。


 王妃殿下と継母は、もともと仲が良かったのだけれど、利害も一致していた。


 継母はわたしをこの際、処理しようと思っていた。


 そこで、継母は王妃殿下と相談して、わたしを修道院に送った後、状況に応じて、生命を奪うという計画を立てた。


 父もコルヴィテーヌもこの計画に協力することになった。


 わたしからすると、なぜそこまで憎まれなければならないのかと思うし、また自分たちの利益をなぜそこまで追い求めるのかと思う。


 特に父が継母に協力していたのは、予想はしていたとはいうものの、残念に思う。


 しかし、その他の貴族たちは、決して積極的にウスタードール殿下を推していたわけではなかった。


 風向きが変われば、忠誠心がなかったとしても、嫌々だったとしても、グラスジュール殿下のことを推すようになる可能性はあった。


 実際、こちらも国王陛下の宣言以降、日和見の人たちが増加するようになった。


 グラスジュール殿下を推す勢力になったわけではないのだけれど、少なくとも、ウスタードール殿下を推す勢力ではなくなった。


 グラスジュール殿下を推す勢力が取り込める余地はできたと言っていい。


 ただ、王妃殿下とその側近は、こちらについても、クーデターを成功させ、グラスジュール殿下を自分の管理下に置いてしまえば、そう言った日和見の貴族たちも、自然にグラスジュール殿下のことをもう一度推すようになると思っていた。


 この考え方は決して間違ったのものではなかったと思う。


 しかし、クーデターの失敗によって、貴族たちは渋々ではあるものの、グラスジュール殿下を王太子、そして、国王陛下の後継者として認めることになった。


 グラスジュール殿下も、フィリシャール公爵家以外の貴族については、特に処分をすることはなかった。


 ただ、忠誠心についての問題は残った。


 一時はウスタードール殿下を推す勢力が強かったこともあって、貴族たちのグラスジュール殿下に対する忠誠心は高いとは言えない。


 その為、グラスジュール殿下は、貴族たちの忠誠心についても、時間をかけて上げていくことにした。


 しかし、こちらの方でもグラスジュール殿下の予想外の動きがあった。


 貴族たちも、王室内の人たちと同じで、自分たちにグラスジュール殿下が厳しい処分を下すのではないかと思い、戦々恐々していた。


 それだけ暴君になるだろうという印象が、人々の心の中を支配していたということだろう。


 しかし、甘い処分が下されたということで、貴族たちもグラスジュール殿下のこと見直すようになり、それがグラスジュール殿下への忠誠心を高めていくことにつながっていく。


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