第九十七話 クーデター後の処分
王妃殿下とともに、クーデター計画を立てた王妃殿下の側近は、グラスジュール殿下とわたしへの襲撃には加わらなかった。
襲撃が成功した後、表舞台に立つ予定だった。
クーデター計画の主要な部分は、王妃殿下が自ら立てていたのだけれど、その側近も計画策定に協力したということで、その責任を重く、王妃殿下とは別の修道院に送られることになった。
ウスタードール殿下は王妃殿下の言うことには、基本的には従う人だ。
王妃殿下もそういうウスタードール殿下のことをかわいがっていた。
しかし、一つだけ王妃殿下に従わないことがあった。
ウスタードール殿下は、
「ウスタードールのことを兄と思う必要はない」
という王妃殿下の言いつけを守らず、グラスジュール殿下のことを内心では兄として慕っていたのだ。
グラスジュール殿下は、母が違い、自分のライバルになると思われるウスタードール殿下を幼い頃からかわいがっており、他の人たちには見せていたわがままな態度や傲慢な態度は、一切見せず、やさしく接していたという。
残念なことに、最近は王妃殿下に遠慮せざるをえず。お互いに距離を取るようになっていたのだけれど、グラスジュール殿下としては、嫌な存在と思っているわけではない。
今もウスタ―ドール殿下のことを大切に思う気持ちは変わっていない。
そうしたグラスジュール殿下の気持ちが通じていたのだろう。
しかも、母親である王妃殿下よりも兄であるグラスジュール殿下の方を内心では慕っていたという。
王妃殿下はそのことを把握し、心よく思っていなかったので、この作戦には一切参加させなかった。
それが逆に、ウスタードール殿下のことを救うことになる。
本来であれば修道院行きのところだ。
しかし、グラスジュール殿下はそのような状況であることを理解していたし、贅沢についても、王妃殿下に従っていただけだったので、修道院行きを命じるつもりはなかった。
グラスジュール殿下は、自分に忠誠を誓うことを条件に、自分の側近として働くことを命じた。
ウスタードール殿下は優秀なので、その力をこの王国の為に使ってほしかったからだ。
ウスタードール殿下はこれに応じ、グラスジュール殿下に忠誠を誓った。
これ以降ウスタードール殿下は、グラスジュール殿下の側近として働くことになった。
近衛第三・第四・第五の各師団は、グラスジュール殿下が第一近衛師団の管理下に置かれた段階で、クーデターに参加する予定になっていた。
しかし、その段階に進む前にクーデターは失敗したので、急遽グラスジュール殿下のもとに各師団長が馳せ参じて、グラスジュール殿下に忠誠を誓った。
グラスジュール殿下は、もともとこの三師団が日和見をしていることは理解していたので、各師団長と各師団の兵士たちを責めることはなく、
「これからは一切迷うことなく、忠誠を誓うのだ! これからの活躍に期待をしている」
と言って、この三師団を自分に服属せしめた。
こうしてグラスジュール殿下は、近衛師団全体をその手中に収めることになった。
王室内においては、長年、王妃殿下が根回しをしてきたので、ウスタードール殿下を推す勢力が多数を占める状況だった。
それに対し、わたしは当然のことながら、グラスジュール殿下を推していた。
しかし、わたしはグラスジュール殿下の婚約者ではあるものの。まだ正式な王室の一員ではなかった。
国王陛下の宣言の直前、王室内でグラスジュール殿下を推していたのは、国王陛下とグラスジュール殿下の側近だけだったと言っていい。
それが、国王陛下の宣言以降、ウスタードール殿下を推す勢力は弱まりつつあり、日和見の人たちが増えていた。
王妃殿下とその側近は、クーデターを行うに際し、この勢力を利用することも考えてはいたのだけれど、日和見の人たちの増加で、それは断念していた。
そこで、王妃殿下とその側近は、王室内の人たちの力を一切借りずにクーデターを行うことにした。
このクーデターが成功すれば、王室内の人たちは、ウスタードール殿下を王太子、そして、国王陛下の後継者として認めるだろうと思ったのだ。
王室内がその方向でまとまれば、国王陛下がもし反対をしたとしても、それを覆すことは困難になる。
もしクーデターが成功していたら、王妃殿下の思い通りになっていたことは間違いないと思われる。
しかし、クーデターの失敗は、日和見の人たちを含め、王室内の人たちをグラスジュール殿下支持一本にまとめることになった。
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