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第八十八話 クーデター勃発

 舞踏会から一月ほどが経ったある日。


 わたしはグラスジュール殿下と王宮の執務室で会っていた。


 この一か月の間、ほぼ三日おきに会っていたわたしたち。


 グラスジュール殿下とのおしゃべりは楽しい。


 時が経つのを忘れてしまうぐらいだ。


 舞踏会以前はわたしに対して、笑顔を向けることは全くと言っていいほどなかったグラスジュール殿下だったのだけれど、今は素敵な笑顔を向けるようになっていた。


 それが何よりうれしい。


 また、わたしはグラスジュール殿下の為にお菓子を作るようになった。


 グラスジュール殿下はその菓子を食べる度に、


「これはとてもおいしい」


 と言って、微笑んでくれる。


 また、休日に会う時は、料理をふるまうようになっていた。


 グラスジュール殿下は、その度に、


「このようなおいしい料理を作ることができるとは……。そなたはこの点でも素敵な人だ」


 と言って、満面の笑みを浮かべてくれる。


 お菓子作りも料理も、この王国では継母のように、


「令嬢としてのレベルを下げること」


 という意識が根強いが、グラスジュール殿下にはそういう意識が全くなく。心から褒めてくれている。


 それが何よりもうれしい。


 このままいけば、ただの婚約者どうしではなく、相思相愛の婚約者になれそうだ。


 そういう期待を持っていた。


 ただ、今日はまだ無理そうだ。


 笑顔は向けていてくれているけれど、その先に進もうという意志は感じられない。


 わたしに対する好意は会う度に増大しているのだから、そろそろその想いが恋に変わていき、わたしのことを求めてもいいのでは?


 どうしてもそういうことを思ってしまう。


 まあ、あせることはない。


 時間はたくさんあるのだ。


 わたしはそう自分に言い聞かせようとしていると……。


 突然、この執務室に兵士が乱入してきた。


 あっという間にグラスジュール殿下とわたしに対して剣を突きつけながら取り囲んでいく。


 生命の危機が訪れた。


「クーデターだ。リランドティーヌよ、わたしから離れるな!」


 真剣な表情でわたしを体のそばに寄せるグラスジュール殿下。


 グラスジュール殿下とこれほど近接するのはこれが初めてだ。


 わたしは一瞬、心が沸き立った。


 しかし、すぐに冷静になる。


 乱入してきたのは、どうやらウスタードール殿下を推す勢力のようね。


 そう思っていると、王妃殿下と近衛第一師団長のブリュネ中将がわたしたちの近くにやってくる。


 ブリュネ中将は、


「グラスジュール殿下、わたしは王妃殿下のご命令を受け、あなたさまを安全なところにお連れする為、ここに参りました。ご命令に従っていただきますよう、お願いします」


 と緊張しながら言う。


 グラスジュール殿下はそれに対して、真剣な表情を変化させ、


「ブリュネよ、面白いことを言うものだな。なぜわたしが安全なところへ連れていかなければならないのだ」


 とブリュネ中将をあざ笑うように言う。


 すると、王妃殿下は、


「王妃として命令する、今すぐにこのブリュネの指示に従い、この場所を出るように」


 と厳しく言ってくる。


「母上、なぜそんなことをおっしゃるのですか?」


「お前はわがままで傲慢で、暴君となる要素が満載です。しかし、国王陛下は、お前を王太子の座から外さない。このままではこの王国は衰退に向かってしまいます。時間がありません。そう思ったわたしたちは、ウスタードールを王太子につける為、実力行使に出ました」


「なるほど」


 グラスジュール殿下は緊張するどころか笑っている。


 余裕の表情だ。


 それにしても、グラスジュール殿下に対しての印象を全く変えないまま来ているとは。


 多くの人々は、グラスジュール殿下に対していい印象を持ち始めているというのに……。


「それでどこへ行くと言うのですか?」


「王宮の中にある外界から隔離をする為の部屋に行かせます。お前にとって一番安全な部屋で。お前は安全に暮らしてしていくことになります。安全を保障するというのは本当のことですよ」


「どうしてわたしがそんなところにいかなくてはならないのですか? 地下にある部屋で、薄暗く、自由を奪われてしまうのです。およそ快適に過ごせる場所ではないと思うのですが」


「衣食住は保証してあげるのだし、お前のことを処断することはないのだから、それでいいでしょう」


「でもそこにわたしを閉じ込めるということなのでしょう。冗談でも言っていいことと悪いことがあります」


「安全を保障するのですから、それで十分ではありませんか?」


「そんなところに閉じ込められるのは嫌ですね」


「嫌だろうが何だろうが、従ってもらいます」


「お父上が認めるとは到底思えませんが?」


「お前がわたしと仲良くする気がないと言えば、認めてくださるでしょう。国王陛下はわたしを愛しているのですから」


 自信満々だ。


「面白い」


「続きが気になる。続きを読みたい」


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