第八十七話 あきらめない人たち
わたしに対して、継母は憤懣をぶちまけてきた。
それに対し、父とコルヴィテーヌは何も言わないが、怒りを我慢している様子。
コルヴィテーヌが王太子妃の座につくというところまで、後もう少しだったのだから、仕方がないとは言えるだろう。
とはいうものの、継母やコルヴィテーヌは無理だとして、父に喜んでもらえないのは、寂しいことではある。
幼い頃から継母に憤懣をぶちまけられることはよくあった。
反論しても無駄なので、ここは我慢するしかない。
わたしが黙っていると、継母は、
「ふん! あなたの顔など見たくもないわ!」
と叫ぶ。
わたしはそれに対し。
「では、これで失礼いたします」
と微笑みながら言った後、部屋を出ていく。
「なんであなたのようなどうしようもない子が……」
継母はなおも叫ぶが、一切無視し、わたしは自分の部屋に戻っていった。
三人の態度は、その後も変わらないように思えた。
しかし、それから三日が経った頃から、三人のわたしに対する態度は少しずつではあるものの、軟化したように思えた。
怒りが収まってきたように思えたのだ。
継母がわたしに嫌味を言ってくる回数も減った。
この調子でいけば、グラスジュール殿下との結婚を祝福してくれるようになるのでは?
そう思い始めていた。
ただ、一方で、長年わたしに対して嫌味をいい、嫌っていた三人がわたしに対しての態度を急に変えてきた理由がよくわからなかった。
もしかしたら、わたしを油断させようとしているのでは?
どうもそういう気がしてならなかった。
さらに気になるのは、王妃殿下と継母との関係だ。
もともと仲がいい方ではあった。
でも舞踏会以降は、さらに仲が良くなったように思える。
三日に一度は会うようになっていた。
ウスタードール殿下を推す王妃殿下と、そのウスタードール殿下とコルヴィテーヌを結婚させようと考えている継母。
利害は一致していると言っていい。
その結婚の話を進めようとして会っているのだろうとは思う。
この話であれば、特に問題はないと言えるだろう。
普通であれば、王室とフィリシャール公爵家の関係をより強固にするはずのものだからだ。
しかし、王妃殿下も継母も、ウスタードール殿下が王太子になることをあきらめてはいない。
ただこのままでは、その勢力が弱まる一方になっていく。
この二人は、それぞれ王室内とフィリシャール公爵家に強い影響力を持っている。
お互いに協力をすれば、ウスタードール殿下を推す勢力の力を取り戻すこことは十分可能だ。
そこで二人は、ウスタードール殿下を推す勢力の力を再び拡大させる為の作戦を練っているのでは?
そして、ウスタードール殿下を王太子の座につけるとともに、コルヴィテーヌを王太子妃の座につけて、わたしたちをそれぞれ修道院に送り込むのでは?
それだけではなく、処断することも検討しているのでは?
十分ありえることなので、そういう懸念はどうしても持たざるをえない。
わたしがその懸念を伝えると、グラスジュール殿下もその懸念は持っていたようで、
「そなたの懸念はもっともだ。わたしもそう思っている。まだまだあきらめることはできないのだろう」
と言ってくれた。
しかし、グラスジュール殿下は、
「心配することはない。どんな人物が、どういう手を打ってきたとしても、わたしにかなうものはいない。わたしに勝てるものなどいないのだ!」
と言って、自分に絶対的な自信を持っていた。
わたしはグラスジュール殿下のその言葉に、力づけられていたのだった。
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